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激しい怒り②

「龍鳳!!どこにいるのだ!」


「陛下、落ち着いてください」


怒り心頭の皇帝を宥めようとする大長秋の高青だが、すでに集まっている顔ぶれを見て諦めた。そこには小蘭の父親である紅司炎や、緑州王と春惋、それに第二皇子の龍麒までいたのだ。


「父上!!は⋯母上!どうかお助けください!!大理寺の者が不当にも皇太子である私を拘束したのです!!」


牢の中から必死に訴える皇太子龍鳳だが、皆の冷たい視線が一斉に突き刺さる。


「陛下、この者は私の娘を傷つけました。紅家の当主としてこの件は許し難い事です。意味はお分かりですね?」


紅司炎が龍飛を真っ直ぐ見つめて宣告した。


「⋯⋯ああ。これは皇太子の暴挙としか言いようがない事件だ。本当にすまない」


皇帝である龍飛が頭を下げたが、その光景を見た皇后は驚愕する。そして天下人である皇帝が頭を下げるなどあり得ないとばかりに司炎に向かっていく。


「紅司炎!たかが宰相の分際で陛下に楯突くとは何事です!この娘を傷つけたですって!?別に何ともないじゃない!!」


「お言葉ですが、先ほどまでこの子の顔は無惨にも腫れ上がり、腹を蹴られて吐血までしたのです。光海殿が傷を癒して今は綺麗ですが、証人はここにいる全員です。特に大理寺職員は殴られるのを目撃しています」


司炎の言葉に大理寺職員が深く頷いた。


「だからって皇太子を拘束するなどあり得ないわ!早くここから出しなさい!」


皇后が大理寺職員に命令するが、誰一人として動かない。


「ああ、無駄ですよ。ここにいる職員は黒狼です。黒家の者達なので”皇后ごとき“の命令で動くわけありません」


皇后を鼻で笑う緑光海に、小蘭は苦笑いする。


「皇后ごときですって!?緑光海!天下の黄家を敵に回すつもりなの!?」


「敵に⋯ねえ?別にどちらでも?私を動かせるのは麗蘭だけですから、麗蘭次第ですね」


「この娘が命じれば黄家を裏切るというの!?」


緑光海の発言に顔を真っ赤にして詰め寄る皇后。


「皇后!朕がここに呼んだのはそんな言い争いをさせる為ではない!麗蘭を許すと書いた和解書を作成する為だ!」


「ええ、ですがこの娘はあまりにも危険です!この娘が都に戻った途端に皇太子は拘束されました!龍麒はこの娘に何かを吹き込まれています!このままでは黄家がこの娘に乗っ取られてしまいますわ!!」


母親である皇后の馬鹿げた発言に龍麒は不快感を露わにする。


「いい加減にして下さい!麗蘭はこの国を守った英雄ですよ?あんたが後宮で威張り散らしていた時、妖魔や魔族と命懸けで戦ってた麗蘭を危険?乗っ取る?ふざけた事を!」


「な!母親に向かって何て言い草なの!陛下、龍鳳を助けて下さいませ!きっとあの娘がなにかしたのですよ!」


そう言った瞬間、皇后の頬に強い衝撃と同時に痛みが走った。龍飛が皇后の頬を殴ったのだ。


「廃后になるのが嫌で和解書に署名すると言ったのは皇后であろう!これ以上騒ぐようなら実家である帝家に戻っても良いのだぞ!」


「そんな!では皇太子は⋯どうなるのです!?」


「このまま拘束して尋問する!この国の英雄を傷つけたのだ、当たり前であろう!」


龍飛は小蘭の元へ向かう。


「麗蘭、本当にすまなかった。朕の教育不足だ。皇后に任せきりにしたばかりにあのような⋯」


「陛下も国を守る為に戦場と行ったり来たりで苦労していました。私がとやかく言う筋合いはありません」


小蘭の言葉に、龍飛は何も言わずにただただ優しく笑った。


「小蘭、皇后がこの和解書に署名したら無罪で釈放だ。大理寺から出て少し休め。その間にこの件は解決させる」


龍飛の言葉に頷き、小蘭は春惋に連れられて大理寺を出て行ったのだった。




小蘭がいなくなった瞬間から、この場は冷たい空気が漂っていた。


「さて、皇太子をどうなさいますか?」


司炎が龍飛に静かに問うが、その声音は怒りを含んでいた。


「紅家はこの件を絶対に許すつもりはありません」


「ああ、緑家もです」


当たり前に手を上げるのは緑光海だ。龍麒は何も言わずに父親である皇帝龍飛を見ているが、その目は怒りに満ちていた。


「父上!反省しています!あの時は怒りでどうかしていたのです!」


「ほう、だから何しても良いのか?お前が怪我をさせた紅麗蘭がどれだけこの国に貢献しているか分からない奴に何を言っても無駄だ!」


「そんな⋯では私はどうなるのですか!?」


「皇太子の地位を剥奪する!皇后と共に帝家へ行け!それが嫌ならこのまま罪人として処罰する!」


龍飛の決定に崩れ落ちる龍鳳と皇后である帝華妃だが、周りはそれをすぐに受け入れ、さっさと行動を始めた。高青は部下と共に各方面に報告する為に出て行った。大理寺職員達も皇帝の命令で仕事に戻って行った。


残ったのは紅司炎、緑光海、龍麒、そして皇帝と護衛長の霧柔だけであった。魂が抜けたように崩れ落ちたまま動かない皇后と龍鳳に、最初に近付いて行ったのは緑光海であった。


「小蘭の前ではやりたくなかったからな」


そう言いながら牢の中に入って行き、放心状態の龍鳳の顔に手を翳した。


「⋯⋯ぎゃあああ!痛い!何だ⋯何をした!?」


顔に激痛を覚えてのたうち回る龍鳳を無表情で見下ろす光海。


龍鳳の顔は、先ほどの小蘭のように無惨に腫れ上がっていた。















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