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小蘭の正体は!?

「あーお腹いっぱい!!」


ポッコリと膨れたお腹を摩りながら小蘭は満足そうに笑う。


「だろうな!ほぼお前が食べたからな!」


小蘭の食いっぷりに呆れを通り越して尊敬すら覚える皇帝龍飛。


「いっぱい食べないと大きくなれないでしょ?」


「お前は幾つだよ!」


小蘭は忘れているようだが、目の前にいて言い合いをするこの人物は皇帝なのだ。


「小蘭、この方は皇帝なのよ。もう少しだけ自重しなさい?」


白風だけがまともな事を言ってくれるので、龍飛は嬉しくなり、立ち上がって握手をする。


「白風、お前だけでもまともで良かった」


本気で感動する龍飛を見て、何も言えずに苦笑いしか出ない白風。気にしていない小蘭に食後の茶を用意してあげるのは、誰もが震え上がるあの黒州王であり、早く帰ってくるよう説得をしているのは、政を牛耳る宰相の紅州王である。


「よし!腹も満たされたし!仕事に行ってきます!」


小蘭は白風と共に三人に深く一礼すると、笑顔で出て行った。


「⋯⋯あいつはちゃんと仕事は出来るのか?」


龍飛は今になって気になり出した小蘭の仕事だが、紅司炎も黒麗南も同じ事を思っているらしく考え込んでいた。


「まぁ元気に過ごしていれば良いか。あいつはまだ小娘なのに苦労しっぱなしだからな。今は自由にさせておこう」


「陛下。そう言いますが小蘭はあのようにちょっとだけ鈍感なところがあります。あの子を狙う小蠅達に気付かないので私は心配なのですよ」


「小蠅って⋯龍麒もか?」


皇族を小蠅扱いできるのは黒州王ぐらいだ。


「私の娘にしては人が良いというか⋯変な男に狙われないか心配です」


「変な男って⋯龍麒は第二皇子だぞ?」


紅州王も負けていない口の悪さだ。


「陛下、皇太子と皇后はどうしますか?」


いきなり話を変える紅司炎。


「⋯⋯。ああ、皇后は和解書を書かせたら実家に帰らせようと思っていたが、帝家の当主が拘束されたからな」


そう言いながら非難するように黒麗南を見るが、本人は涼しい顔をして茶を飲んでいる。


「皇后は帝天宮から一歩たりとも出させない。何があってもだ。皇太子はこのまま牢に入れて反省させる。そして皇太子としての地位も辞して東宮から出てもらう」


「つまり皇位継承順位も?」


鋭い視線を龍飛に向ける司炎。


「ああ、継承はもう無い」


「皇太子派が大荒れするな」


司炎が頭を抱えるが、麗南は冷静であった。


「皇太子派をまとめていた帝家の当主が拘束されたんです。それに黒家と白家が政に復帰するんですから他の貴族達は何も言えないでしょう?」


黒家は超がつくほどに裏工作に長けているのは貴族の中では有名で、標的にされたら終わりとまで言われている。白家はかなりの武闘派であり、敵に回したら生きてはいないと言われて恐れられていた。だが、外での戦争に黒家と白家も全面的に協力していて、中の政には関わっていなかった。


「外の魔族との件も落ち着きましたし、白家も我が黒家も今度は中の掃除をと思いましてね?」


「「⋯⋯」」


そんな麗南に、司炎も龍飛も嫌な予感しかしない。頭を抱える二人と楽しそうな一人の元へ、顔太監と揚揚、そして数人の女官が急いでやって来た。


「陛下、紅州王、黒州王、先ほどは女官が失礼を致しました」


そう言いながら頭を下げる揚揚。


「ああ、特に問題ない。腹を空かしていたから食事をさせただけだ」


龍飛の言葉に驚愕する揚揚。いつもあまり食べないのに、皿が殆ど空になっているのはあの女官が食べたからなのだ。あり得ない事態に紅州王や黒州王の顔色を窺うが、変わった様子はなく雑談していた。


