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『病』  作者: 人平 芥
2/10

『無遊病』

「訪れぬ幻想」

 突然だけど、「夢のような世界」という言葉がある。

 それは文字通り、現実的でない世界。夢でしか味わうことができないような体験が待っている、そんな世界なのだろう。

 夢というのはそもそも、人の意志の塊だ。

 欲どしい人間は金に溺れる夢を見るし、大望を持つ者はそれが成就する夢を見る。

 つまりは、現実からの乖離(かいり)――いや、寧ろそうであって欲しいと願う現実が、夢となって人々の眠りを染めるのだろう。

 「睡眠欲」――人間とは本当に強欲な生き物で、安らぎの時間においてでさえ己の欲求を満たそうとする。逆に言えば、常に自分の望みを忘れずにいるというのは、寧ろ素晴らしいことかもしれない。

 だけど――――

 だけど、私は……夢を見ない。




 気付いた時には目が覚めている。昨晩眠り込んだ記憶はあるのに、睡眠していた時間だけがぽっかりと抜け落ちてしまったような、そんな不思議な感覚。

 身体の疲れも取れているし、眠気も一切感じない。それなのに、眠ったという実感がまるで湧いてこない。

 朝食を摂り、学校へ向かい、友人とふれ合い、帰路につく。

 何もおかしなところなどない普通の生活、不憫なことなど何一つない。

 だけど、私は夢を見ないのだ。

 「夢のような世界」を……私は知らない。現実と虚実の区別が――意味が、分からない。

 日常に不満があるわけではない。だけど、それでも、


 ――――私は夢を見てみたい。

無遊病(ムユウビョウ)

夢を見なくなる病。

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