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コイン磨きの聖女様 牧師の娘とウリエルが歩む異世界  作者: 聖魔鶏カルテペンギン
第1章 オクジェイト大森林 探索編
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010枚目 重役出勤、遅過ぎる御登場

そしてその場に残された。

「どうしょう……サーシャちゃんが」

 吹き飛ばされたときの痛みがまだ残っていたが、必死に身体を動かして、琴花は目の前に落ちているサーシャの槍を拾った。

 琴花の細腕にズシリと重さがのしかかった。

「こんな重い槍を使ってたの……」

 サーシャはこの槍で、強敵であるハクトウパンと戦ったのだ。途中で琴花をハクトウパンに売ろうとしたが、最終的には彼女は己を犠牲にし、ハクトウパンを挑発して森の奥へと姿を消した。



「あ……あたしは、なんて取り返しのつかないことを…………うぅ」

 琴花は槍の柄もギュっと抱きしめた。

 涙が止めどなく溢れてくる。

 何もできなかった事と、サーシャを犠牲にしてしまったこと、どうやってこの森を出ればいいのか分からないこと、色々な想いが交差して琴花の心をグチャグチャにしていく。


 眼鏡を外して目をこする。

『泣いておる場合じゃないぞ、琴花』

「え?」

 また空耳かと己を疑う琴花。


『馬鹿者、こっちじゃ』

 声がまた聞こえた。

 だが、誰もいない。

 琴花が眼鏡をかけようとすると、

『ストップじゃッ!』

 と止められる。

『ええ加減にせぇよ、全くこの辺りで妾の出番じゃろうに』

 それと同時に、琴花の目の前に白い何かが現れ始める。


 それはだんだんと人の形を作り始め、しばらくすると、そこに10代半ばくらいの少女が現れた。

 どんな手品使ったのか分からないが、突然目の前に現れた少女に驚く琴花。

 どことなく神々しいオーラを身に纏い、浅葱色の着物を着崩したきめ細かい肌の少女。

 知的でありながらクールさを感じさせる。

 そんな美少女が突如表れた。

 かのイリュージョニストの引◯天功もびっくりだ。

「わぁ〜」

 あまりの美しさに見惚れてしまい、琴花は我を忘れそうになった。


 だが、次の瞬間、

『なぜずっと呼びかけているのに返事をしなかったのだ琴花ッ!』

 いきなり少女は琴花に怒鳴り始めたのだ。

 事もあろうに、初対面である琴花に。

 神々しいオーラが突如消失する。

 神秘的な空気が台無しだ。


『全くヒヤヒヤさせよってッ! 今ので妾の寿命が100年は軽く縮んだわッ!!』

 なぜそんなに機嫌が悪いのか、残念ながら分からない。その睨みだけで、簡単に人を殺せてしまうのではなかろうか。


『ちゃんと返事をしていれば、少なくともこんな目合わずに済んだものを……お主は馬鹿なのか……馬鹿なのか?』

 大事な事だから二回言ったのか……。


「あのーさっきから何を怒っているのかサッパリなんですけど……」

 恐る恐る挙手をする琴花。

 八つ当たりはご勘弁願いたい。


『おほん、まぁ怒鳴ってしまったのは心配していたからじゃ、許せ。琴花が呼びかけに応えられなかったのには理由があるのじゃ』

 ということは返事をしなかった琴花が悪くはないということになる。

 やはり八つ当たりだった。

 迷惑な話だ。


「え、えーと……ところでどちら様? なぜあたしの名前を? 名乗った覚えはないけど……」

 理不尽な八つ当たりのことは一旦置き、素朴な疑問を少女に問う。

 なぜ、この目の前にいる少女は琴花の名前を知っているのだろうか……。


『こほん、紹介が遅れたな。妾の名はウリエル。四女神の一人だ』

「女神様? ウリエル? はぁ〜」

 いよいよ幻覚まで見えるようになったかと思うと、何となく頭痛がしてくる琴花。

 自分で女神を名乗るなんて、ものすごく中二病患者っぽい。それを言うと怒られる気がするので黙っておく。


