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閑話 そのモノは伝説の…

閑話です

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私は何もしていないのに捕らえようとし、倒しても倒しても向かってくる人間の相手に疲れ、安住の地を求めて大陸から大陸へと飛んだ。その際見つけたのが、この森だ。この森には結界が張ってあり、それは魔力に反応して強くなったり弱くなったりするらしい。誰が作ったのか分からないがいいものを見つけた。そのため、魔力量が異常なほど多い私がこの森に入ってしまえばいくら人間だろうと攻めてこれないはずだ、そして結界の中に入ってしまえば私ほど魔力が無ければ出ることもできないはずだ。その予想は的中した。


ここに無理やり入ろうとした者は皆、結界の近くに来るなり結界によって吹き飛ばされるか、吹き飛ばされなくとも結界が強固すぎて私を捕らえようとしたものは諦めていった。だが、その魔力量故かここに元々住んでいた魔物は森か出ようとしたが出れず、森のどこかにひっそりと住んでいる。最初の頃はそれでよかったが、今となっては魔力の塊である妖精しか私の話し相手になってくれないため妖精がいないときは一人だ。


私がここにきて何百年たっただろうか、前は捕らえに来て諦めて帰る者たちを見るのが名物だったのに今となってはもう忘れ去られたのだろう。私を捕らえに来ようとする者はいなくなった。


今、私はこの森にある岩山の洞窟に住んでいる、少し寂しくなってきた。だが、また私がここの森から出れば、ドラゴンだからと言って戦争が起きるに違いない。だから、ここから出るに出れないのだ。私は教えるのはいいが覚えるのはとても苦手なのだ。はぁ、今となってはここで過ごした何百年ある内になぜ人化の術を覚えることを諦めてしまったのか、自分でも不思議だ。そうすれば人里に降りれたというのに。


やる気が出る何かがあれば、また人化の術を覚えようとは思っている。まあ、それは明日から頑張るという誰かの言い訳にも似ている意味なのだが。本当に誰か来て私にやる気を分けてくれないだろうか。

                                                                                      -とあるドラゴンの日記

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岩山にあるその洞窟の奥に住み着いていたそのモノは朝からやけに森が騒がしいと感じていた。別段モンスターなどが騒いでいるとかではなく、森に住んでいる妖精が囁き合っているので特別な人種でなければ、普通に静かだと思うであろう。

もちろんアラタにも見えないし聞こえない。しかし、洞窟に住み着いていたモノはそれ—色とりどりに光る妖精—が見えて聞こえるため、朝から騒がしいと思いつつも、いつもの様に話しかけるのだった。


「今日は朝から騒がしいのう、なんじゃお主ら……何をそんなに騒いでおる?」

「にんげん!にんげんがいるの!」

「そうそう!にんげんのおとこのこだよ!」

「すっごくよわそうな、おとこのこ!」

「っ!おお!人間とな!久しぶりじゃのう!どうやってこの森に入ったんじゃ!?」

「ちがうの!あらわれたの!」

「そうそう!ぱって、でてきたの!」

「うんうん!いきなりあらわれたよね!」


家も!家も一緒に出てきた!などと、ちかちかしながらはしゃいでいる妖精を片目にそのモノは想像をめぐらすのであった。


はて、いきなり現れたとな、しかも家ごと。そして現れた子供が弱そうだという。疑問が尽きないが、まず話し相手ができたというのはとてもうれしい。だが、なぜ家ごと人間が現れたのか不思議でならなかった。そういえば今日は空気の匂いが少しだけ違う気もする。それはさっきあらわれた人間の匂いなのか。でも何百年も前に嗅いだ人間の匂いと違うし、むしろ匂いが無いと言っていい。幸か不幸かアラタがいきなりこのモノに出会わなかったのは消臭のエンチャントのおかげだ。


匂いが無いんじゃ探せないし、妾の前に現れたらじっくり観察しようとするかのう。久しぶりの人間じゃし、ちょっとぐらいなら付き合ってくれるだろう。とその現れた人間に興味を持ちながら、そのモノは再び二度寝するのであった。


最初に言っておこう。まず、森の中に現れることは不可能なのだ。いくら転移魔法でも森に張ってある結界の中までは入って来られない。そんなことできたら結界の意味を成さなくなってしまうからである。


いつの間にか妖精は飛び去っており、昼を過ぎたころだんだんと何かの気配が近づいてくるのを感じ、その余りにも気配の弱さにただの魔物かと思った。それは、幾度となく強者と渡り合ってきたからこそ、そう言えるのだろう。それ故普通の人間の気配など弱い魔物と同じなのだ。しかし、自分の魔力のせいで魔物はここら一帯から消えているのだ。


そういえば、もしかしたら朝に妖精どもが騒いでいた人間かもしれないと思い、その人間が来たら盛大に脅かしてやろうと意気込みながら待ち伏せするのだった。しかし、このモノが住んでいるのは洞窟の奥のため、ここにたどり着くにはかなりの時間を要する。


このモノは待てど暮せどその人間が来ないので、痺れを切らしこちらから行ってやろうと20メートルは超える巨体で移動し始めたのだった。そのモノの種族名はエンシェント・ドラゴン。おとぎ話にしか出てくることがない伝説のそれは確かに存在していた。


次回は2日後ぐらいです

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