040枚目 石碑前での戦闘 その4
読んでないと思うけど。
みんな、もうすぐ第一章終わるで
「おイ、マテ。話ガあルんだガ」
琴花達が盛り上がっている所に、サーシャの姿をした何か(以下 漆黒の者)が面倒くさそうに頭を掻きながら水を指してくる。
【はんッ! 今更命乞いか? 哀れよのぅ〜。なら受け付けぬ。クーリングオフじゃ。妾のコインで軽〜く死刑じゃ♪】
「命乞いかしら? 正直逃げてくれるならありがたいけど……」
「戦わないで済むなら、あたしは助かるけど」
「命乞い違ウ。オ前ら揃イも揃ッて馬鹿か? 勘違イをしてイるみたイだかラ話ヲ聞けヨ」
漆黒の者は大きなため息をついた。
【命乞いの割には上から目線じゃの〜。琴花よあいつ邪魔じゃ。消してしまえ】
「無茶言わないでよウリエル」
消せるものならとっくに消しているし、ナヴァナが死ぬこともなかった。消すことができないから今に至る。
【ちぃッ! 使えんのぅ〜】
「だったらコインをもっとちょうだい」
【計画的に使わんから土壇場で焦るのじゃ。家計簿をつけろ家計簿を】
「今回支給されたコインの殆どは、あたしの意思じゃないんですけど」
2日目のログインボーナスはコイン4枚。
そのうち使用したのが、アイブロウペンシルで1枚、ナイフに女神の加護で1枚、ノイッシュ回復で1枚で合計3枚。今琴花の手元にあるのは1枚だけ。
アイブロウペンシルは琴花自身だが、ナイフに女神の加護を付与させたり、ボロボロのノイッシュを回復させるように言ったのは女神ウリエル様であり、使用した3枚のうち2枚は琴花の意思ではない。だが、願ってコインの力を発動させたのは琴花なので、やはり琴花の意思ということになる。
【いやいやコインの力を発動させたのは琴花お前自身じゃし、やはりお前の意思によるものじゃぞ。断り切れなかったお主が悪い】
「ぐぬぬ」
「とりアエず、勝手二話すゾ。まずお前ラが言っテいるこのサーシャの偽物トいう話ダガ、全然違ウ。残念なガラ本物だ」
「嘘よッ! サーシャちゃんはそんな簡単に人を殺せるような人間じゃないわッ!!」
「エルフ、お前ノ気持チはよク分かる。だガこれが真実だ。この少女は昨日森の奥深くでボロボロになっていたところを拾ったのだから」
「そんな、拾ったってモノみたいな言い方しないで」
「私は精神体ミタいなモの。ちょうドいいトコろに器があっタんだ。拾うニ決まっテるダロ」
【サーシャは琴花お前を逃すために体力的ににも精神的にもボロボロになったのじゃろうな】
「サーシャちゃん……」
白い霧が深く足場が悪い中、背後からハクトウパンという強力な魔物に追いかけられる。サーシャは新人の冒険者。体力や精神の消耗は生半可ではなかったであろう。死を相当覚悟したに違いない。
「それニ、この少女ハ掘り出シ物だ。ナンたってエクストラスキルの所持者ナノだから」
「エクストラスキルッ!? サーシャちゃんが?」
漆黒の者の言葉にエルが驚く。
「ねぇウリエル、エクストラスキルって何?」
【むむ、そういえば説明していなかったか? 琴花よ、この世界の人間や魔物は何かしらのスキルを1つ持って生まれ落ちるという話は覚えているか?】
「うん、この世界の人間じゃないあたしにはないんでしょ固有スキル」
【で、エクストラスキルというのは、いわゆる女神や神それに準ずる存在などに関連するスキルのことじゃ。例えばエルの場合、妾の声を聞くことができる。すなわちエクストラスキルの保持者じゃ】
「あ、ウリエルの声が聞ける固有スキルなんだと思ってた。ということはエルにはちゃんとした固有スキルがあるんだね」
「ふふ、もちろん秘密よ」
【あとノイッシュもエクストラスキルの持ち主じゃぞ】
「あ、そっか。あたし以外で見えてるもんね」
実はノイッシュもエクストラスキルの所持者。これで琴花の仲間のうち2人がエクストラスキルの所持者だと判明する。なかなかにチート。
「イイか話を続ケテも」
律儀に琴花達を待ってくれている漆黒の者。
【会話に関しては意外と待ってくれるようじゃの。これを利用して逃げるのもアリじゃな】
「うん、最初は驚異かなと思ったけど、実は良い人なのかな〜」
「騙されたらダメよコイロちゃん。それが相手の作戦かもしれないわよ」
「オ前ら、普通に話ヲ聞ケよ」
漆黒の者は大きくため息をついて、
「アト、そこのチビっこいの」と指を差した。
【うむ、どうやら琴花よ。新規一名様ご指名じゃぞ】
「うぅ……それ絶対あたしじゃない」
得体の知れない黒い奴に指名されても嬉しくない。琴花は泣きそうになった。
【どう考えてもチビなのはお前じゃろ】
「いや、ウリエルも結構小さいんだけど……」
残念ながらウリエルの姿を見ることができるのは特定のスキル所持者および琴花のみ。漆黒の者はウリエルがたぶん見えていない。となると自ずと指を差したのは琴花になる。
「オ前さっきカラ何をブツブつ言っているんだ。モシカシて神かソレに準ズる者の使イなんジャナイのか?」
漆黒の者のウキウキしたその声に
「ひ、人違いでは……ないですかね〜?」
琴花はしらばっくれることにした。




