美少女可愛い系兄と、美形で変な弟の登場です(いつもこんな感じです)
集まった家族は総勢19人。
グランディアの当主だが、ある事情で半ば軟禁状態にある清影に清雅、清雅の父のヴィクター。
ヴィクターの末っ子であるシエラとその妻である清泉と娘の六槻。
清影の次男の清秀と妻の瑞波に息子の成時。
清秀の妹のセイラと双子の息子のアルドリーとアーサー、末っ子の清夜。
清影の養子の隼人と妻の知慧、二人の娘たちの日向夏と月歩。
そして、隼人の実の妹で、同じく清影の養女の綾。
最後に、アルドリーたちの従兄の息子で、シエラの息子として育ったエドワードである。
アルドリーは幸矢、アーサーには蒼記と言うグランディア(清野)名前を清影によって名付けられたが、エドワードはシエラによって彗と言う名前が与えられた。
幸矢は、様々な人々、全てのものに幸福を与えられる者になるように。
蒼記は青色を記す…歴史に名を残す、双子の兄を支えられる王弟として努力するように。
彗は彗星。
空を払い清める彗星のように、幸矢の背後を守れる存在に…。
そう、付けられた。
彼らは、準備を整えようとするのだが、フィアが、
「それ、そのまま圧縮して持っていくから大丈夫だよ?」
「圧縮!?」
首を傾げる周囲に、シエラが、
「術だよ?例えば、この森全部をこれくらい…にして、持っていくの」
両手でボールを包むように、して見せる。
「えっ…?でも…。普通物質圧縮や、空間の移動等は物理的に…」
メガネをかけたインテリ然としているが、本当は目が悪く、おっとりとしている隼人が問いかける。
「術にはそんなの関係ないし」
ルゥの言葉にフィアのみならず、常識的なシュティーンまで真顔で頷く。
「えっ!?じゃぁ…」
「引き剥がして、小さくして運ぶの。で、好きなところに持っていって、デーンと膨張させる!!何なら、その場所の土とか…こっちに持ってきた方がいい?」
フィアの言葉に、ヴィクターは、
「止めなさい。外来種がこの国を侵食していくから」
「え?あったんですか!!」
「この国に必要のないものはある程度、処分しておいた。これ以上増やすとこの世界の生態系を壊してしまう」
目をキラキラさせたフィアとルゥといった、甥の子供たちを見て、
「グランディアの自生種は外来種よりも弱いんだよ。研究していて、その結果もあるから、帰ってから目を通していいよ。それと、ヴィルナ・チェニアは、グランディアの花だよ。原種を採集して、増やしている。その花畑も移すから良いね?」
「えぇぇ!!聖なる花が!?」
「是非!!是非、見せてください!!ヴィお祖父様!!」
瓜二つの顔に、やれやれと首をすくめたヴィクターは、
「向こうで見せるから、落ち着きなさい。お前たちはやっぱりセラヴィナの血を引いてるねぇ…」
「そうですか?」
首を傾げる二人に、苦笑する。
「良く似てるよねぇ…お前たちは。なのに…」
父のぼやきが始まると思ったシエラは耳を押さえようとするが、異母姉の清雅が手をつかむ。
「駄目よ?ちゃーんと聞きなさい」
「やめてよ!!姉様!!」
「駄目よ~!!」
「お前もだよ!!みやび!!」
ヴィクターは、姉弟を見る。
「全くお前たちは、私の子供なのに芸術の芸も理解できず、暴れ放題壊し放題!!もう少し、おっとりとした可愛い子に生まれて欲しかった…」
嘆くヴィクターの横で姉と弟は顔を見合わせ、又始まった…とため息をつくと、
「みやび!!シエラ!!お前たちのことを言っているんだよ!!ちゃんと話を聞きなさい!!」
ガミガミと母親たちを説教する祖父を、ちらっと見た清秀は、
「まぁ、あちらはあちらで、置いといて」
「置いといていいのか!?」
驚き、息子に問いかける清影を、いつも通りスルーして、
「まあ、と言うわけで、あの3人は置いといて、出発するのは一度に皆が行って良いのか?えと、シュティーンどの」
「シュティーンでいいですよ。清秀どの」
「じゃぁ、こっちも秀と呼んでくれ。で、19人だ。それに一気に移動は扉にも負担がかかったりしないのか?」
秀の簡潔ではっきりとした言葉に、
「大丈夫ですよ。御大来てますから」
「御大…?」
フィアとルゥが示す…そこには、
「わぁぁ!!凄い!!凄いよ!?何々?可愛い!!触っちゃおう…えぇぇ!?私の事嫌!?何で!?…えぇぇ!!アレクの義兄だから!?仕方ないじゃない!!だって、結婚した後にアレクが生まれたんだよ?私のせいじゃないし、うちの奥さんが一番の被害者なんだよ!!解ってよ~!!…うんうん、え、ほんと?仲良くしてくれる!?やったぁ!!」
何故か地面に顔を寄せ、ぶつぶつと呟く黒いフードつきマントにくるまったどう見ても不審者。
