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年上、年下、同い年  作者: 平坂灯影
1/1

始まり

学校の帰り道に寄った喫茶店である噂話をする。

「ねぇ、知ってる?伝説の道の話!」

「何それ〜!教えて!」

喫茶店の常連さんの二人組、今日は珍しく噂の話をする。

「その道で告白すると必ず結ばれるんだって!

「え〜マジ!?場所は?」

「えーと…あれ…その道ってどこにあったっけ…」

「マジ〜?忘れちゃったの?思い出して!」

噂話の内容を思い出すまで沈黙が続く。

だがその道で告白した者は本当に成功するのだろうか…

桜が舞い散る4月の季節、今年高2になる。小学、中学、友達なんて数えるだけしか作らずただ静かに暮らして高1も同じように終了、親が柔道家なだけあって、強制的に柔道をやっていたが、今では、柔道の道より普通に過ごしたく、辞めてしまった。クラス替え早々、友達なんて出来るはずもなくただ窓の外を見つめていた。

「暇そうだね、相変わらず友達は、空かな?」

振り返るとそこには美少女、青髪に、少しだけ膨らんだ胸に、すらっとした体型、まさにパーフェクトなこの少女はなんと翔太の幼馴染であり同級生の桐生紗奈(きりゅうさな)

「ああ、そうだよ俺の唯一のフレンドは空だけだよ」

「私だって翔太の幼なじみだよ?」

「こんな可愛い幼なじみがいたらクラスでも浮かないんだろうなぁ」

顔を上げると少し頬を膨らませてこちらを睨んでいる

「またそんなこと言って、どーせ私は眼中に無いんでしょ?」

「なんと可愛らしいんだろう、今すぐにでもその頬をハサミで切ってあげたい」

「怖っ!」そう言い紗奈が両手で自分を抱擁する。

「そんなんで大丈夫なのかな?」

翔太は頭上に「?」を浮かべる。

「高校生生活は一瞬だよ!翔太!友達作りしなくちゃ!」

意味がわかった瞬間、めちゃくちゃ腹がたった。腹パンをしてもいいくらいだ

そんなことを考えていると1時間目開始のチャイムが鳴る、それと同時に皆が席へ戻り始める

「じゃまた後でね」

紗奈も席へ戻り始める。紗奈が座ったところで教室の扉が開き、担任が入ってくる、すらっとした体にふっくらした胸元、長い黒髪、みんな担任を美人だの、尊敬する目だのスケベな目などでいろいろな目で見ているが翔太は、まるでゴミを見るような目で見る。

「初めまして、これからこのクラスの担任を努めます。八名町栞(やなまちしおり)です。みなさんよろしくお願いします」

名前を聞いて確信した、クソウザ姉だ

「あっれぇ栞おねぇじゃん!」

紗奈が声を張り驚いた口調で話す

「お、話には聞いてたがやはり紗奈か、元気にしていたか?」

クラスの生徒がみな困惑し始める

「あ、すまない紗奈とはいとこの幼なじみってことで親しくしてもらった仲だ」

まずい、これは俺がこいつのいとこだとバレてしまう、知らんぷりをしておいて後で栞には黙っていてでも言っておこう。

翔太は顔をうつ伏せにして隠す

「そういえばそのいとこさんがここにいますけどぉ?」

あぁ作戦失敗

「…翔太か、相変わらずな顔をしているな。」

終わった。俺のボッチ人生が…

「う、うす」

「なんだその塩対応は、昔はデレデレだったのに、こんなにも変わるとはな」

少し感心した顔をして翔太を見る

「過去と今では全然ちげ〜よ」

「さて、みんなまずは自己紹介から始めようか」

「それと翔太、放課後理科室へ来い話がある」

話をそらされた、それはそうと皆の視線から殺気を所々から感じるのだが

一日が終わり下校時刻、みなが一斉に帰り出す。それを眺め、羨ましく思い、呼ばれた理科室に入ると、理科室の真ん中に立ち尽くしている栞が居た

「で、何の用だ?栞、」

「おぉ来たか、翔太、」

その顔は何か緊張が抜けたような安心しているような顔をしている

「一応担任になった経緯だけでも教えようと思ってね」

「それならいとこなんだから普通にうち来て言えばいいじゃないか」

「まぁそのなんだ、早めに言いたくてな」

「で、いつになったらその口調、辞めんの?」

「すまん、学校内はこの口調じゃないと落ち着かなくてな」

「で?経緯ってやつは?」

「あぁそうだったか、実はな君のお父さんが関係していてね、翔太を柔道の道に進めるために専属された言わば翔太だけの為にやってきた存在って訳だ」

「親父がそんなことを…でもそんな権力が親父にはあるのか?親父は工場の経営者でもそこまででは無いって言う話だが?」

「…聞いていないならいい、ただ私は託されてここに来たんだその分翔太には柔道の道を進んでもらうよ、これは私の意思でもある」

「そうか、話はそれだけか?」

「あぁ話は以上だ、もう帰っていいぞ」

一体親父は何を隠してんだ?まぁ考えても仕方がないか、それよりクラス替え早々めちゃくちゃ目立ったな、あの後は、多少は聞かれたものの少ししたら何故か俺の存在がクラスから消えていった、

「どんだけ影薄いの俺って」

「まぁそんな日もあるってどんまい!」

分かっている口調で翔太の肩を叩く、正直悲しい胸の奥をきゅうきゅう締め付けてくる。

「そういえば翔太って私以外の女友達っているの?」

「なんだそれディスってんのか?最悪なことにお前以外女友達が居ないんだよな」

「なに最悪って!」

カバンをブンブン振りながら翔太を攻撃する

「イテッイテッ、そのまんまだろ!」

「じゃあさ栞おねぇのことはどう思ってんの?」

カバンブンブン攻撃をやめ再び歩き出す

翔太は手を前に出し人差し指をピンとたて

「ん?あいつはただの詐欺師だとは思っているぞなんだあの口調とあの態度は、昔とは大違いだぞ」

キリッと言い放つ

紗奈がその言葉をきいてホッと安堵する

「それならいいんだけど?」

「何なんだよお前は」

数分歩き

「じゃ私こっちだから」

紗奈が十字路の左方向を指差す

「おうまた明日な」

「おっすー」

「今年は少し楽しくなりそうだな」

そう言い翔太は空を見上げる。見上げた空はオレンジ色に染まっていた

翌日の登校日、空は昨日見たオレンジ色とは違って何故か赤色をしていた。それもそのはずだ

...訂正する。最悪だ。不幸な一年になるだろう

2・不慮の事故

今日もいい朝だ、太陽に照らされてすずめがちゅんちゅん鳴いている

「行ってきまーす」

少し慣れてきたいつもの通学路、人通りが少なく、ごく稀に車が通るくらいの道、最近はここでビルの工事が行われているのがわかった

「今日は鉄骨の組み立てか」

工事の人たちが必死に働いているのを見て感心する

「ん?前に誰か通ってるぞ?しかも制服がうちの学校のだ」

イヤホンを携帯にさして携帯をいじりながらいわゆる歩きスマホをしている

前まではここの道同じ高校の人なんていなかったのに新一年か?

