【7】 中堅冒険者パーティのダンジョン攻略1
ここは下層到達が最深到達記録のダンジョン、ユーガルダンジョンである。
昨日まででその下層まで到達していたクルトたち冒険者パーティは、いよいよ深層到達に挑まんとしていたのだった。
どさりと音を立てて、襲い掛かって来ていた魔物、ディアウルフが崩れ落ちる。
下層に多く現れるが、それなりに高難度の魔物であるはずのそれは、パーティの剣士ノエルの手によってあっさりと葬られた。
「は~! やっと下層まで来れたよぉ」
剣士のノエルがそんなことを言いながら疲れたと主張する。
「ここまで来るだけで一苦労だよな」
腕を頭の後ろに組んでそんなことをぼやくのは、格闘士のアドルフである。
彼はさっきからノエルと一緒に、襲い来る魔物をちぎっては投げちぎっては投げしているのである。
おかげで後衛であるクルトはほとんど出る幕のないままここまで来ている。
「あ、またこの種落ちてるよ、ほら」
前衛組のぼやきを無視して床に落ちている謎の種を拾うのは魔法使いのヨーゼフだ。
ドロップした種を、ヨーゼフはクルトに見せてくる。
「それあれだろ、マズいし、固いし、花も咲かない『役立たずの種』」
「鑑定魔法をかけると、『ドロップアイテム』って出てくるんだけどなぁ。何かに役に立ったことがない」
本当に不思議だよなぁ、と肩をすくめるヨーゼフはその種を懐に入れた。
『役立たず』と言いつつも、下層でここまで頻繁に現れるドロップアイテムは珍しい、と言って、ヨーゼフはいつもその種を持ち歩いているのであった。
「深層に潜る前にメシにしよう」
「わーい。僕、干し肉持ってるよ」
「俺、パン持ってる」
「火を起こすから、干し肉をあぶってパンに挟もう」
「いーねそれ」
わいわいと四人で食事の準備を始める。
下層も深層近くともなると人はいない。特に情報の無い深層は、どんな危険があるのかもわからない。
今の内にしっかりと食事を摂り、回復しておくべきだ。
「あ~、深層踏破したら、お祝いに行きたいなぁ」
「それいいな。俺はうまいもの食べたい」
「『エックハルト・フェッツナーのレストラン』はどうだ?」
「元貴族お抱えの料理人がやってるところだろ? 美味しくて大盛りで評判の」
「そうそう。あんまり高くもなくて、連日行列が絶えないって聞いたよ」
「じゃー、ダンジョンから出た日の夕食はそこで決まりだな」
まだ踏破どころか到達もしていないのに、四人はそんなことを話しながら食事をした。
ただ、おそらくこのパーティは深層も踏破するだろうとクルトは思っている。
本人たちは多分気がついていないが、後ろから見ているクルトは知っている。
この三人がこの数年で格段に強くなっていること。それが、見合う努力を日々し続けているからだということも。
そもそもだが、ディアウルフをあっさり討伐していることがおかしい。
ディアウルフは上級難度に位置付けられているが、冒険者の間では最上級難度の魔物に匹敵するとまで噂されている。それをこうも簡単に前衛二人でのしている時点で、実力は格段に上がってきているのである。
食事を済ませ、火を片付けて、深層へと向かう階段を下りていく。
その階段を下りる途中で、クルトは言った。
「……俺は、帰ったらまたおまえらと湯殿につかりたい」
それを聞いて、三人は目をぱちくりとさせて一斉ににこにことする。
「そうだなぁそうだなぁ! ほーんと、クルトくんは俺たちのこと大好きだな~?」
アドルフがからかうように言うので、クルトはその額にデコピンをお見舞いする。
「いった! 痛いな! 手加減なしかよ!?」
「自分のせいな」
「悪かったよ!」
そんなに強くしなくても、と唇を尖らせるアドルフに、ヨーゼフが軽く笑う。
「はは、矢が出てこなくてよかったな、アドルフ」
「え!? これそんなにまずい発言だった!?」
「まずいというか、ウザい」
「ウザい!?」
アドルフはしょんぼりと肩を落とした。
こういうところは、三人とも昔からそのままだ。
強くなっても、実力が上がっても、最強の冒険者パーティだと噂されるようになっても。
この変わらなさが、クルトは嬉しかった。
切り替えるように、ノエルが笑いながらぱちんと手を打った。
「さあ! 行くぞ、深層」
「ああ」
「うん」
「はいよ」
ダンジョンの壁の向こうには、きらきらとした青い光が漏れ出していた。
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