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竜と王と剣と盾  作者: 刹那玻璃
始まりのご挨拶から…ぼっこぼこです(笑)
3/31

この世界はまともな人ほど不幸度が高いです。(特にシュティーン)

  シュティーンは、ちょこんっと成時せいじの横に座った少女を見る。

 物心つくかつかないかの頃に会った叔母…先代国王アヴェラートの皇后セリカに瓜二つ。

  では…この子が…。


「父様。このお兄ちゃんは誰ですか?」


  珍しい右目が青、左目が深紅の銀の髪の少女が首をかしげる。

 と、シエラは、


「あぁ、紹介するよ。サーヤ。このお兄ちゃんは、幸矢こうやの守役の一人で、サーヤのおばあ様セリカ様の甥…マガタ家当主のスティファン卿。シュティーンお兄ちゃんだよ。そして、シュティーン。見てわかる通り、この子が幸矢と蒼記あおきの妹の清夜さや。さーこの本名が清子さやこだから、サーヤって呼んでるの。でも、ビックリでしょ?」


  その言葉に、シュティーンは、


「あぁ、私がお会いしたのは3才位でもううろ覚えだけれど…本当にセリカ叔母上に似てる。全部じゃない。でも雰囲気が似てる。フワッと優しい笑顔が似てる。親父どのが喜ぶ…親父どのは本当にセリカ叔母上を可愛がっていたんだ。サーヤ様。もし、私の父に会ったら笑ってくれませんか?」

「シュティーンお兄ちゃんのお父さん?…お祖父ちゃん?」

「え?」


  シュティーンがキョトンとすると、サーヤは、


「ママンセラは、さーの本当のお父様はパパファンだって言ってた。あ~ちゃんもそうだよーって」

「はぁ!?ちょ、ちょっと待って!!私は…」

「あ~ちゃんは『僕たちは、あのどーしようもない、女たらしの浮気性で、ろくでもないのが父親だけど、サーヤのパパはパパファンだからね!!』って言ってた」


  違うの?


 と言いたげに首をかしげる叔母瓜二つの美少女に、だらだらと冷や汗をかきつつ、


「えっと…サーヤ様のおばあ様のセリカ叔母上と、私の親父どのが年の離れた兄妹なんです。で、セリカ叔母上は、アヴィ叔父上と結婚されて最後に生まれたのが、私の3才下の従弟になるサーヤ様たちご兄弟の父親の…」

「俺でーす!!」


  何故かほふく前進をして登場する従弟に咄嗟に駆け寄り、


「馬鹿か!?お前は馬鹿か!?なんつー登場だ!?初対面の娘に会うのに、それはないだろ!?え~と、サーヤ様っ…」


  必死に馬鹿な従弟の不審としか言い様のない行動を、それなりに言い訳しようとしたシュティーンは、目の前を通りすぎる湯呑みが、従弟の額に激突する様に硬直する。


「あっつー!!あつあつあつつ!!シュティーン助けて!!熱い!!」

「えっ!?え~と、水…」


 と、清夜を見ると、指で示すのが、池。

  ちょっと待て!?仮にも国王に…。

 と今度はシエラと成時を見ると、同じく池…しかも、シエラは、


「投げ込んでいいよ!!後で怒られるのはアレクだし。一気に逝け!!アレク!!」

「逝ってらっしゃい」


 と、手を振る成時と清夜に、やけくそになったシュティーンは、重すぎる巨体を池に蹴り込んだのだった。




「あぁぁ…何したの?あの池には、エイの可愛がってる鯉がいるんだよ?その鯉、向こうの通貨で一匹数十ルゥド(1ルゥドは、約100万圓)するのもいるんだよ!?珍しいのわんさかだよ!?エイがぶちきれるよ?誰が、池に入れた…って、シュティーン…シエラや子供たちのおもちゃ認定されてどうするの…」


  呆れた口調でヴィクターは、兄の孫を見る。


「それに、アレクサンダー・レオンハルト!!」

「は、はいぃ…」


  ずぶ濡れで、庭に座り込むひ孫の父親を見下ろし、


「もし、鯉が一匹でも行方不明、もしくは、怪我、ショック死してたら、エイに思う存分八つ当たりされてこい!!ついでに、汚い!!風呂に入ってこい!!」


  フワッと巨体のアレクの体が浮き上がり、そのまま風呂の有る離れに突っ込んだ。


「わー、父様すごーい」

「何が?」


  シエラの言葉に問いかけたヴィクターに、成時が、


「おお祖父様。今お風呂って…」


「きゃぁぁぁ!!」

「女の敵!!ぶっ潰す!!」

「変態!!」


  悲鳴に、泣き声が響き、


「な、あなたは!!私の妻子に妹の入っている風呂に、何しに来たんですか!!」


  ドカ、バキ、ドスーン!!


 という凄まじい粉砕音と共に、


「ち、違う!!風呂に入ってこいって投げ込まれて!!」


  必死に訴える声に、


「言い訳も大概にしなさい!!反省の言葉もないのなら、このまま…」


  ぎゃぁぁー!!


 と叫ぶアレクの声に、


「あ、忘れてた。あの子達が入浴中なのを…」

「良いんだよ。父様。六槻むつき瑞波みずはちゃん泣かせたんだから、もうとことんやっちゃおう!!じゃぁ、私も隼人はやとの加勢に行ってきます!!」

「湯船だけは壊さないように!!良いね!!」

「他は!?」


 と問いかけたシュティーンに、ヴィクターは真顔で、


「私の子供たちと清子にかかれば、何でも破壊するからねぇ…もう、いつもエイが嘆いてるよ。家や離れくらい、破壊も当然。諦めたというより、吹っ切ったよ。うん、長男の暴走よりまだまし!!リュシオンは、シェールドの国庫284年分を一度に破壊したし…王都のマルムスティーン侯爵邸とその隣の広大な広場も壊して…もう少しで、チェニア宮を壊そうとして、ランス義父上が必死に止めたんだよね~?それに比べたら小規模小規模!!」


  あはは~と笑う祖父の弟に、どう返事を返して良いのか…言葉のないシュティーンだった。

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