 とにかく待ちに待ったキーパーソンの御登場だ。

 遅過ぎる御登場。重役出勤。

 皆様長らくお待たせいたしました。

 自称女神様です。


『うむ、名前を知っているのは、妾の呼びかけに琴花が応えた。そしてその見返りとしてロメイラードに御招待したからじゃ』

「……いやいや、応えた覚えないですけど」

 少なくとも初対面で、いきなり怒鳴り散らす相手の要望に頷いた記憶はない。

 でも現実問題ここにいるということは、この女神の呼びかけに応えたということになる。


「あーあとあんたウリエルだっけ? その名前は四大天使様からきてたりする?」

『おぉなかなかの博識だな。この世界では四大天使の役割を四女神が務めている。馬鹿と言ったことは撤回しよう』

  女神ウリエルは笑みを浮かべた。

「ど……どうも」

  両親からよく神様や天使の話を聞いたり、神話を読んでいたことが幸いしたようだ。



「えーと……ということは、あたしをここに連れてきた犯人ってことでいいの?」

 今までの話を整理した結果、琴花はそういう答えに辿り着いた。

『むむっ! 犯人とは聞き捨てならんが、まぁそういうことにしておこう。この程度で怒っておっては女神なんぞやっておれんからのぅ〜』

 女神ウリエルは眉をひそめた。

 ものすごくピクピクと眉が動いている。怒りを堪えているのがバレバレだ。

 琴花は見て見ぬ振りをした。

 触らぬ女神に何とやらである。

 とにかく琴花をここに連れてきたのはウリエルという女神様らしい。


「でも本当に女神様なんですか?」

『なんじゃ、その疑わしい眼差しは?』

「いえいえ、実はこの森に住む妖精とか、悪霊の類じゃな……」

『おのれぇ〜好き勝手な事を……まぁ良い。話を続けるぞ。まず、妾と琴花は違う次元に存在しているため、普段は見えもしなければ声も聞こえない』

「それは困りますね」

『さらに言うと妾の姿はお主にしか見えないから、妾と喋る時は注意じゃぞ。一歩間違えると痛い人じゃ』

「それは困りましたね」

 現に困った事ばかり起きた。どうにか生きてるから問題はないが、死んでしまったらどう責任を取るつもりであろうか。

『それでは案内人として役に立たない。だから妾は、琴花のアイテムに細工をしたのじゃ』

「アイテム?」

 琴花はそう呟いて、バックからコインを取り出した。

 あの不細工な鳥がチャームポイントのコインである。

 役に立たなかったコイン。

 7枚あったが諸事情により5枚となっている。

 1枚は投げて、もう1枚は兎が人参を使ってコインを弾いたりして合計2枚、絶賛行方不明中だ。


『あぁそのコインについては、また後じゃ。アイテムというのは、そう、その眼鏡じゃ』

 ウリエルは、琴花が持つ眼鏡にビシッと指を突きつけた。

 赤◯堂で安く購入したフレーム。だがレンズの加工の関係上そこそこ良いお値段となっている眼鏡だ。

『その眼鏡に、私の姿や声を認識できるように細工したのじゃ』

 ババーンとどこかで効果音が聞こえたような気がしたが、琴花はスルーする。

「すごいね。そんなことできるんだ女神さ……ってあれ?」

 ウリエルの説明に頷きつつ、琴花は首を傾げた。


「でも今、眼鏡かけてませんけど?」

 かけてもいないのに、ウリエルの姿や声も認識できている。それでは、わざわざ眼鏡に細工する必要が全くないではないか。



『うむ、そして本題に入るぞ。実は眼鏡に細工するつもりが、間違えて琴花の眼に細工をしてしまったらしい』

「…………はい?」

 レーシックするならちゃんと手続きを取って欲しい。人の目玉を勝手に改造はやめて欲しい。


『つ、つまりだ。間違えてしまったばっかりに、妾の姿や声を認識できず、サポートできなかった。すまん堪忍して欲しい』

 ウリエルはぺこりと頭を下げた。

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