そう思ってるうちに前を通る同高の人が工事現場に差しかかる

「あれ、挙動不審じゃないか?やばくないか?」

何か違和感を感じる。何かが変だ、その瞬間、俺は我が身を捨てて飛び出した。

「危ない!!」

「えっ?」

全身に痛みが走る

意識が朦朧としている中、俺を呼ぶ声とサイレンが聞こえる、無理もない俺は人を我が身を犠牲に救ったのだから、あの瞬間、車が来ていただが、車の様子がおかしかったフラフラで、後から聞いた話によると居眠り運転だったようだ、そして車は同高の人目掛けて飛んでくるのを見て、そして、咄嗟に。俺は。あぁ空が赤く見える

そこからは意識がない。助けたい気持ちで本能で動いたのだろう。訂正しよう楽しい年などではない、最悪の年だ。

「すごいな足の軽い粉砕骨折と軽い脳震盪ですね、あんな事故に巻き込まれたのに怪我はたいしたことない、まさに奇跡だよ、でも半年は入院、退院後はスポーツは何でもできる体になっているので入院頑張りましょう」

まじか、半年入院って、あっという間に3年生になってしまうじゃないか、

「ちなみに助けた自分と同じ高校の人は無事だったんですか?」

「助けた?あぁ一緒に同伴していた子ね、あの子なら無事だったよ」

良かった。最悪の状態を免れて良かった。

そこからは淡々と話は進みあっという間に病室まで移動させられた

今日から入院生活か、しんどいな。そう考えていると。扉がノックされて一人の男が入ってくる。

「翔太氏無事であるか?」

「どちら様でしたっけ?」

「我の名前を忘れるとは、では改めて」一番端の翔太の布団から離れ真ん中に立ちなにかを言おうとする。絶対恥ずかしいことをされると思い止める

「わかってるわかってる史駕箕(しがみ)だろ?」

「その通り我は枸橘史駕箕からたちしがみである!!」

遅かった。病室のど真ん中で史駕箕はガッツポーズを決めるこの男は俺が2番目にできた友だちというより体育授業余り組で、一年の頃はTHE TEACHER PEA回避のための道具として使わせてもらった戦友だ。そしてデブだ。

「で、なんのようだ?」

「用といえばようなのだが、君クラスの話題の中心になりかけているということを言おうと思ってね。」

「なんだって?」

翔太の体からは無数の冷や汗と蕁麻疹が今にも出そうなくらい焦りを感じる。

「マジなのか?」

「マジじゃなかったら言いに来ていないである、あとこれ差し入れでござる」

「あぁありがとう」

わぁ美味しそうなバームクーヘン、こんなきれいな形をしたバームクーヘンにはお紅茶が合うでしょう、、、ではなく!最悪、これからどう生きよういっそのことこのまま引き込もニートになってやろうか!あ〜!バームクーヘン美味し!!

「まぁ心配ご無用でござる、大半がその人だれだっけ状態でござるよ」

「話題にされている自体でかなり心配ご有り用何だけどな」

退院して学校に登校してくる頃には忘れられてたらいいが、

「要件も渡したいものも渡せたことだしそろそろ我はこれで」

「おうまたな」

「あぁ、それともう一つその噂は悪い噂ではなくいい噂であるよ」

翔太は悪い噂であったと思いこんでたようで顔がゆるくなったのがわかった

「なんと助けられたという人がいてその人が学校中に広めているらしいですぞ」

「ちなみに名前とかは知っているのか?学年とか」

「確か名前は南雲寿々(なぐもすずか)で学年は1個下で、き、、、んん、なんでもないでござる」

年下か、確かに前までは同高があの道を通ってる人なんて見たことがなかったからな

翔太は手を当てて考える

「なら、うちのクラスに話が広がるのは、まぁ陽キャかなんかなら納得いく。それにな」

「そうでござるななら我はこの辺で…」

そそくさと出ていこうとする

「待て、お前何かを思い出してそれを隠すようにしてないか?その人の話を仕出したときから、しかもさっき名前を出した時言おうとしたけどやめたよな?あれはなんなんだ?あとお前語尾ははっきりしろ「である」だの「ござる」だのどっちかにしろ気持ちが悪い」

史駕箕は顔を下に向ける

「くっくっく、こういう時ヒーローはどうするのかここはもうあの手しかないな」

白状する気になったか

「エターナルハイパー!」

「Run away!!」

全力疾走で病室を出ていく

「おいこら待て!」

1人で歩くと看護師に怒られるので歩けない

「くっそ!何隠してんだ、あいつ。」

後で尋問だな

〜半年後〜

そのまま6ヶ月が立つ、今日で入院してから半年になる、これまではたまにリハビリをしてたまに両親が見舞いに来て紗奈が両親に連れられて来るぐらいだった。

今日は退院の前日、親父は仕事で母さんに連れられ紗奈が来たのだが、母さんが仕事の都合で消えて、紗奈と2人っきり状態になっている

「ようやく退院だね!」

笑顔で問いかけてくる

「あぁやっとだよやっと解放される」

両腕を上に高くあげ背伸びをしながら喜ぶ。

もう運動もしていいそうでとにかく開放されることへの喜びが100%を超えている

「そういえばさ、翔太はさ、聞いた?その、南雲さんの話」

少し心配そうな声と顔で聞いてくる

翔太はそっと両腕を下ろし

「あぁ聞いたぞ」

紗奈に微笑みかける

「聞いたんだ、どう?南雲さんのことどう思う?」

「どうって、まぁ尊敬はして欲しいとは思っているよ。ただ言いふらすのは尊敬されすぎだけどな」

「じゃ、じゃあ、その、恋愛対象では無い?」

変な質問だな?とりあえずここは否定しておくのが妥当だろう

「あぁ、まぁ、恋愛対象ではないな」

「そっか良かった」

紗奈は胸に手を当てて安堵する

この時俺はその不自然な質問について詳細を聞いておくべきだった。

3・学校での話題

半年という長い月日をかけてようやく学校に、登校ができる。体を動かしたく徒歩通をしたかったのだが、親の過保護で、車での登校、という形になった

学校の校門前に翔太を乗せた車が停まる

「学校が心配だ…」

「もう後戻りはできないよ行ってらっしゃい。」

母がそんな言葉をかけて来る

車を降り空を眺めている、車が発進すると同時に声をかけられる

「おーい翔太ー!」

紗奈がこちらに手を振り、駆け足で向かってくる。

「もう足は大丈夫なの?」

紗奈が心配そうに翔太をいたわって来る

「大丈夫だそこまで痛くない」

「本当に?」

紗奈が腰に手を当て頭を近づけてきてジト目で見てくる

「あぁ本当だ」

「それならいいんだけど」

歩き始め、校舎の中、階段を登っただけで疲れる始末、少し息切れながらも、クラスの前まで来たが

ここからが難関だ足がすくんで歩けない怖い、教室に入るのが怖くて入れない。

「どうして入んないの?もしかして怖いの?w」

紗奈が笑みを浮かばせディスってくる。ウッぜぇ

「違うんだ、足が入るのを拒んでいるだけだ」

「怖いんじゃん」

完璧なツッコミを入れられた。ここは意を決して入るしかない!と思った瞬間

「あんたもしかして橳島翔太(ぬでしましょうた)?」

横からひょこっと顔を出してくるその顔は目がくりっとしていて、鼻が高く茶髪のクラスで人気者オーラが出ている

「そうですけど、どこかでお会いしましたっけ?」

「嘘、本当に橳島翔太?」

何だこの人、疑心暗鬼病なのか?

「だからそうと何回も。」

「白馬の王子様…」

目が輝いている。でも正直なんて言ったかはわからなかった

「なんだって?もう一回言ってくれ」

「え、あのそのぉ」

そんなためらうほど恥ずかしいことでも言ってたのか?でもおかげで気が紛れて今ならクラスに入れる気がするありがとう謎の少女

「言いたくないんならいいんだそれとありがとうな」

「なんでありがとう?」

教室の方へ足を進めようと後ろを向く

「じゃなくて!待って!あの!その!」

「なんだもっとお礼が必要か?土下座ならくれてやるが…」

顔を赤らめながらも決心するように大声で

「そうじゃなくて!その!私と!!付き合ってください!!」

賑やかだった教室が図書館のように静かに、そこそこ賑やかに歩いていた少年少女が信号待ちのように立ち止まり、皆がみんな硬直状態に陥った。

「え、今、俺に?」

寿々香は顔を赤らめながら小さく声を出さずに頷く。何が何だか整理が追いついていない。まるで全部白色のジグゾーパズルのように。ダメだ何か言って場の雰囲気を変えないと!

「あ、あぇ?」

くそぉ、これぐらいしか言えない自分が惨めすぎて飯がトイレ飯に進化しそうだ、ゴメンなさいなんてこんな公共の場で振られた彼女はどれほど悲しむことか、ここはひとまず返事を待ってもらうのが妥当だろう!勇気を振り絞って!さん!はい!

「その」

「待ってください!」

あぇ?早くなぁい?

「返事は、まだいいです。先輩は絶対私にあまり好意とかないですよね、まず誰かもあまり把握していないんじゃないんですか?」

「ぐっ!それは、」

名前なんて正直知らん。後輩の名前なんかこれっぽっちも、わからん!