「申し訳ございません!女官ごときが陛下の食事に手を出すとは!あの女官の卑しい根性を叩き直します!」


他の女官と共に急いで平伏して許しを請う揚揚だが、何故か顔太監は冷や汗を流しながら焦っていた。


「卑しい?腹を空かせてるのに食べさせずに働かせた者は処罰されないのですか?卑しいという問題では無いでしょう?」


黒麗南がいきなり揚揚に殺意を向けた。揚揚は針が突き刺さるような痛みと、恐怖で汗が吹き出して震えが止まらなくなる。他の女官も同じで倒れる寸前だった。


「もう良い。あの女官を罰したりするな。朕が食べろと言ったのだからあの女官も断れないだろう」


「⋯⋯は⋯はい。」


龍飛はそれだけ言うと、紅州王や黒州王と共に立ち上がると、政務室に戻って行ったのだった。




残ったのは揚揚と他の女官達であった。


「⋯⋯あの子は何者なの?噂では前女官長の明月様もあの子と関わって投獄されたそうよ」


女官達が片付けをしながら話している内容は、揚揚も知っていた。明月とは派閥争いで負けてしまい、女官長の座を取られたが、突然あの狡賢い明月が呆気なく拘束されてしまったのだ。それには新人の下級女官が関わっていると噂があったが、信じられなかった。


「龍麒殿下とも親しそうだったわよ!」


「確かに女官というより妃って言って良い顔よね?」


あの女官を案内していたのは第二皇子の龍麒殿下だった。揚揚は女官達に指示しながらも、小蘭の事を考えずにはいられなかった。





「白風はお腹空いてないの?」


「大丈夫。それよりも仕事よ!」


「おおー!社畜の発言!」


楽しそうに話していた小蘭と白風だが、前からやって来た大柄の女官に道を塞がれてしまった。


「⋯⋯何か?」


小蘭が黙ったままの女官に話しかけるが、何も返ってこない。白風と顔を見合わせ、横をすり抜けようとした時だった。


「あ⋯あの!!」


「うわ!喋った!」


失礼な小蘭の頭をこづく白風。


「あの⋯助けてほしいんです!」


急に泣きながら助けを求めて来た大柄な女官は、どう見ても下級女官であった。


「何かあったの?話してみて」


小蘭の言葉に泣きながらも頷き、話し始めた。


「すん⋯睦瑤(ムーヤオ)が⋯虐められてて⋯もう見てられなくて⋯」


色々あったので、睦瑤や環莉(ファンリー)に会えていなかったが、まさかそんな事になっているとは思ってもいなかった小蘭は衝撃を受けた。


「何で⋯あんなに良い子なのに、誰の怒りを買ったの?」


「裁縫部の中で⋯睦瑤は群を抜いて才能があって⋯それに嫉妬した先輩達から嫌がらせを受け始めました⋯最初は無視するだけだったんです⋯なのに最近は突き飛ばされたり⋯作った服を切り裂かれて⋯睦瑤はお金の為と言いながら頑張っていますが⋯今日は殴れて、頭をぶつけて倒れたまま動かなくなって⋯」


それを聞いた小蘭から血の気が引いていく。


「それで睦瑤は!?まさか⋯」


「目を覚ましましたが⋯でも頭から血を流して⋯なのに周りは何もしないんです!今は私がただ包帯を巻いただけで⋯なのにあいつらはそれでも睦瑤に仕事をさせるんです!鬼畜よ⋯!!」


怒りに震える大柄な女官。何もしてあげられない自分への怒りもあるのだろう。


「睦瑤と仲が良かったあなたが上級女官になったと聞いて⋯本当は下級女官はここには来てはいけないのですが⋯すみません!」


「良いのよ。よく言いに来てくれたわ!」


小蘭の言葉に白風も強く頷いた。


「案内して。大丈夫、あなたと睦瑤は私が守るから!」


小蘭に励まされた女官は何度も礼を言い、急いで裁縫部へ向かったのだった。












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