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竜と王と剣と盾  作者: 刹那玻璃
始まりのご挨拶から…ぼっこぼこです(笑)
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セイラさんと清雅さんは、破壊が趣味です。(清影さんが可哀想)

シエラの両側には、瓜二つ…と言っても、一人は黒髪と瞳の成人した美女。その隣には、純白の髪に深紅の瞳の10才前後の少女。

アレクをボッコボコにすると、母を呼び二人して追いかけ回すセイラを放置し、スティファンは幼馴染みで、父の従弟のシエラについて行くと姿を見せた二人を抱き寄せたのを見た。


「シュティーン。紹介するよ。私の奥さんの清泉いずみさん。そして、私の最愛の娘の六槻むつき


スティファンは、まじまじと母親に瓜二つの愛らしい少女を見て、


「女の子…なのに、それ男の子の名前じゃないのか?私は余りグランディアの言葉を知らないけれど…」

「よく解ったね?うん。男の子の名前。体が弱いの。だから、こちらの風習で、男の子のように元気に…って、む、六槻!?」


きゅぅぅぅ…


っと、倒れ込む娘が地面に伏す直前、受け止めたシエラは額に手を当て、


「待って~!?熱が!!熱出てる!!」

『あの…あなた様…?』


隣から、小鳥が歌を歌うような言葉が流れる。


『六槻ちゃん、知らない人…あの、この方ではなくて、もう一人の…しゅうお兄様よりも熊みたいな男の人に追いかけられたって…泣いて逃げていたのをせいくんに助けてもらって…怖いって…』

「あの…何だって言っているんだ?シエラの奥方は」


シュティーンは仕事の関係上ある程度の言語は理解できるのだが、小声だったため聞き取れない。


「…シュティーン…あのアレク何で連れてくるの!!」


シエラは、食って掛かる。


「あのバカ、家の子追いかけ回したんだって!!」

「はぁ!?」

「もう、成時せいじがいたからいいものを…って、成時?それに秀に瑞波みずはちゃんどうしたの?」


奥から姿を見せたのは、アレクサンダーよりも長身だがしなやかな体つきの、童顔の男と、そっくりなアルドリーたちとさほど年の変わらぬ少年。

そしてほっそりとした、なぜか蒼白でガタガタ震えている童顔の女性。


「兄貴!!瑞波が!!変態に抱きつかれた!!ぶっ殺して良いか!?」


なぜか拳を固め、シュティーンに近づいてくる男に、シエラは、


「ストーップ!!秀!!変態はこのシュティーンじゃない。そうだよね?瑞波ちゃん?」


息子らしい少年に抱き締められた瑞波という愛くるしい女性は、頷く。


『もっと、大きくて…怖かった、です…』


ポロポロ泣き出した妻に、うろたえ、


「瑞波!!泣くな…お願いだから…瑞波が泣くと私が悲しい」

「シエラ叔父さん。俺、さっき六槻を追いかけ回してた変な男に飛び蹴りと鳩尾に膝を食い込ませて、他にもう一ヶ所急所に攻撃しといたんだけど…何かピンピンしてて…あれ、人間じゃないよね?何?」


成時という少年は顔をしかめる。


「これでも、幸矢こうやには敵わないにしても、蒼記あおきすいには勝てるからそれなりに自信があったんだけど…女の子や女性の敵は半殺し!!にするくらいは」

「あれが規格外のアホだから」

「アホって…知ってるの?」


目を丸くする少年に、


「…本当に言いたくないけど…あれ、幸矢たちの父親。で、この人がその従兄で、幸矢を2才まで育てた二人の守役の片方のシュティーン」


シュティーンを見た親子は揃って不憫そうな顔で、


「苦労してんだな…可哀想に…頑張れ!!応援だけはしてやる。シュティーン!!」

「あの変態の従兄って言うのだけでも可哀想なのに、さーこねーさんの面倒まで見るはめになるなんて…本当に不幸体質なんですね…スティファン卿…」


と呟かれ、シュティーンは本気でアレクの従兄に生まれるんじゃなかった…とやさぐれた気持ちになった。


「あ、そうそう。シュティーン。紹介するよ。この子がさーこ…セイラの次兄の秀。清秀せいしゅう。今はこの、黒髪と瞳だけど、本当は…ほら」


秀がつけていたピアスと指輪を外すと、金髪に緑の瞳になる。


「…はぁ…セイラの兄上とは到底思えない…似てない」

「さーこは顔だけは父似で、性格と破壊要素は母に似てる…俺は、じい様にエディ大伯父上に似てると言われた事がある」

「あぁ、似てる!!よかった…もうこれ以上、セイラとアレクの破壊行動助長するような…」


ドカーン!!