「もう、そんなことだと思いました…私の名前は、南雲、寿々香です。この前の交通事故で救ってもらった。あの」

…、一瞬にしてなんとなくわかった。確かにこの顔でこの公共の場で告白できるのなら、この学年まで広まったのも納得がいった。始めてみる顔も名前を聞くだけで既視感が出てくる

「なので先輩!返事は3年の最後まで取っといてくれませんか?」

「あ、あぁまぁいいんじゃないか?」

寿々香の表情が一気に明るくなる。

「ありがとうございます!先輩!それじゃあ!絶対に惚れさせますからね!」

後ろを向き、階段へと走っていく。そのうしろ姿は翔太の心を揺さぶった。その心は恋愛面3割、また目立ってしまうという不安七割でできていた。どんな質問攻めが待っているだろうと身構えて教室に入ると

「頑張れよ。」

「応援しているぞ。」

そんな言葉がかけられる。本来もっと来るもんだと思っていた。しかもヒソヒソで

「有言実行したね」

「まぁそんなこったろうと思っていたよ」

などの声が聞こえてくる

「紗奈、どういうことだ?」

「あれ?翔太知ってるんじゃなかったっけ?」

紗奈も普通そうな素振りだった

「どういうことだ?俺の中には「?」だらけなんだが」

紗奈がため息をつく。

「南雲さんはあんたが好きなの!それで学校中に「白馬の王子様が現れちゃった!」とか「絶対告白する!」とか言って毎日のように二年の教室に来てたのよ?」

ということは、、史駕箕が隠していたことって、、

ようやく史駕箕が隠していることがわかったそうと分かれば!

翔太は教室を一目散に出ていき2Aから2Cへと移動する。2Cのドアを勢いよく開け

「史駕箕〜〜!!」

怒鳴るようにその名前を呼んだ。その後、翔太は史駕箕をもう吐くことが一切ないまで尋問し続けた。

その後紗奈に「放課後、教室で待ってて」と言われ学校の放課後、誰もいない教室に2人っきりで残っていた。

「結局、あの後翔太どこ行ってたの?」

「あぁちょっと史駕箕のところに」

「あのぽっちゃりの人?」

親友よ、お前は俺の幼馴染にデブっていう印象しか残されていないぞ。

「まぁそんなやつだ」

「ふぅーん、ならいいんだけど」

頬をふくらませながら話す。

「それより、病院で話したこと覚えてるよね?」

その瞳は真っ直ぐこちらを見ている。圧がすごい。

「あぁ覚えているぞ、寿々香は今は恋愛対象じゃないって事な」

「今は!?」

より一層顔が般若に近くなった。

「いや、その、そういう訳じゃないくってさ、」

焦るように早口で返答する

「ふぅーん?いや?いいんだけど?翔太が寿々香さんと付き合ってロリコン判定食らっても?私は別にどうでもいいけどね!」

「ロリコン扱いは酷いだろ、というか、お前はなんでそんなに怒ってんだ?」

「それは、、、」

般若の顔は意表を突かれたかのような顔に変化した

「な、なんでもない!」

イマイチ紗奈の気持ちが翔太には理解ができなかった

「お前今日おかしいぞ?どうした?頭にもホコリが乗ってるしよ。」

ホコリを取ってあげるために近づくが押し返される

「なんでもないって言ってるでしょ!ほら帰るよ!」

怒りながら紗奈が自分でホコリを落として、教室を出ていくのと同時に翔太も後にするが、教室を出るとき、視線を感じたのは気のせいなのか、はたまた。

「紗奈ちゃんと橳島くんって、、、」

そんなことを唱える一人の少女が教室に取り残される。

それから数日が立つが、なんだか最近妙な噂がこのクラス中を流れている。

「噂になってるらしいよ、その、私と付き合ってるって言う、」

そう、何故か紗奈と俺が付き合ってるってことがそそのかれている

「そうみたいだな、俺は陰キャライフを楽しみたいのに、頼むから、穏便であってくれよ」

正直目立つと思うと鳥肌が止まらない

「それより発信源は誰なんだ?そんな妄想癖マンは?」

「そんな妄想癖マンしか妄想できないことなの!?そんな縁ない?、、、」

紗奈がラブコメの主人公でも好きかがわかるくらい凄くしょんぼりしている

「ま、まぁ妄想癖は、言い過ぎだな!」

そう紗奈を慰めていると、廊下から雷のように早く走る者がいた

「セセセセセセセ、先輩!ツツツツツ付き合ったってまじですか!?教えてください!!」

息を切らせながら大きな声で話してくる

「おうおう、まぁそう慌てず、落ち着け、落ち着け、別に付き合ってもいないし付き合ってたとしたら全校生徒の前でキスはしてるぞ」

「キキキキキキキキキス!?」

今度は紗奈に早口が移ったようだ

「キキキキキキスって、そりゃもう高校生だし?そんな事日常茶飯事だよね、そうよね、」

変に紗奈が自分を理解させる言葉をかけるが、それが俺にとっては不都合である言葉でもある

「なんか言い方がもう付き合ってる感出してるじゃないですか!!どういうことなんですか!先輩!」

あ〜〜、もう俺の陰キャライフを返してくれ!

カオスな状況が続く中、1人が名乗り出る

「付き合ってないって!昨日ハッキリと見ちゃったから!放課後この教室でなんか怪しげな密会をしてたこと!」

名乗り出たのは短い白髪に、本を片手に持つ、同じクラスの確か、長田香織(おさだかおり)成績普通、クラスでは目立たないタイプだ

「えーと、昨日の密会とは?」

「昨日、放課後私が忘れ物を取りに教室に戻った時のことです。何やら紗奈さんと橳島くんが話しているのに気づき、入りずらいなぁと思いながら待っていたらその、急にキスし始めたんです!」

紗奈はその後、俺に怒鳴っているがこの人には聞き取れていなかったのか?

それよりもキスって、ホコリを取った時か?確かに後ろから見たらそう見えるだろうけど教室の中心部に居たから、入口からみてもキスは無いはずだが

「まて、それは誤解だ!ほら紗奈からもなんか言ってみたらどうだ」

「え?私?その…えと、キスはしてないです!!」

おいおい「は」は余計だぞ

「さっき「は」って言いましたよね?キスの他はもう済んでいるんですか?」

ほら言わんこっちゃない指摘されてしまったじゃないか

「今のは紗奈の発言ミスだ。君の勘違い、そこまで妄想がすぎるとキスの件も勘違いじゃないかと疑わられるぞ」

周りからは「確かに」などのつぶやき声が増えて勝敗的にはこっちの方が優勢になった

「しかもさっき言ってた「キスの他はもう済んでいるんですか?」って言ったよな?おかしくないか?まるでキス以外のなんでも良かったかのようなまるで俺たちを陥れようとしている口調じゃないか?まぁこれを俺の勘違いと言うのであれば、俺はこれ以上、弁論はしないぞ」

香織は口を膨らませて睨んでくる。そしてこちらへ向かってくる。そして耳元で

「次は許さないんだから」

そんな言葉をかけられ香織はクラスを後にした

「なんだったんだ?しかも香織はまだ反論の余地があったはずだがなぜ何も言わず出ていったんだ?」

「まぁそんなことより良かったじゃん無事疑いが晴れて!」

「まずキスしたかどうかなんかでディベートするのはかなり幼稚に見えたけどな」

そうこんなこと言って盛り上がるのは中学生まで高校生になったらみな「へぇ」で済ませてしまうくらい日常茶飯事なことだ、まるでほんとうに陥れているようにしか見れないだが今回はネタが弱すぎる、期限が迫っていたと考えるのが妥当だろうか、何か俺たちがいると不都合なイベントでもあるのか?まぁひとまず陥れようとしているなら全力で阻止せねば…