「じゃぁ、向こうに行きたい子、こっちに来て…ってうぉぉ!?何々?えぇぇ!?皆こっちに残りたくないの?どうしてさ…うんうん…」
今度は空を見上げ話している。
「…えっと、あの人?」
恐る恐る、示すと3人は頷く。
「そう。あの人」
「何を見て話してるんだ…?」
と、突然分裂し、
「シュティーンにルゥにフィア!!お友だち増えたよ~!!連れて帰っていいよね?」
駆け寄ってくるのは、ルゥに瓜二つの美少女と、エドワードを成人させたような男。
「兄様!危ない!!」
「大丈夫…うわぁ!!」
転びかけた美少女を、慌てて支える。
「だから言ったでしょう!?」
「…うぇーん。ヴィクありがとう」
「いえいえ。ちゃんと立ってくださいね?転んだらダメですよ?いいですね?」
コンコンと言い聞かせ、下ろすのだが、再び転ぶ。
「うぇぇーん。痛いよぉ!!」
「だから言ったじゃないですか。言うことを聞いてください!!兄様」
立たせて、落ち葉や土を払う青年に美少女の組み合わせに、清秀は、
「あれ…?」
「えっと…一応、紹介しますと、華奢な方が私の師匠であり、ルゥとフィアの父親、マルムスティーン侯爵家当主、シルベスター・シャレル卿です。そして、隣が…アレクの一番上の姉上であるアンネテア王太女殿下の夫君で、シルベスター卿の弟になるクルス侯爵ヴィクトローレ殿下です。ちなみに、エドワードの祖父に当たります」
「祖父ぅ!?」
清秀たちは、エドワードを見るが、あっさりと、
「えぇ、そうなんです。あの収集マニアが、祖父です」
「収集マニアって何!?珍しいんだよ?この私が!!私が!!土の精霊とお友だち!!何ていい世界なんだ!!一生ここに…」
「いれば?アレク大叔父上と。そうすればおばあ様の苦労も減りますよ」
無表情で言い放ったエドワードに、祖父だと言う青年は、
「じゃぁ、アンと、兄様がいれば良いから~」
「僕、エリーがいないと生きていけないし、ルゥとフィアと可愛いアルの守役だから帰るよ?ヴィクは一人でアレクといてね?しばらく戻ってこないでいいよ?」
「に、兄様~!!嫌だ!!離れて暮らしたくないよぉ!!兄様~!!私の事嫌い!?」
「う~ん…」
考え込んだ美少女が、
「えっと~10番目くらい?」
「えぇぇ!?何で!?エリーとルゥとフィアの次…」
「父様とルード兄様に、アンでしょ?ユーロにシュティーンにアルも!!それに…うわぁアル!!アルだ!!久しぶり!!」
弟を無視し、アルドリーに駆け寄ると抱きつく。
「アル!!会いたかったよ!!覚えてる?」
首にしがみつく美少女を抱き締め、アルドリーは、
「じい!!わぁ!!来てくれたの!!え、何でルゥちゃんたちとこなかったの?」
「ん?あのねぇ…エーナ!!レイ!!」
その声に、空から降りてくる陰に周囲ははっとするが、トン、トンと降り立ったものにぎょっとする。
大柄で耳の垂れたゴールデンレトリーバーを馬よりも大きくした上に、大きな翼を持つ…白と黒の獣。
「ドラゴン!?」
隼人は慌てて娘たちを庇うが、アルドリーは、
「違うよ?隼人兄さん。この子たちはナムグって言う、シェールドの固有種の翼獣。こっちの大きい子が、このシルゥじいの乗獣のエーナ。こっちが、俺のペットのレイ」
「違うよ?アル。レイは、乗獣試験受けてるから、乗獣として乗れるようになってるよ」
「本当?凄いじゃない、レイ!!お利口…って、エーナ!?何で、俺がレイに撫で撫でするの邪魔するの?酷いよ!!」
うきゅるきゅるるるうぅ~!!
獣が鳴くと言うより歌っている?
純白の毛並みに、明るいライトブルーの瞳の獣がアルドリーと顔を近づけて。
「えっ?だって、俺はレイの親友で、俺が先に仲良くなったの!!」
ぎゅぅぅ~、ぐるぅぅ~!!
「駄目?良いじゃない!!レイはエーナの所有物じゃありません!!それに俺とレイは、親友なんだから!!…嫉妬深い旦那は嫌われるよ?」
ぐっ…ぐぅ…。
「だから良いよね?じゃぁ、レイ~!!」
わざわざ、エーナにシルゥを乗せ、漆黒の一回り小柄なナムグに抱きつく。
「レイ!!レイ!!久しぶり、元気だった?顔見せて?」
アルドリーは顔を覗き込む。
金色の瞳がアルドリーを見つめると、ペロンっと顔をなめる。
「覚えててくれたの?良かった!!こっちに連れて、来られなかったから…嫌われてたり、忘れられたり…してないかと思って…」
ふにゅぅぅ!!
「本当?俺の事忘れてないし、大好き?うん、俺も大好きだよ!!良かった!!会えて。一緒に戻ろうね?」
周囲が唖然とする中、アルドリーは漆黒の毛並みに埋もれるように、抱きつき話し続けていた。