とすさまじい音が響き、吹っ飛ぶのはアレクサンダーで、続いて追いかけ飛び出してきたのは、セイラともう一人の女性。

黒髪と瞳のセイラに対して、女性は金髪に右の目は緑、左目は茶色。

しかし、にっと楽しげに笑う様は蒼記と瓜二つ。

そして逃げようとするアレクサンダーを取っ捕まえ、背負い投げ、地面に叩きつけると、


「つまんなーい!!さーこ、これ弱いんだもん。何?これ」

「一応、幸矢くんたちの父親よ。母様」


セイラの言葉に、目を見開き愕然とする。


「えぇぇー!?こんなのから家の幸矢が生まれる要素あり得るの!!さーやにこんなの『あなたのお父さんよ』なんて紹介させたくないわ!!弱いし、可愛くないし、顔も嫌!!シエラ!!今まで叩き込んだありとあらゆる武術で潰しておしまい!!」


指を突きつけ命令する女性に、嫌そうに、


「姉様…だから~私は、これの処理はしないって。するのはこのシュティーンだから」

「ちょっと待て!!処理って何だっ!?」

「うるさい!!」


セイラと秀の母親らしき女性は、起き上がったアレクサンダーを回し蹴りをかます。

きゅぅぅぅ…と今度こそ気絶したアレクサンダーに、


「何なの?これ。殴っても張ったおしても起きてくるし…あ、そう言えば、エイの大事にしてた盆栽、こいつに投げちゃった!!…まぁ良いか。こいつが壊しましたって、いって…」

「みーやーびー!!清子さやこ!!お前たちは!!私の大事な庭に盆栽、鯉に触るなとあれほど、あれほど言ったのに!!あぁ、私の大事にしていた100年ものの五葉松に清輝しんきの…あぁぁ」


嘆く長い黒髪の男を不憫そうに見た清秀は、母と妹に、


「母上、さーこ!!父上に謝りなさい!!もうどうにもならないくらい破壊するのは解っているけれど、兄上の名前をつけた特別な、父上の盆栽を投げてどうするんです!!」

「投げたのはさーこよ?」

「で、それを、アレクに向かって蹴りつけたのは母様で、ぶつかって壊れたの。だから私たちが壊したんじゃないわ。アレクが壊したの」


屁理屈をこねる妻と娘に、ぶちきれたらしい男は、


「『清雅せいが、清子!!そして、アレクサンダー・レオンハルト!!着いてこい!!性根を叩き直す!!』」


シュティーンがくらっとするほど、ぞくぞくとむずむずが入り交じった呪文のような言葉に、3人は立ち上がると、歩き出した彼の後を追いかけて消えた。


「えっと…」


呟いたシュティーンに、


「あの人、さーこと秀の母親で、私の姉…清雅・アリシア・レイン。で、黒髪の人は姉様の夫で清影せいえい。で、持ってたのは、二人の長男の清輝の名前をつけた特別な盆栽でね…あぁ、しばらく閉じ籠ってぶつぶつ嘆くんだろうなぁ…兄様は繊細だから」

「兄貴だって父上を嘆かせるだろう?それにしても、あのじい様の息子と娘が何で破壊魔!?」

「知らないよ!!私だって知りたいよ!!」


叔父甥の会話に、半分呆れつつ、こちらを見る成時に気がつく。


「えっと…成時くん?」

「セイで良いですよ?幸矢も蒼記も彗も呼んでます」

「え?同じ年?」

「いえ、二つ上です。幸矢たちが明日誕生日ですけど、俺は7の月の7の日生まれです」


成時はハキハキ答える。


「じゃぁ、私のことはシュティーンと。ファンと呼ぶのは友人だが、シュティーンは家族しか呼ばないんだ。なので、瑞波どのも清泉どのもお願いしますね?」

「シュティーン様と?」

「呼び捨てでも良いですよ…あ、それだと余計緊張するかも…さんくらいで」


微笑む青年の上品さにホッとする。


「えっと後会ってないのは…」

「セイラのもう一人の子とヴィクター大叔父様!!」

「あぁ、二人は、秀たちの弟一家と一緒に花畑に…あぁ、帰ってきた。父様!!さーやに隼人はやと知慧ちえちゃん、あや日向夏ひゅうか月歩つきほ

「おや。その顔は、ルドルフの息子の?」


穏やかで優しげな男に、シュティーンは頭を下げる。


「初めてお目にかかります。大叔父上。私はマガタ公爵スティファン・ヒルディガードと申します。シュティーンとお呼びください」

「シュティーン…いい名前だね。それに、ルド…ルードよりも、繊細で大人しそうだけれど、優しく強い。ルードはいい子の父親になったんだね」

「父や母、そしてお祖父様方に恥ずかしくない人間となれるよう努力することを…15のときより、剣に誓いました」


シュティーンは、続ける。


「剣の腕も仕事も、父にはまだまだだと言われておりますが、必ず、父の自慢の息子だと言って貰えるように鍛練いたします」

「…もうすでに、自慢の息子じゃないのかなぁ?」

「はい?」


キョトンとするシュティーンに、ヴィクターは、


「上がりなさい。日向夏に月歩に綾と知慧はお風呂に入っておいで。そして、清秀。シエラは危険だから、瑞波と清泉と六槻を寝かせてきなさい。成時はシエラと待っていること、いいね?」


と勧め、隼人と奥に入っていった。

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