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お父様が決めた事ですから



今日はお嬢様の誕生日。そして婚姻届を出しに行く日だ。


お嬢様と車で役所に行って、手とか繋いで歩いて…その…デートとか。


ドキドキした気持ちを抑えてお嬢様の家に行く。いや、今日からは俺の家でもある。


新婚生活の始まりだ!




✽✽✽


「え?」


家に付き、俺は驚くこととなった。まざまざとまた育ちの違いが明らかとなる。


「ですから、婚姻届はキヨさんが出しに行ってくださいました。」


「…。」


キヨさんというのはお嬢様の一番親しい使用人だ。

…いや、そういうことじゃなくて…。


二人で出しに行くと思っていた婚姻届は使用人が既に出しに行っていて、俺はもう既にお嬢様の夫となっていた…。


なんか、温度差が…ある。


「お父様が役所などに足を運ぶなとのことでしたの。一般的には使用人が出しに行くのではないのですか?」


…いや、お嬢様。一般家庭に使用人はおりません…。


「そ、そうですね…。」


なんかあっけなさ過ぎてついていけない。実感が湧かない。本当に結婚できたんだろうか?


「本日はお荷物の搬入があるのではないですか?お部屋にご案内致します。」



やっぱり結婚したんだ!大丈夫。この格差はこれから埋めて行けばいい。





「えっと…」


通された部屋…。素晴らしいお部屋だ…いや、そうじゃなくて…


「お父様が大学を卒業するまでは別室で過ごすようにとのことです。」


甘い…あまーい新婚生活を送る予定だった俺はまたもや早とちりをする。


(確かに、お嬢様は今日成人したばかりの大学生だし…)


社長が心配するのも分かる。当然だ。…そうなんだけど。


…お嬢様はいつでも〝お父様が〟だ。


あまりにトントン拍子に進みすぎて会社の引き継ぎが忙しくて、今日までお嬢様と結婚について話すことがなかったことに気づく。


更にここで、浮かれていた自分が重大なミスを犯していることに気づく。


俺はお嬢様の気持ちを確認していない。


社長から結婚の話をもらって、両家顔合わせしてまたたく間に決まった。その間、お嬢様はご自分の意見を一言も発していない。


結婚が決まった時点でお嬢様も俺と同じ気持ちだと勝手に思っていたけど…


な、なんかあまりにもドライな…


「あの、一つ確認したいことがございますが宜しいでしょうか?」


いや、今聞いてどうする。もしも望んでいた答えが得られなくてももう俺達は夫婦なのに…


「なんでしょうか?」


〝お父様が〟では無いことを望む。


「その…結婚相手が私で良かったのでしょうか?」


今更聞くなよ…と誰もが思うだろう。


「…もちろんです。」


! ほ、本当ですか!?


「お父様が決めた事ですから。」






………そ、そうですか。

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