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大人の女性


「そのようなつもりで申し上げた訳ではないのですが…ご不快でしたら申し訳ありません。」


あぁ、またしても私は。せっかく、久司さんが私の気持ちを汲み取って下さったのに!!


永遠に秘める予定だった片思いは見事に暴かれてしまって恥ずかしい。

そして謝る久司さんに対する罪悪感を感じて…私はやっぱり自分が嫌いだ。


「今後、気をつけます。」


「…。」


(今後があるのね…。)

終わったと思っていた私達に未来があることに安堵する。


「愛子さんは、何と褒められたら嬉しいのですか?」


「…綺麗、ですとか。」


大人の女性を褒めるのだから。私は子供じゃない。


「そうですか。…他には?」


「そうですね…大人っぽいですとか。」


大人な久司さんと同じように、私も大人に見られたい。

小娘だけは嫌だ。


「なるほど。」


なんか、含み笑いをしているような、押し殺して笑っているような、そんな震えた声が私の耳に入る。


「バ、バカにしてらっしゃいます!!」


絶対〝小娘〟と思われたに違いない!悔しい。


「そんなことはありません。かわい…幸せだと、感じましたものですから。」


…また〝かわいい〟って言いかけた。だけど今回は許そう。


〝幸せだ〟って……。


本当に?こんな高飛車な私といて?もう、私の機嫌を取らなくても、久司さんは社長なのに。


「申し訳ありません。怒ってらっしゃいますか?」


少し、落ち込んでしまった私を久司さんが気にかける。


「私を誰だと思っておられるのですか…。」


少し、ブスっとした言い方になってしまった…。

久司さんを社長にしてあげたのは私。最後のプライドだ。

社長令嬢の私のおかげだと。


「私の妻です。」


「!!」


とんでもない言葉が降ってきて驚き久司さんを見る。


「愛子さんが私に言われたのですよ。結婚後も変わらず〝お嬢様〟という私に。〝もう結婚したのですから私は久司さんの妻です〟と。覚えておられませんか?」


…。言った。覚えています。政略結婚でも、ずっと思っていた久司さんと結ばれた。


その時はただただ浮かれていて、〝久司さんの妻ですから〟とやたら主張していた。そして、妻になったのだから、お嬢様ではなく名前で呼ぶようにと…


恥ずかしい。浮かれていた若かりし私が。


「とても…嬉しかった私の気持ちが分かりますか?」


「う、嬉しい?」


私は恥ずかしいですが…


「ずっと、思いを寄せていたお嬢様が私を受け入れて下さったのですから…」


…私は幸せだ。


「それを言うなら…私も…」


ハッとした!素直な言葉を言いたいと、そう思っては来たけど、ホロっと出た言葉に恥ずかしくなる。


「…私も、何ですか?」


やっぱり久司さんは楽しそうに言う。バカにされてる。


「知りません。良かったですね、久司さん。会社のトップに立ったのですから。」


そこは譲れない。


「…誤解の無いように申し上げますが、私は社長になりたくて、この結婚話を受けた訳ではありませんからね。」


「…。」


「まさか私のような者がお嬢様の結婚相手に抜擢されるとは思ってもいませんでした。」


「それはお父様が、私を気遣って出された話ですよ。」


だから、感謝して下さい。私が好きなら。私を敬って下さい。

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