そう思い待っていたが、香織は色々と罠を仕掛けてくることはなかった、案外落ち着いていて、難なく一日が終わり下校する。

「結局なんだったんだろね」

紗奈がどっと疲れたような顔をして言う

「分からんがとりあえず噂が広まんなくて良かったんじゃないか?」

「キスしたと聞いた瞬間、胸がとび出そうでしたよもう心配かけないでください!」

寿々香がほっぺを膨らませて上目遣いで翔太の方を見てくる

「お前が心配する必要は無いだろどうせ知ってたんだろキスしてないことなんて」

「さぁ?それはどうでしょうね?」

「というかなんでお前いるの?」

いつものルーティーンは下校時、紗奈と2人で帰っているのだが、何故かそこには寿々香が居る

「さぁ、それも教えられません」

「まぁ強いて言うなら、負けられないってことですかね。」

寿々香が紗奈に目線を向ける

「な、なんの事?」

「さぁ?」

寿々香がニコッと笑う

「さっきから「さぁ」しか言わないなお前」

「他になんて言えばいいのか分からないので」

寿々香は表情を変えずにそのまま話してくる。翔太はその顔に少し恐怖を感じていると、

「ハァハァ、待て翔太」

後ろから声をかけられ、後ろを向くとそこには少し息切れた栞がいた。

「ハァ、お前に話がある翔太、少し付き合え」

栞の真面目な顔からして多分親父の件で話があると直感でわかった

「私たちって居ていいのかな?」

翔太は紗奈を厄介事に巻き込ませたくないので、帰らせようとするが、

「いや、お前らも居てもいいそこで話を聞いていろ」

帰らせるのを栞が阻止した、何かこいつらを巻き込んでいいことがあるのだろうか

「コホン、それでは、単刀直入に言う翔太お前柔道の大会に出ろ」

ほんとに重要なことしか言ってこない

「弁解の余地は?」

「君のお父さんの指示の元だ」

その一言だけで答えが返ってきてるのがわかった

「弁解の余地なんて無いか、でもどうして大会に出なくちゃいけないんだ?それならまだ強制的に柔道の練習に参加させるという手もあるだろ」

「自分の息子ならその練習無しにできると見込んだ君のお父さんの判断だよ、私の推測だが、大会に申し込んでしまったら負けず嫌いなお前なら出ると思ったんじゃないのか?」

嫌な考え方をするなうちの親父は、

「待って、その前に聞きたいことあるんだけど?」

紗奈が挙手をしてくる

「なんだ?紗奈」

「なんで栞おねぇと翔太のお父さんは繋がってて、翔太に柔道をやらせようとしてるの?」

意外と真面目な質問が飛んでくる

「それはだな紗奈、いや、翔太にも話していないかまず、なんで翔太の親父さんと私が繋がっているかという点だな」

栞の言葉には空きがある、少し言うのに抵抗があるのか?

「実はな、親父さんに翔太が柔道の道を進むことを翔太に勧めて柔道の道に進んでくれたら私をその…あの…やっぱり紗奈にだけ言っておこう!翔太!あっち向け!」

何だこの仕打ちは、いきなり後ろを向けと言われて俺は電柱と睨めっこでもしとけって意味か、新しい友達は電柱だなそんなことを考えていると後ろから

「えぇ〜〜!?そうなんですか!!」

2人の驚いた声が聞こえるそれもかなりのボリュームで

「なんだ?そんなやばい話だったのか?」

そんな驚かれると凄く気になるのは人間の性質でもある仕方がないことだ

「確かにこれは翔太には、教えられないね、」

紗奈が顔を赤らめながら言ってくる

「まさか、先生までとはこれは先輩も罪な男です」

「褒め言葉になっていないのだが?というかさっきからなんなんだずっと罪な男だのなんだの」

「それは後々分かりますよ!先輩!」

「で、どうなんだ?出るのか?大会」

翔太は何かを決心したかのように笑顔で返事をする

「柔道の大会にはなにがなんでも出ないぞ」

「は?」衝撃の一言に全会一致の返事だった。

「ち、ちなみにどうしてそこまでして柔道やりたくないんだ?」

栞が問いかけてくる。

「理由は簡単だ、なんであんな痛い競技をわざわざやんなくちゃいけないんだ?ってのが理由として通らなかったら強要罪に値する、その場合通報させてもらうからな」

・裏の顔

授業が終わり、職員室へ入ると仕事の山がそこにはたんまりある。

「今日中にお願いね?栞先生?」

校長先生の新人いびりが発動したみたいだボコボコにしてぇ〜

そんなことを考え、仕事を終わらせ家に帰り酒を浴びるように飲み、午前3時ようやく眠りにつく。

早朝5時の目覚まし時計が部屋中に鳴り響く

「眠い、教師やめてぇ〜、」

身支度を整えて学校へ行く。学校へ、つき何気なく授業が終わりなんとなく帰りの会をやって下校時間になる。生徒たちの机の中を確認し忘れ物がないかを確認していたら、プルルルルル

ふと電話がなった。その電話には出ないといけないそんな衝動に駆られ、名前を見ずに電話に出た。

「もしもし?八名町です。」

「こんにちは八名町くん元気にしてるかい?」

その声はかなり図太くまるでマフィアのボス

「あぁこれはこれは翔太のお父さん、今日はどう言ったご要件で?」

「君がこの学校で仕事をしていられているのはどうしてだと思う」

なんのための再確認なのか?試しているのか?

「それはあなたのおかげです。」

「では、八名町くん、自分は翔太を柔道の大会に出させようとしているんだ。そこでキミの力を借りようと思ってね」

「もし翔太が出れないと言ったらどうなるんですか?」

「そしたら、翔太の許嫁にするという話は無しだよ。」

くっそ、何にも言えない…

「わかりました。こちらでも全力を尽くさせてもらいますでは、私はこれで失礼させてもらいます。」

「君の活躍を期待しているよ八名町くん」

電話はそこで切れる、全くそんなことまでしてなんで翔太を柔道家にしたいのかがよくわかっていない。とりあえず翔太を見つけに行くか…

そして今に至る

「理由は簡単だ、なんであんな痛い競技をわざわざやんなくちゃいけないんだ?ってのが理由として通らなかったら強要罪に値する。その場合通報させてもらうかからな」

まさか翔太がここまで私を追い込むとは…流石だな、だが…

「別に通報してくれたって構わない、だが通報しても私は逮捕されない。なぜなら君は通報しないからだ。」

「え?どういうこと?ねぇ翔太私、話についていけてないんだけど」

「先輩、私も何がなんだか、なんで栞先生は通報しないことわかってんの?」

紗奈と寿々香が理解しようと必死に翔太に説明を求めているが、翔太は説明できる余裕すらないと見えた

「いいだろう教えてあげよう、翔太は通報しても…」

何者かに口を塞がれた、誰だ

「栞少しこいつら抜きで話がある」

「なんで?私たちはそんなに…」

「黙れ…」

翔太が下がった頭を上げて、ハッとする

「い、いや悪い、紗奈と寿々香は先に帰っていてくれ」

その笑顔はとても邪悪なものを秘めている気がする。それよりも、私と翔太は大体5mはあったはず、どんだけ化け物なんだか。

・過去のプロフィール

「結局なんにもわかんないまま終わっちゃったね。」

「でもあの速さ、紗奈先輩も異常だと思いません?」

確かにあのスピードは早かった。一瞬翔太が止まって見えた

「まぁ昔から翔太は運動神経はいいほうだけどね。」

「そういえば!私はまだ先輩の昔を知りません!紗奈先輩!教えてください!」

「いいけど翔太とは中学校で一回離れちゃったんだ、」

「中学に上がって同小の人は結構いたけど、翔太は別の遠い学校に通い始めたんだっけ、確か名前は、私立政院道中学校(しりつせいいんどうちゅうかっこう)、」

紗奈は寿々香の方を見ると寿々香は少し驚いている顔をしていた

「政院道中…そこ私知ってます、でもたしかそこって受験があって偏差値75前後の学校でかなり頭が良くないと入れない学校ですよ?」

それは初めてきいた、そんなに頭いい中学に入ったのならもっと他の高校でも良かったはず、なんでわざわざこの高校に通い始めたんだろう

「調べてみますか?政院道中」

寿々香がスマホを取り出し、政院道中について調べ始める

「ちなみに、寿々香ちゃんはなんで政道院中について知ってたの?」

「たまたま耳に入ったんです。うちには一つ上の兄がいてその兄が柔道をやっていて、その話を聞いていたんです。政院道は柔道がすごく強くて相手にもならなかったので、珍しかったんです。兄は柔道が強い方で関東でも優秀な成績を収めていて、普段弱音を吐かない人だったんですよ、だからそんな兄が弱音を吐くほど強かったんだってことで印象に残って、偏差値だけ調べたって感じで、覚えていたんです。でもホームページに入るのは初めてです。」

