2
その若者のまわりには、若い騎士達が自然と集まってきており、彼が皆から慕われている人物であることが見て取れた。
「ナップ」
先ほど壇上で乾杯をした男が、こちらにやって来て、彼に呼びかける。周囲にいたもの達は、はっとして気をつけの姿勢になる。
「あっ、トラム隊長!!」
「おっと、楽にしててくれ。ちょっと、彼としゃべりに来ただけだからな」
隊長の言葉に、若者達の緊張はすぐにほぐれたようで、再びめいめいに談笑を再開する。
「どうやら、新卒の騎士たちの中では、お前はすっかりリーダー扱いのようだな」
「いやいや、そんなことないですよ」
隊長の言葉に、ナップは手を横に振り、苦笑いを浮かべる。
「トラム隊長こそ来週から中隊長になるんでしょ、おめでとうございます」
「ああ。石になっている間に昇進が決まるというのも、なんとも皮肉な話だがな」
そう言うと、こちらも困ったような笑顔を浮かべた。
三カ月前、フィン西部のキリー村で起こった怪異の調査のため、護民騎士団の一隊が現地に派遣された。当時、それを率いていたのがトラムであった。
トラム自身が隊長を務める小隊の五十騎に加え、各隊から精鋭を借りて、計およそ百騎と、評議会より雇われた魔女により編成されたその一隊は、たまたま護符を身につけていたナップを除く全員が、村の入口で石化させられるという惨憺たる結末をたどってしまった。
「自分の体がどんどん石になっていく恐怖は、相当なものだったな」
「俺も、まわりのみんなが次々石になるのをただ見てた時は、かなりヤバかったっすね」
トラムとナップは、その時の情景を思い出してしまったようで、それぞれ軽く身震いをした。




