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激しい怒り①

「黒狼!?」


黒狼と聞いて崩れ落ちる側近達だが、皇太子である龍鳳はやはり愚か者と言われるだけあり、黒狼を前にしても動じていないというか分かっていないのだろう。本当にどういう教育をされてきたのだろうと疑うレベルだった。


「あなた達を殺人未遂で拘束する。そして皇太子殿下にも話を聞かせてもらいます。不服の方は私達“黒狼”がお相手致します」


にこやかだが目が一切笑っていない黒狼達に、側近達は諦めたのか抵抗をしないで大人しく拘束された。


「な!勝手な事をするな!!私の側近達であるぞ!?名門帝家を敵に回す事にもなるが良いのか!」


「ええ。問題ございませんが?」


それを聞いた小蘭は吹き出しそうになるのを必死に我慢していた。


(顔が悲惨な事になったわね。早く治したい)


ジリジリと焼きつく様な痛みに顔を歪ませる小蘭だが、なんとか身体を起き上がらせて立ち上がった。


「殿下、あなたはやり過ぎたわね。無抵抗な女をここまで殴る、そして偏った考え方、とてもこの国を任せられる人物じゃないわ」


「は!何様だ!?女のくせに英雄と囃し立てられていい気になりやがってんのか!?」


「‥‥‥。話にならないわ」


溜め息を吐き、小蘭は蹴られた腹を押さえながら壁にもたれかかった。


「小蘭‥‥いえ、麗蘭様。今すぐに医官を呼んできますのでお待ち下さい」


「ああ、医官ではなくて光海を呼んでくれるかしら?」


「分かりました」


黒狼達は急ぎ緑光海を呼びに行こうと動き出した時だった。


「麗蘭!!」


そこへ髪を振り乱しながらやって来たのは、麗蘭の父親であり紅家の当主である紅司炎であった。司炎は春惋の報告を聞いて急いでやって来たのだが、そこで目にした光景は悲惨なものだった。


大事な娘の美しい顔は腫れ上がり、血を流したのだろう服にまで血が滲みついていた。


すると司炎の髪が燃え上がる様に深紅に染まる。それと同時に周囲が熱くなり始め、他の罪人がその熱さに騒ぎ出した。


「よくも麗蘭を傷つけたな。誰だ?殺してやるから覚悟するがいい!!」


失禁しそうなほど恐れて震えている側近達は視線をすぐさま龍鳳に向けた。


「殿下ですか?何故に娘を傷つけたのですか?」


笑顔でいるのが逆にこわい司炎が、龍鳳をジリジリと追い詰めていく。


「女のくせに生意気だから制裁を加えたのだ!何が悪い!?母上を打った女だぞ!?」


開き直る龍鳳に、黒狼達も皇太子だと分かってはいるが怒りで手が出そうになる。


「もういい。お前に何を言っても無駄だ。陛下に言って紅家は今後一切黄家に関わらないと宣言する」


「父上、それはこの国が機能しなくなると言う事です。民は何の罪もありません。お考え直し下さい」


小蘭が司炎を説得するが、その怒りは凄まじく全く耳に入らない。司炎はそのまま牢に入って行くと、苦しそうな愛娘を優しく抱きしめた。


「なぜやり返さないんだ!こんなに傷だらけになって‥‥。春惋が動いているからすぐに光海も来るはずだ。もう少し我慢しなさい」


「これくらい平気よ。こんな軟弱な攻撃で私が苦しむとでも?」


そう言いながら笑う小蘭だが、顔が腫れ上がっている為かかなり痛々しく見える。


「麗蘭!!」


そこへ緑光海が春惋と共にやってきたが、小蘭のあまりの姿に衝撃を受けている。普段は眉ひとつ動かさない光海だが、鬼のような顔つきになり皇太子に向かって行く。多分殺すつもりなのだろう、それに気付いた龍鳳はあまりの恐怖に急ぎ黒狼達の後ろに隠れた。


「光海、やめて!やめなさい!!」


小蘭の声に反応して振り返る光海。


「ひどい顔だ‥‥!何でこんな奴に殴られてるんだ!!」


小蘭の顔を見て涙を流しながらも、怒りを必死に抑える光海にごめんねと聞こえるか聞こえないかぐらいの声量で答えた小蘭。


「ここまでゲス野郎だったなんてねぇ?」


春惋は腰を抜かしている龍鳳に近づき無理矢理立たせると、その顔を思いっきり殴った。龍鳳は吹っ飛び、気絶したのだろう全く動かなくなった。


「え、死んだ?」


焦る小蘭だが、周りはどうでも良さそうだった。


「麗蘭!!」


今度は第二皇子である龍麒がひどく焦った様子で駆け寄って来たが、小蘭の惨状を見て言葉を失い、その怒りを兄である龍鳳へ向けた。


「兄上!!気でも狂いましたか!?」


「いや、多分気絶してるかも?」


龍麒は倒れている龍鳳の頭を掴むとそのまま殴ろうと拳を振り上げたが、その手を小蘭が止めた。


「龍麒、とりあえず皇太子とその側近はここにいる黒狼が拘束してくれるから落ち着いて?」


小蘭の言葉に深く頷く黒狼を見た龍麒は、深く深呼吸して気持ちを落ち着かせた。


「麗蘭、とりあえず治療させてくれ」


「お願い」


光海が小蘭の顔に手を当てると、そこから淡い光が一瞬だけ放たれ、次の瞬間には顔の腫れが引き、いつもの美しい顔に戻っていく。


「ああ、痛みが引いた!ありがとう、光海!あとはお腹もお願いしたいんだけど?」


そう言いながら恥ずかしげもなく腹を見せる小蘭に焦る男達だったが、その青紫になっている傷口を見てまた怒りが湧き起こった。


「こいつ!腹も殴ったのかい!!クズ野郎が!!」


だが、男達が動く前に春惋が気絶して動かない龍鳳の腹を蹴り上げた。


「陛下もここにもうすぐやって来るだろうが、どんなに庇おうと今回ばかりは絶対に許さない」


司炎は拳を握りしめながら、怒りに満ちた視線を龍鳳や側近達に向けた。光海は急いで小蘭のその痛々しい傷を癒したが、怒りは一向に収まらない。


「ああ、スッキリした!」


元気良く立ち上がった小蘭は、なぜかそのまま牢に入ろうとするので急いで止める司炎。


「何をしている!?」


「腹が立って皇后を打ったのは事実だから、拘束されて審理されるのは当たり前よ。紅家だからって許される事じゃないわ」


「あの毒婦が何か言ったのだろう?お前が感情的に打つなんて滅多にないからな。教えてくれ、何を言われた?」


「‥‥‥。母上のことを侮辱されたからついカッとなってしまって、父上に迷惑がかかると分かってはいたのに‥‥」


「そうか。お前は悪くない。ここにいる必要はないから出るぞ」


司炎は小蘭の頭を優しく撫でながら励ます。だが、司炎や光海、それに龍麒の怒りは収まらず、沸々と湧き上がるばかりだ。


そして気絶したままの皇太子龍鳳と側近達を黒狼がそのまま牢に入れたところで、高青と霧柔を引き連れた皇帝龍飛が皇后と共に現れたのだった。
















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