そう言い寿々香はホームページをクリックする。

「ん〜至って普通の中学校じゃん」

ロゴは至って普通だがその次の写真、笑っている人は稀にいるだけで他ほぼ全員無表情、はっきり言って不気味だ

「なんだか不気味ですね。次、部活動行きましょうか」

寿々香はスマホを持ち直し、部活動と書いてあるところを押した。

そこにはズラッと並んだ入賞の数々が記載されていた

「しかもこれみんな県より上の表彰じゃない、すごいね」

「本当ですね…」

そのまま下へスクロールしていくと柔道と書かれた表記が見つかった。

「もしかしたら先輩の名前あるんじゃないですか?」

「そんなことないでしょだって柔道の自慢なんて一切聞いたことないもん!」

紗奈は少し苦笑しながらも名前を見ていくが、早くも紗奈の苦笑は消えてしまった

「橳島翔太、関東大会…優勝…全国大会…優勝って…」

言葉が出るのがやっとだった

「先輩、こんなすごい成績なのになんで柔道続けてないんだろう…この成績ならたしかに親が続けさせようとしているのもわかる気がします」

たしかに私も親ならそう言うと思う…でも何で翔太はなんで私に教えてくれなかったのかが気になる…

「とりあえず、帰りましょうか…」

「そうだね…」

そのまま再び歩き始めたが二人の間に私語はなかった

・愛するもの

部活動をやっている人たちの歓声がうるさく聞こえる放課後の教室。

「で、なんのつもりなんだ?翔太?こんなところに連れ出して、もしかしてレ○プでもするか?」

「人聞きの悪いことをそう簡単に言うな!しかもお前に発情しないし、発情したとしても襲わない、ただ通報しない理由を言うなということを言おうとお前をここに呼んだ」

「まぁいいのだが、ひとつ条件がある、理由を言わない代わりに大会にでろ、それが条件だ」

我ながらいい条件だと思う。翔太は頭が冴える奴だがこの条件をくぐり抜ける条件はないだろう。

「ハァ、わかった大会に出ようでもそのかわりあのことは口が裂けても言うなよ?」

「承知済みだ」

「ちなみに栞は親父になんて言われてこんなめんどくさいことをやっているんだ?それを教えてくれ」

翔太はそれが気になって仕方がなくつい聞いてしまい、ハッとした顔をする

「それはだな…もうしらを切ることはできなさそうだな…」

「まぁしい言うなら、翔太、お前のことが好きだ、ただ返事は無くていい後でたんまり聞くからな!」

4・面倒事

太陽が出てきてまだ間もない頃、紗奈は電車に乗って神奈川の方まで向かう

「にしても翔太、市、県まで一回も負けずにオール一本勝ちなんてさすが元日本王者だよ」

市、県を見たけど、試合時間は一分も立たずに終わっちゃうなんて初心者の私でも倒せそうなくらい相手が弱く見えちゃったから相当な腕前なのがわかる。

「そんな感じで褒めてるどっかの誰かさんは翔太のために柔道の用語とか丸暗記したんだもんねぇ愛の力はすごいねぇ」

「もう!栞おねぇうるさい!」

栞おねぇの口調が学校じゃないから戻ってる…まぁおねぇらしくていいんだけど

電車に揺られること約3時間半神奈川の関東大会会場についた

「でっかいですねぇ先輩は今もうここにいるんですかね?」

翔太は、紗奈が来る前の日に出て一泊二日、今はうちの高校の柔道部といっしょに参加させてもらっているらしい、多分友達はできていないと思う…

「さぁどうだろう?まぁいいじゃない!とりあえず行こっか!中が気になる!」

再び中の方に足を運ぶと何やら中が騒がしい

「橳島翔太大会出んのかよ…」「マジか、勝ち目なくね?」

翔太のことを全校と言っていいくらいの団体が噂をしている。

「おうおう、なんだか翔太の話で持ちきりだな、こりゃまた有名人、羨ましいなぁ」

栞の顔が赤くなっていることに紗奈が気づきふと、栞の手元を見ると握っていたのは角瓶そしてビニール袋の中には缶の酒が大量に入っていた。

「栞おねぇ…今何時だかわかってる…?」

栞が自分の腕につけている腕時計を確認する。

「んん?今か?えーと…読めないな、ええい!時計なんてほっとけいってな!」

その言葉に場の雰囲気が一瞬にして冷めてしまった

「栞おねぇ!現在時刻は9時半ですけど!!こんな朝早くから飲んで大丈夫なの!」

「そんなこと気にしないで!ほら、紗奈も飲むか?」

栞に満タンのロング缶をほっぺに押し付けられる

「未成年!あと冷たい!」

「本当に仲がいいんですね、紗奈先輩と先生は」

寿々香が二人の会話に楽しんだという言葉をかけると、

「お前ら、来たのか…栞は何朝から飲んでるんだよ…」

「あ、翔太…応援してるよ!頑張って!」

「先輩…私も応援してます!頑張ってください!」

翔太とはあの事があったから少し気まずい…紗奈は寿々香も気まずそうにしているのがわかったが掛ける言葉が見つからなかった

「あぁ紗奈か、その誤りたいことがあってなそのあの件なんだけど、悪かった…紗奈や、寿々香にひどい扱いをして…許してくれないか?」

翔太は何を言われるかわからずぐっと堪える

「そんなん許すに決まってるじゃん!」

「そうですよ!先輩!私はそんな重い女じゃ有りませんよ!」

「ありがとうな、お前ら…俺を認めてくれて…」

「カチッ」自分の中の何かが変わった気がする、勝つぞこの試合、絶対に勝って紗奈や寿々香、栞達への罪滅ぼしをする。今ここに決めた。

・関東大会

1回戦目、2回戦目と順調に勝ち進んでいく

「残り、6試合あるのか…」

「翔太!ファイトだよ!」

紗奈が観客席から励ましの声をかける、そして翔太は3戦目、4戦目まで行った。ここまで勝ち進めたのは励ましのおかげだと翔太は思う。

ただ次の相手が難関だ…。正直勝てるかどうか…

翔太の次の相手は去年の全国準優勝者、森叶羅(もりかなら)大外、背負いを得意とする将来オリンピック選手としても有望な存在だ

「73キロの準決出場者、そろそろ移動お願いします。」

緊張はあまりなく翔太は冷静に相手に対しての戦略を練っていると、試合がもう始まりそうになっていた

「はじめ!」

叶羅との試合が始まると同時に一斉に動き出す。

・親と幼馴染

「いや〜かっこよかったよ翔太!まさか残り一分で一本勝ちとは、さすが全国元優勝者なだけあるよ!」

叶羅と戦うのはこれが初めてではなく中学の頃、叶羅に勝って、全国を制したから戦略が練れていただけで、戦っていなかったらどうなっていたかわからない…実のところ戦略勝ちなところもあるから勝てて良かった。

「それにしても優勝とは、すごいぞぉ〜!さすが私が好きになった男だ!」

「そうですよ先輩!もっと自信持ってください!」

栞と寿々香が褒めてくる、褒められ慣れていない翔太にとってとても嬉しいものだった

「ありがとうな、みんな、お前らの応援があったからこその優勝だよ、改めて感謝するよ。」

「どういたしまして!」

そんな感じでお互いがお互いのことを褒め合っていると、

「優勝おめでとう、翔太、すべて私の予想通りだよ」

まるで優勝が当然かのようにおめでとうの言葉に感情がない

「親父お前に聞きたいことがある。」

翔太の言葉を聞き、紗奈が唖然とする。

「君らとははじめましてかな?改めて、翔太の父の橳島信吾(ぬでじましんご)と言います。どうぞよろしく」

「え、えと、き、桐生紗奈です。よろしくお願いします…」

「南雲寿々香です。よろしくお願いします!」

「知っているよ、よく栞から聞いている。」

紗奈が驚いた顔をして翔太の方を見る、なにか言いたそうにしている口を頑張って閉ざしている。だが紗奈が聞きたいことは翔太がすでに理解している。

「さて、要件も済んだことだし、私はここらへんで」

翔太のお父さんが後ろを向き、歩き始めると同時に紗奈が我慢していた口がようやく開く

「翔太聞くけど、あれ本当にお父さんで合ってる?」

翔太の推測があたっていたようだ。

「そういえば、紗奈は俺の親父とあったことあったっけな」

「前と雰囲気が全然違かったっていうか、まるで別人のような…」

「やっぱり覚えてたんだな…」

・過去と今

市内の小さな○○病院、そこに新たな生命が誕生する。病室にはまだ生まれたての赤子がゆりかごで寝ている。

「ママ、お疲れ様頑張ったね」

「この子も頑張ったのよ」

赤子のお父さんが赤子を持ち上げる

「俺はこの子の名前を考えてきたぞ!名前は翔太だ!」

「あら!いい名前じゃない!今日からあなたの名前は翔太よ!」

赤子が笑い母と父も笑みがこぼれる

それから月日が立ち翔太が小学校を卒業したとき事件は起きた。母がスーパーに行ったきりいなくなりどこを探しても見つからず、警察に任せるしかなかった。

「沙奈恵…どこに行っちゃったんだ…沙奈恵…」

父が酒を飲み泣きながら必死に母の名前を呼ぶが翔太は帰って来ると信じ込んでいたが、その思いは届かなかった。

母は、とある山奥の廃墟で無様な姿で亡くなっていた。警察によると犯行は大学生四人によるもので、大学生の証言によってさらった場所、犯行動機、などが聞けたが一番父がショックを受けたのがさらった場所、家の目の前だったとのこと。そのことがきっかけで父が変わってしまった…

