結婚以来会話もない夫婦に子供が出来ました
【直くんとももちゃん、初恋の行方】
【お兄ちゃんのこれまで】等の直くんの両親の物語です。
上記シリーズ小説を読まれるとより一層楽しいかと思います(*´―`*)
勿論単品でも読めますヽ(*´∀`)ノ宜しくお願いします(*^^*)
「これが次だ。お前達の養子として置いておけ」
ある日突然、忙しい父に呼ばれ、そう告げられた。
隣には結婚三年目の夫の久司さん。
――目の前には小さな男の子がいた
✽✽✽
「聞いてないわ!」
私は自室に戻った瞬間、声を荒げて言う。
「お嬢様、落ち着いて下さい。」
姉のような存在の使用人キヨさんから落ち着くよう即される。
「…私はもうお嬢様じゃないわ。この家の奥様よ。」
私は会社を経営している父のひとり娘。三井愛子、23歳。
小さい頃から次期社長となる人間を婿にもらうよう育てられた。
そして大学在学中の20歳を迎えたその日に父の部下だった一回り年上の久司さん32歳と政略結婚をした。
「大旦那様も前置きを言われるような方ではありませんから」
キヨさんが言う。
「だからって、子供を!人の命よ!?」
父はあれからその結仁ちゃんという子を置いて仕事に行った。夫の久司さんもお父様について行った。
家には、私と結仁ちゃん、それと使用人…
「とにかく、お父様の駒にさせるわけにはいかないわ!あんなに小さな子を!」
そうよ。夫の久司さんも出世の為に私と無理に結婚された…
「あの子と話してくる!」
お父様の思い通りにはさせない!
✽
私は結仁ちゃんに充てがわれた部屋に、彼を訪ねた。
「あのー。結仁ちゃん?こんにちは。」
「…。」
無表情でなんにも喋らない…
「結仁ちゃん今いくつかなー?」
「…5つにございます。」
喋った!
…けど、大人びた子だな。〝5歳ー!!〟とか答えると思ったのに。
「そっかー!5つか!結仁ちゃんは…あのおじいちゃんになんて言われてきたのかな?」
「…。」
「急にこんな所に来て驚いているよね?お父さんとお母さんは?寂しいよね。会いたいよね?」
「…私に父母はおりません。お役目を果たす…それだけでございます。」
冷静に喋るその姿にギョっとした。
(5歳の子供がこんな言葉使う?絶対お父様に操られている!こう言いなさいって。)
「…。」
視線を感じる、と思ったら結仁ちゃんにジッと目を見られていた。
――子供なのに恐い…
その見据えるような、人を探るような、心の中を見るような…
その子供らしからぬ恐ろしい視線に私は得体の知れない恐怖を感じた。
(もしかしたら、心に傷を抱えている子なのかもしれない。)
お母様が亡くなった頃の自分と重なる。
(…とりあえず、お父様の決定事項は覆せない。)
「結仁ちゃん…私の事をお母さんと思って、仲良くしてね?」
「…。」
結仁ちゃんは無表情で会釈した。
政略結婚して三年目。
会話もほとんどしたことのない夫との間に5歳の子供が出来た瞬間だった。