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ガタガタガタガタ
「なんだよこれ、うっさいなあ」
軽口をたたきながらもナップは腰の剣へと手を伸ばす。いつでも応戦できるよう、腰の位置をいくぶん低くする。
ガタァァン!!
「うおっ!!」
木箱の蝶番で止められたフタを勢いよくはね上げ、それぞれの木箱から何かが飛び出す。
「おいおい、わざわざ箱ん中で見張りしてたのかよ!?」
ナップがそのような発言をしたのは、相手が人間だと認識したからであった。確かに目の前には、皮の鎧を身につけ、片手に剣を持った人影が二つ立っていた。
「いや、あれは人じゃないよ」
アリッサはそう言うと、何ごとか素早く口を動かした。すると、彼女の近くを漂っていた光球が部屋の中空に舞い上がり、先ほどまでより数倍まぶしく光を放ちはじめた。
「ああっ!!」
ナップは思わず驚きの声をあげる。
「ばあちゃん!!あれ、人間じゃなくて―」
「ああ、人形だねぇ」
彼らの前に立ちはだかっていたのは、まさしく「動く人形」であった。それは、高級な商店などに置かれているマネキンに似ており、体表はツルッとした肌色で、顔の部分は、その凹凸にあわせて目や口などのパーツが描かれている。
二体のマネキン戦士は、カクカクと体躯を不気味にゆらしながら、じりじりとこちらに近づいて来る。
「仕方ないねぇ」
アリッサが面倒くさそうに指を鳴らすと、マネキンたちの足元から火柱が吹き上がる。しかし、妖しげな人形達は意外な素早さで左右に飛びのき、魔法使いの攻撃をかわした。
「よっと」
ナップが剣を抜き、右手の人形に向けて素早く切り込んだ。ナップの斬撃は敵の剣によって受け止められたが、彼がそのまま足払いをかけたため、人形は後ろに態勢を崩した。当然ナップはその隙を逃さず、相手の太腿にあたる部分を真一文字に切りつけた。この一撃は太腿の前半分を切断するにいたり、体のバランスを保てなくなった人形は、ガクリとその場に崩れ落ちる。切り口からは、何やら黒い管がはみ出し、緑色の液体がドロドロと流れ出していた。
「次が来てるよ!!」
アリッサの警告の声と、視界の端に入った黒い影に反応して、ナップは反射的に身をかがめる。
ヒュッ!!
ナップの頭上を剣がかすめていく。
むろんその一撃は、もう一体の人形が繰り出したものであり、危ういとこでそれをかわしたナップは、そのまま地面を転がり、敵との間合いをとる。
「あぶない、あぶない」
すぐさま立ち上がり剣を構えた護民騎士の表情には、どことなく余裕が感じられる。
ナップはここまでのやり取りで、この人形達は基本的な剣技をあやつれるということと、基本的な剣技以上のことは何もできないということに気づいていた。
最初の一撃をしくじったマネキンは、すぐに向きを変え再びナップに斬撃や突きを繰り出してきたが、それらはナップの素早い身のこなしによって、すべてかわされてしまった。
そもそも、トラム隊長から目をかけられているだけあって、ナップの剣技というのは、同期の騎士たちの中で群を抜いていた。剣術の基礎がしっかりとできている上、時に素早さを生かした自身の無勝手流な動きをおり混ぜた攻撃を仕掛けてくるため、新人騎士たちなどは、たちまち翻弄されてしまうのだ。
「おらっ!!」
最後の突きををかわされた人形が前のめりになったのを見計らって、ナップが敵の無表情な頭部に剣を振り下ろす。
マネキンの方は、なんとかその一撃を受け止めようと、剣を頭上で真横に向けて防御の姿勢をとる。
「残ね〜ん」
しかし、ナップの上方からの一撃はフェイントであった。彼は自らの剣を素早く引っ込めると、がらあきとなったマネキンのみぞおちに、強烈な蹴りをくらわした。