無理やり柔道、勉強を同時に叩き込まれ、一日の予定表は柔道4、勉強4、睡眠2という信じられない一日を送って、休みなどという言葉はなかった。そんな日を何度も何度も続け、とうとう自分が分からなくなったまま中学に上がったが、予定表は変わらずいつも通り、そんな生活にうんざりしてきて、中学を卒業するときに親から逃げた。そして高校に入学したが、同い年との会話がわからず一人孤立してしまった。

「そうか、私と離れ離れになってからそんなことがあったのか、でもなんで直ぐに相談してくれなかったの?何度でも力になれたよ?」

「紗奈達に心配されたくなかったし、こんな面倒事に巻き込みたくなかったんだ」

実際、巻き込んでもところで何もいいことが無い、逆に親父が目をつけられたら終わりと思った方がいいと思う、だから言いたくなかったんだ。

「でも協力しなくても大丈夫だ、俺一人で解決するから」

「何かあったら遠慮なく言ってもいいからね!」

紗奈のそんな言葉に普通の人なら関心するが、翔太には面倒事が増える言葉だった。

5・親友?の妹

あれから数日がたった。学校生活で陰キャ生活を呑気に過ごしていたある日、自称友達の史駕箕が話を持ち出してきた。

「翔太殿!今日こそ我が神聖なるdark phantom house came herする時である!」

なんと言おうとしているのかは全然わかんないが、遠回しに史駕箕の家に誘われてるというのは感じ取った。

「お前の家なんて何があるかわからん、便器がホストクラブ状態になってそうだ、行きたくないな」

「おっとっと?我が家を甘く見るなよ翔太殿よ!我が家に入ったら最後、快楽と未知との触れ合いでさぞ驚くだろう!ちなみに便器はホストクラブではなくダンスホールである!」

「うわぁ〜無いわァ」つい本音が出てしまうのも無理も無い、というかこいつの家に行くとトイレがギンギラギンのパーリナイ状態というのが嫌すぎる。

「とにかく!明日の午後ここに来い!である!」

史駕箕が机を勢いよく叩く、その手をどかした時に見えたのは住所の書かれた紙だった。

・パーリナイな家

紙に書かれた住所に辿り着いた。史駕箕のことだからヤバそうな家かと思ったが凄く普通の一軒家、少し赤色の二階建ての豆腐型ハウス、こんな家のトイレがパーリナイとは想像ができない。どんなものか逆に気になる。そう思い、家の前のチャイムを鳴らすと、扉が開くと同時に声が聞こえる。

「誰ですか?」

その声は史駕箕とは全然違う可愛げのある声、少し幼い感じのキュートな声。多分史駕箕の妹かなんかだろうそんな感じがするが、声をかける勇気なんて翔太のどこにもなかった。

「あ、えっと…」

そんな言葉しか出せなく硬直していると向こうから話そうとしてくる

「あの、もしかしてうちの兄に用ですか?」

「あ、ああ!その通りだ!史駕箕はいるか?」

他人と話せたという事実の方がとても嬉しく心底感心した、もう家の内装とかトイレでダンスパーティーとかどうでもいいかもしれない。

「すいません今うちの兄は買い物に出てて、あの良かったら先に上がっていきますか?」

「ああじゃあ失礼します。」

史駕箕の妹かなんかがどき、扉の向こうの世界が広がる。そこは普通の家って感じの内装で、やっぱりトイレめっちゃ気になるようなないそうだった

「すいませんうちの兄が結果的に友達を待たせてしまうようなことをしてしまって…」

史駕箕の妹はめっちゃ行儀よく例えるなら貴族の子供くらいよく育てられている

「いいんだよそれがアイツらしい俺はいつまでも待つよ」

「そうですか、」

リビングに案内されたところで会話の終わりが垣間見えた、この場でそうですかは、あんま人と話したことない人にとってはずいぶんハードすぎる

「ちなみに名前はなんて言うんだ?」

枸橘秋(からたちあき)以上です。」

相変わらずすぐに返答してくるし、ずっと会話が弾まない、まるで会話のドッチボールを避けられている気分だ

「ところで史駕箕はいつ出たんだ?」

「あなたが来た少し前ですからまだかかるでしょうね」

「そうなのか」

史駕箕〜!!俺はお前を恨むぞ!そう思いながら拳を握りしめる。今にも言葉になってしまいそうになっていると、

「あの、無理に言葉続けようとしなくて大丈夫ですから、ほら、私って暗いし何思ってるかわからないでしょ…」

…発言がおかしい、無理に話を続けるなってことだろうけど翔太には何かが引っかかる

「なんでそんな自分を卑下してるんだ?」

「だって、よく学校でそう言われて、私が駄目なんだって、おかしいことなんだってしみじみ感じたから、あなたもこんなやつと喋ってたら周りの人から嫌われちゃうから。」

そういうことだったのか…翔太はどう回答していいのか考えを巡らせる

「そんなことで悩んでたのか」

「そんなことってなんですか!」

「だってそうだろ、今俺から見た君は明るくて何考えてるかわかんない子だよ。でもわからなくて当然じゃないか?人っていうものは思考を読む能力とかもないんだし、わかるのは自分自身だけだろそんな奴は無視やらなんやらすればいいじゃないか」

翔太がいいことを言ったと思い秋の方を見ると今にも泣きそうな顔をしている

「無視で解決する話だったらこんなに悩んでないですよ…女の子はそんなんでいじめをやめない生物なんです…」

「…何があったか教えてくれないか?」

それから、秋はどんなことをされているか洗いざらい教えてくれた。その言葉に嘘はなく、今自分自身が悩んでいることのすべてなことがわかった。ただ考えている暇はなかった、翔太がなんか言い出さないと今にも秋の涙腺が爆発しそうだったからだ。

「君、学校どこ?言ってみ?」

張栄(ちょうえい)だけど…」

「担任の名前は?」

「北村だけど…なにする気?」

その言葉を聞き翔太がポケットに入れていたスマホを取り出し、なにかしている、秋にも何をやっているのかがわからず完全に静止しながら待っている。

そんな完全静止した秋を動かしたのは少し見えた携帯の画面、張栄中のホームページだった。秋は翔太の手を止めるため動く

「ほんとになにする気ですか!」

「決まってんだろ!そんないじめをほっとく学校側にクレームをいれるんだよ!」

あんな短期間で思いつくことなんてこんなことしか思いつかなかった、学校になんて言えばいいのかもわからないし言っても解決するのかどうかすらわからないでもやらないよりかは百倍増しだ

「もう、どうなっても知りませんよ。」

秋は、いとも簡単に翔太の手を離す。それは多分このまま進んでくれたらいじめがなくなるんじゃないかという希望が見えてきたからだと思う。だがまだ不安なのか掴んでいた秋の手に震えを感じた。

