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魔動戦記MAGIRA  作者: 担々麺丸
第一章 魔動戦記MAGIRA
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第1話「伝説の続き」前篇

 

 今、この世界は滅びようとしていた。

 憎しみと怒りが争いを呼び、殺し殺され復讐の連鎖を作り、争いをエスカレートさせていく。

 人は敵よりも強い兵器を作るべく、技術を発展させ、自らも滅ぼしかねない力を作り上げるまでに至った。

 そして、街は火の海となり、地獄のような光景さえも作り上げたのであった。

 燃え盛る街の上空に、二体の巨人が浮かんでいる。

 一体の名はアークセイバー。神々しさを感じような純白に青と金も彩られ、剣を構えており騎士のような姿をしている。

 もう一体の名はゾルディオン。黒く翼が生えており、白き巨人とは相反する悪魔ような外見している。

 二体は向き合ってはいたが、相手の出方を伺う為か、動く気配はしない。

 両者の間にはただならぬ空気が漂っている。

 敵、殺す殺される、それ以上の怒りや憎しみが両者の間にはあった。

 そしてついに、二体の巨人は動き出す。

 アークセイバーは両手で握った剣を上げ、ゾルディオンも拳を前に出し立ち向かっていく。

 剣と拳とぶつかり合い、火花が舞う。

 何度もぶつかる度に生じる衝撃は、天災の如く地上の建物を吹き飛ばしていく。

 二体の攻撃はどちらも届かず、決着が見えないほどに果てしない戦いが続く。

 二体は決着を付けるべく、最後の一撃を放とうとしていた。

 アークセイバーの剣は光に包まれ、ゾルディオンの拳は禍々しい光に包まれた。

 そして、二体は相手に向かって突き進んでいく。

 剣と拳はぶつかり合った瞬間、街を吹き飛ばすほどの大きな衝撃が生まれ、光が放たれた。

 下の街、そして二体の巨人は光に飲まれていく。

 アークセイバーが勝ったのか、それともゾルディオンが勝ったのか……

 この戦いの結末は誰も知らない。


***


 ファース学園、放課後……

 15歳の少年、アレク・ノーレは廊下を歩いていたら、掲示板に貼ってある新聞に目が止まった。

 彼は足を止め、新聞を流すように軽く読む。

『ゼイオン帝国との緊張が高まる』

『ボーガリア鎮圧から三年』

 など見出しで書かれるのはどれも隣国のゼイオンとの事であった。

 ここエレシスタ王国とゼイオン帝国は長い間戦争こそは起きてはいなかったが、局地的な紛争やテロは絶えず起こっており、事の発端はおおよそ千年以上も前の事になるという。

 なぜ、争いは起きてしまうのだろうとアレクは素朴な疑問を抱いていた。

 しかし、この地域は治安が安定していた為、自分の国の出来事ではあっても身近に感じれず、疑問に思ってはいても興味は薄かった。

 アレクの住むツバークという街はエレシスタの南東に位置し、東方向に馬車で三日早ければ二日の距離にゼイオンとの国境があるが、穏やかで治安も安定していた。

 その為、例え国同士で争い事が起きても、自分の身の回りや生活圏が平和ならそれでいいとアレクは思っていた。

 それに自分ひとりで解決する問題ではないし、自分が悩み考えても意味がないくらいにスケールの問題だとも考えていた。

 そんな事を考えている所に、多くの本を重そうに運んでいる男性教師が彼の視界の中に入る。


「大丈夫ですか、先生。俺が持ちます」

「すまないなアレク。資料室まで頼む」


 アレクは困っているような人を見かけるとじっとしていられない性格であった。

 もしも、今ここで本を運ぶ先生を見て見ぬ振りをしたら、何か後悔をしたような気分になってしまう。

 そんな後悔をするならば、本の一冊や二冊運んだっていいじゃないかというのが彼の考えだった。

 仮に人助けをして後悔しても、見過ごして後悔するよりは良いと思っていた。

 重い本を持ちながら教師の後ろを歩き、ようやく目的の資料室までたどり着いた。教師の指示のもと、取り敢えず机に本を置く。


「ありがとう。助かったよ」

「そんな、大した事はしてないですよ」


 教師からの感謝に対し、アレクは照れくさく謙遜する。

 放っておけないから、勝手に手伝った。

 ただそれだけであったからだ。


「あっやっべ、アイツんとこ行かないと!」


 手伝いが終わり、資料室を後にした。


***


 アレクの通う、ファース学園はツバークの丘にある全寮制の中等教育機関。

 かつて戦争で使われ廃墟になった城を修復した物を校舎としており、開校してから十数年と日が浅い学校であった。

 エレシスタに義務教育は初等教育までであり、中等教育以上の学校を通うのは任意であり、アレクと同い年が働いていても珍しくはない。

 アレクは亡き両親の親戚の勧めで通っていた。


「今日はツバークに行くんじゃなかったのかよ?」

「わりぃアレク、授業中に寝てたら教室の掃除するハメになってよ……」


 アレクが話しかけた掃除をしている少年の名はリック・ユーランド。ファース学園に入学して間もない頃からの友人であった。

 学園内で一番一緒に遊び、喧嘩したのは恐らく彼であろう。

 今は違うクラスだが、こうして今も変わらず遊びに行く仲であった。

 両親は魔術士らしいが、卒業後に両親の仕事を手伝うという。


「なぁ、掃除手伝ってくれよぉ」

「……あとで奢りな」

「ありがてぇ!」


 本来ならリックの罰なんだから、掃除を手伝うべきではないとアレクは思っていた。

 しかし、アレク自身が少し流されやすい事もあり、友人の頼みとなるとどうも断れない。

 そういう事もあり、学園の便利屋や雑用のようにアレクに頼んだりする人間も少なくない。


「学園の便利屋、アレクさんが手伝うと掃除が捗りますなぁ~」

「さっさと終わらさねぇと日が暮れ……」


 その時、外から生まれて初めて聞くような轟音が聞こえる。

 なんだと思い慌てて外を見ると、ツバークの方に黒い煙が立っているのが見えた。


(まさか、戦争か……?!)


 アレクは嫌な汗をかいた。

 いや、何かの間違いだ戦争の筈がない……

 必死に何かの事故、暴発などと楽観的に捉えようとするも、心のどこか戦争だと確信していた。

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