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「でだ、そのボッシュって小僧は何をあんたに頼んだんだい?」
ブランの事は放置したままアリッサが話を進めていく。
「それが、あいつ結構しっかりしててさ。どうしたらいいか分からないから助けてくれって泣きついてくるのかと思ったら、とりあえず彼女と一度会って話をしてみたい、連絡つけることはできないだろうか、会う段取りさえつけば後は自分で頑張ってみる、ってな感じなんだよね」
「ほう」
「だけどさ、あの魔女が住んでるとこなんか、俺知らないだろ。それで、ばあちゃんに相談してみようと思ったわけ」
「なるほどねぇ」
アリッサは運ばれてきたビールをグビグビと飲む合間に相づちを打った。
「あとさ」
そう言うとナップは少し真面目な表情になる。
「これをばあちゃんの前で言うのも悪いんだけど……魔法を使う奴らって謎な部分が多いだろ。最大のネックの年の差問題だって、そもそもあの魔女が魔法で若返ってるから起きてるわけだし。もし、ばあちゃんがあの魔女と連絡を取れたとして、果たしてボッシュを会わせていいのかっていうのが、かなり迷いどこなんだよね」
「ほう」
アリッサはむしろ、ナップのその正直な告白に好感を持ったようだ。
「まあ、とりあえず…」
もったいぶった表情でそう言うと、アリッサは二人の若者を交互に見た。
「メイシンに連絡をつけることはできるよ」
ナップとブランは普通にうなづき、アリッサの先の言葉を待つ。どうやら二人ともアリッサならば当然それくらいはできるだろうと確信していたようだ。
「んじゃ、早速行こうかね。ナップ、ついてきな」
しかしながら、アリッサの行動力は二人の予想を上回っていた。席を立った彼女は、そのまま店の出口の方に歩き始めた。
「ちょっと!!アリッサさん」
あわててブランが後を追ったので、ナップは店員を呼んで会計を済ませた。
ナップが店の外に出ると、ブランが必死の形相でアリッサに説明を求めていた。
「アリッサさん、何も今日行かなくてもいいでしょう!!もうお酒だって入ってるんですよ!!」
「たかがビール一杯であたしが酔うとでも思ってんのかい?」
「それに相手のことだって…いきなりこんな時間に訪ねたら失礼でしょう」
「あほか。魔女ってのは基本的に夜行性なんだよ。今行かなくていつ行くんだい??」
「とにかく、いったん施設に戻って―」
「まあまあまあまあ、二人とも」
永遠に続きそうな真面目な介護士と頑固な入居者の言い争いに、ナップが笑顔で割って入る。
「じゃあさブラン。魔女んとこ行った後、ばあちゃんは俺が責任持って『太陽の家』まで送るから、お前は、施設に行って事情を伝えてきてくれよ」
「ええ?」
ブランは不満そうな声を上げる。彼はアリッサのお目付役を自負しているところがあったので、いざとなれば一緒についていくつもりだったのだ。