「任せろ!」

発話ボタンを押す。電話からなる音はリビングに鳴り響いた。ふと秋の方を見ると秋が手を合わせ何かを願う、待つこと20秒着信音が消え声が聞こえてくる。

「はいこちら張栄中学校です。」

その声は図太くいかにも体育の教師をやっている雰囲気のある声だった

「そちらに北村という先生はいらっしゃいますか?」

「少々お待ち下さい。」

受話器からの声が遠くなる。電話の遠くで北村を呼ぶ声が聞こえる

「お電話変わりました北村です。今回はどういったご要件で?」

ずいぶん若々しい声が聞こえる新米の担任のような雰囲気の声だった

「お宅のクラスに柴宮、漓江、恵樋地という名前の生徒がいますよね。その3人が一人の女の子をいじめているのはご存知ですか?」

一瞬にして北村が静まり返る。言葉を発したのはその20秒後

「はて、そのようなことは初耳ですが…」

「初耳にしては少し冷静過ぎはしませんかね?」

「そう何度も驚いていたら教師としてやっていきませんよ」

会話をしながらも思考を巡らせていると裾をつまんで可愛らしく上目遣いで、

「わ、私を、助けてください!」

と言われ、秋の最後のお願いなのを理解し、翔太は自分に喝を入れる。

「あぁ、きっと助けるさ、」

救い出すと決めたんだ、必ず遂行して見せる

「すみません聞いていますか?」

「あぁごめんなさい、わからず屋の先生にガッカリしてつい言葉を失っていました。」

「さっきの言葉、独り言か、と言うか私はわからず屋ではなく秋さんの気持ちがわかんなく気付けなかった、気持ちを隠して、私にも何も言わない。相談しない。ある意味秋さんにも責任があるのでは?」

「すいません、秋って誰のことですか?」

「あれ、秋さんのことでは無いのですか?」

聞き返してくるなんてどれだけ馬鹿なんだ…見てるこっちが虚しくなってくる。

「まだ気付かないんですか?クソ担任」

ようやくその言葉で理解したのか、北村からの返事はなくなってしまった

「なら自分が説明します。先生、自分はいつ秋がいじめにあっていると説明しましたか?」

「いや、その、てっきり秋さんと一緒に居ると思ってしまって…」

言う言葉がないんだろうそんなこと言ったって矛盾しかない

「秋と一緒に居ると勘違いしている時点でわかってたんじゃないんですか?これは秋がいじめにあっている話だって、でも面倒くさいから初耳のフリをした、間違ってますか?図星のようでしたらあなたの担任生活一体どうなってしまうんでしょうねそれでもめんどくさいからやんないって言うなら、お前は担任失格だよ!秋の気持ちも考えやがれ!」

はっきり言ってやった、これで完全北村は自分の犬、作戦通りに順調に話が進んでいる、だがこれは相手が弱すぎる自分が考えている発言の中のトラップを何も考えずにひっかかってしまう本当に犬みたいだな

「くっ、分かりました、その件についてはこちらで対処していきますので、他言はおやめ下さい…」

発言一つ一つに悔しさを感じる。ざまぁって感じだ

「それともうひとつ条件がある、」

それから話が進み、ある程度の策略を先生に話しておき、それを先生が受理する。受理せざるを得ない状況だからって無理を言ってしまった、すまない…先生…と思うのはたった3秒で終わり、秋は大丈夫なのか?という考えに速攻でシフトチェンジをしていた。

「秋、終わったぞこれで大丈夫だ」

翔太が秋の方をむくが、秋が背中を向けうつ伏せている

「どうした?秋?こっち向けよ」

だが、絶対に秋は振り返らない、なぜならその顔はまるで茹でたタコのように真っ赤になっていた。「「秋の気持ちも考えやがれ!」」その言葉が秋の頭から離れなくなっている。

ちなみにトイレは季節外れのクリスマスツリーが飾ってあること以外至って普通だった。

その後秋と少し話をしていると史駕箕が帰ってきたから史駕箕の部屋へ行く

史駕箕の部屋はまるで地下バンドの部屋みたいにギンギラギンになっていた

「で、結局要件はなんだ?史駕箕」

「ふっふっふ実はな!翔太殿に頼み事がありここに呼んだのだ!」

そう言い、史駕箕が部屋の真ん中で正座をする。

「どうしたんだ正座なんかして?」

そう問いかけた瞬間史駕箕が頭を床に叩きつけ土下座する

「お願いだ!翔太殿!秋を助けてやってくれないか!」

「へ?」思っていた内容と全然違うので思わず声が出てしまった。

「しかしそんなことを言われてももうすぐ解決しそうな問題なんだよな」

「何を言っているんだ?翔太殿は?」

そう言われ史駕箕にこれまであった話を全て洗いざらい話す。こうでもしないと史駕箕の中にある「?」は解消しないだろうそう思った。

「ということだわかってくれたか?史駕箕」

「翔太殿、お主はなんてやざじいんだぁ!」

突然史駕箕が涙をこぼし喜びだした。妹のために泣ける史駕箕もいい所があるんだなと翔太は心底感心した。

「任せとけて次の一手で終わらせてやる」

・作戦実行

後日、普段なら学校へ行っている時間翔太はある場所まで向かっていた。

「ここか、なんだか歴史を感じるな」

その建物は少し古びて肌色が剥がれている今にも崩れてしまいそうな感じなこの建物はとある県の歴史ある学校として人気な張栄中学校

「今更思うが友達の妹のために学校をズル休みするなんて俺はつくづくアホだと思う、お前もおんなじだけどな」

「我は、妹のためだからセーフだが、翔太殿のほうがおかしいと思うのである…」

史駕箕が珍しく正論を言ってくる、顔も笑っていることなく引きつっている。史駕箕なんかに引かれるのはずいぶん癪だが俺が悪いからまぁ許そう

「とりあえず早く行くぞこんなことしてる間にも秋がいじめられていたらどうするんだよ」

そう言うと史駕箕の顔が豹変し激怒した顔に変わった。

「うぉぉぉ!こうしてはいられないですぞ!早く行きますぞ!」

表情がコロコロ変わるやつだな。そう思い、走り出した史駕箕を追うこと数十分ついた場所は学生にとって神聖な場所、職員室についたと思った矢先、史駕箕がもうノックをして中へ入っていた。

「すいません!北村先生はいらっしゃいますか!!」

翔太は史駕箕からこんなでかい声が出るとは思わず史駕箕に驚かされると同時にまた感心させられた。

「今は北村先生は教室にいますね。」

「あっ、そうなんですかわかりました行ってみます。」

訂正する感心なんてするか、すごください、ごく数名だが他の教師がクスクスと笑っている。俺までこいつの恥をかかなくちゃいけないのか…と考えながらも史駕箕と一緒に北村の担当する教室へ向かうため廊下を歩き始めるが、すぐに止まることになった、しかも止まり方はとても残酷で気づいたときには史駕箕の目塞いでいた

「ん?翔太殿?何も見えないでござるよ?」

「いやいい…お前は見るな…俺だけでいい…」

ほんの少しの隙間から見える学校の体育館端、その景色は見るに耐えない、うまく言葉にできない、これを四字熟語で表すなら言語道断というのが正しい

「行こう…史駕箕…」

「お?早く目隠しを解いてほしいのでござるが…」

「まだ少し待ってろ…」

史駕箕に目隠しをしたまま階段まで行きの三階まで上がる。あのことは後で聞こうと決心し、3階まで行ったあと廊下を少し歩くと目的地につくそこは賑やかで楽しそうなクラス、とてもいじめなんか起こんなさそうな雰囲気なのだけどな。

「失礼します、北村先生はいらっしゃいますか?」

ついさっき目隠しを外した史駕箕からは想像できない丁寧な口調、実はキャラを作っているのでは?と思ってしまうほどめちゃくちゃ丁寧語がうまい

「…今行きます。」

本命の御本人が登場、先生席から立ち上がりこちらに寄ってくる。

「ここじゃなんだから相談室の方までいきましょうか」

「はい、わかりました」

史駕箕と北村と一緒に来た道を戻る。その途中もう一回体育館の端を見てみるが、そこに人の姿はなかった。良かったという方が良いのだろうか。

「着きましたよ。」

考え事をしているとあっという間に着いてしまった、相談室は殺風景でホワイトボードが奥にありその手前に机に椅子が並んでいる。相談室に入り、席に座ると北村が話を切り出した。

「で、私は電話で話されたことをそのまますればいいんですね?」

「はい、その通りにお願いします。」

「え?電話通りって我は何も聞いてないですぞ?」

そりゃそうだ、史駕箕はおまけでついて来ただけだから伝える間もなかったから

「お前は何もしなくていいただ話を聞いてるだけでいい」

「我もなにか役に立てることは?」

「今のところ持ち合わせていない、強いて言うなら話を覆されたとき、俺が考える間の時間稼ぎをしてくれないか?」

まぁこの作戦だったらピンチになることなんてそうそう無いからな、あるとしたら親父くらい頭が良くなくちゃ覆せないだろう。

「では作戦通りに行きます」

そう言い北村が立ち相談室を出る。自分も行動に出るか…。翔太も席を立つと出口の方へ向かおうとすると史駕箕が止めてくる

「我はどうすれば?」

「…飯食って待ってろ」

「そ、そんなぁ、でござる…」

・初心

早速自分は自分の作戦をやらなくちゃと思いまずは職員室に行く。

「失礼します。制服を借りに来ました。余ってる制服を貸してくれませんか?」

「このくらいの大きさでいいですか?」

制服を持ってきたのはまだ20代くらいの若そうな女の先生だった

「はい大丈夫ですありがとうございます。」

とりあえず制服を貸してもらうことに成功した。だが次はなかなか難関で、成功するかどうかは五分五分だが、やらないよりかは10倍マシだ。とりあえず行くか

その後、制服を着て向かった場所は体育館裏、ここである人と待ち合わせをしている。

「私たちを呼び出したのって貴方?見かけない顔だけど、私たちになんの用?」

「用って程でもないんだけど、協力して欲しいことがあってな」

そうこいつらは秋をいじめるいじめっ子3人組だ

「君たちにもっと秋をいじめて欲しくてさ」

「は?何言ってんの?」

当然の反応だ。そんな反応されるのは分かってる

「実は俺、あいつムカつくんだよな、だからあいつのことコテンパンにしてくれよ」

「ふっ(笑)お前面白いな(笑)いいよあいつのこといじめてあげる(笑)で、いつ実行する?」

「今からやっちゃおうぜ?」

俺の言葉を聞いてすごく笑ってくる。これがギャルかと珍しいものを見るようにまじまじと見る

「じゃあ、あいつのところ行こうぜ?」

「おっけー(笑)」

教室に向かっている途中に思う。やっぱりギャルやってるようなバカは騙しやすいなと、つくづく呆れてくる。

「秋〜ちょっとツラ貸せや」

言葉に反応した秋がこちらに近づいてくる。最初は俯いたまま凄く怯えてる顔をしていたが、翔太を見た瞬間、秋は意表を突かれた顔をし、目を見開いた。

「なんでここに翔…」

翔太が秋の口をふさぐ。

「痛い目見たくないなら、黙ってついてこいや」

秋に向かってガンを飛ばすと、秋が「裏切り者…助けてくれるって言ったのに…」と小さい声でつぶやき、翔太を睨む。すまない秋、もう少し我慢してくれ…もう少しの辛抱だ…

体育館裏に連れて行きながらも心のなかで秋に謝罪し続けていたら、あっという間に体育館裏に着いてしまった。ここからは、秋になんと言われても何も反論ができない…そんな自分が情けなく思う、こんなやり方しか思いつけなかった俺を許せと、思いながらタコ殴りにされている秋をただ見ていることしかできなかった。

「もうこんぐらいで十分でしょ(笑)」

終わったのは、秋が気絶した頃、反応がなくなりつまんなくなったギャルたちのリーダー的存在のやつの一言で皆が一斉に終わらせようとしていたところで真実を明かす。

「そういえばいい忘れてたんだけど俺、お前らの仲間じゃないんだわ。」

ギャルたちは意表を突かれた顔をし、「は?」としか言えない様子。

様子を見る限り、まだ頭の中が整理できていないようだ。本当に馬鹿なんだなと思うと「ふっ(笑)」翔太は思わず笑みがこぼれてしまった。

「お前!何がおかしいんだよ!」

翔太の方に指を指しギロリと睨む

「いやぁごめんなさい。ただ、撮られていたことも知らずにずいぶん楽しそうにいじめていていたなぁって思って、つい笑っちゃったよ(笑)」

「あぁ!?やんのか!」「やっちゃいましょうや!」

これが俗に言う弱者の戯言、秋に散々やってきた分、きっちりやり返させてもらうぞ。

「やれるものならやってみればいいほら来いよ」

両手を横に広げいかにも殴ってくださいとでも言っているような顔で待つ

「こいつ言葉の割に弱そうじゃね?」

「女の子の前だからって強がってんじゃね?(笑)」

「そう考えてるなら早く来たらどうだ?」

ギャルを挑発していると後ろに人の気配がする。

その瞬間、翔太が突然しゃがむと、もともと頭があったところをバットが横切る。

「あっぶな!」

「お前のことは最初っから怪しいなと思ってて、色々仕組んでたんだよ。もしものためにね!でも少し感心したよ?あれを避けるなんてやるな?でもここでお前は終わりだよ!」

頭上に振りかざされたバットがある、だが遅すぎていとも簡単に避けると翔太はしゃがんだ状態から地面を手を付け一気に足を蹴り上げる。地面に手を付けてから蹴り上げるの時間は、1秒もかかんなかったようだ。

「まずは一人目っと」

翔太が軽々しく言うのを見てギャルたちは更に怒りが増す。

「何やられてんのよ!まぁいいわ、もっといっぱい人を呼んでるからせいぜい頑張るのよ?」

「何人来ても無駄だと思うけどな?」

その言葉を合図しているかのように皆一斉に出てくる。人数は10は超えていると思う。

「こんなにいたのかよ…お前の富と名誉に感心するわ」

「そんなこと言ってて大丈夫?(笑)もう全員動いてるけど?」

来ているには来ているけど、まとまって来ない。一人ずつ明確に寄ってくる。喧嘩ってものを知らないのか?

そんなことどうでもいいと思い向かってくるものを一人ずつ倒していくこと5分、残り2人まで減らすことができた。ギャルも流石に10人相手じゃ倒せないと思っていたのかまたもや意表を突かれた顔をしていた。

「次!誰か来るやつは?もう終わりか?」

「あいつ…何者なの…?」

なんだか異世界転生系の主人公みたいと思い少し調子に乗っていると、音に反応した先生方数名来ては、驚きが隠しきれず、唖然とする。それもそのはず、なんせ生徒数名があっちこっちで倒れて動かなくなっているからだ。最初に口を開いたのは、この学校の教頭だった。

「これは…誰がやったんだ…」

その後相談室に俺とギャル三人組、史駕箕、校長、教頭、そして北村の計8人で入り、机の周りを囲む。

「さて、まずはなんのはなしから行きましょうか…」

「いじめを受けていた張本人の秋が保健室で寝込んでいる以上、いじめの件より先にあのことについて話したほうがいいんじゃないですか?」

翔太が次にどうすればいいのか思考を巡らせながらも話を誘導させる。

「まずうちら秋のこといじめてないし?そんな証拠どこにあんのよ?もしかしたらあんたの自作自演かもじゃん?というかあんた私達陥れたじゃん」

人の話を聞いていたのか?まぁ仕方がないことなのかもしれない、馬鹿だからな、話を合わせてやるか。

「それはないな、言っただろう?ちゃんと動画に残ってるって?」

「今の時代、動画なんていくらでも偽造ができるし、そんなの証拠として不十分じゃない?」

ここまで来てまだ言い訳を言ってくる。そろそろ決定的なやつを出そうか

「仕方がない…先生、あの動画を」

「…はい」北村が反応し動き出し、プロジェクターに携帯を繋げ、一本の動画つなぎホワイトボードに映す。

そこに映っていたのは、校舎から見た体育館裏の動画、ギャル達が秋をこてんぱんにしているところをバッチリ撮っていた。

「これは…」校長が驚いて口に出すと同時に翔太が口を開く「これはある一般生徒が撮ったものです。俺の携帯でなければ日付も違うのがわかりますね?」

「この動画も偽造してあるかも知れないじゃん!」

「仮にこれが証拠として不十分だとしたら、他に何を出せば証拠になるのか教えてくれないか?」

「ほら…あれ…声!声とかなら偽装難しいんじゃない?」

ギャルの言葉に少し焦りが見える。

「これなら証拠として採用してくれるか?まぁお前がさっき言ってたことだから認めざるを得ないよな」

ポケットから取り出したのは、音声が録音できるボイスレコーダー。

「この流れなら録音してあることは聞かなくてもわかりますよね?校長?」

「はい…まぁ言われなくても…」

「くそが…くそが…」ギャルの中でもリーダー格のうつむき出し、なにかをブツブツと唱えている。

「どうした?もう反論はないのか?(笑)」

と翔太が挑発をすると、座ってた椅子が倒れるくらい、思いっきり立ち上がり、翔太の胸ぐらを掴みかかる

「てめぇなんなんだよ!何がしてぇんだよ!私達を陥れて楽しいか!?なぁ!どうなんだよ!!」

この言葉で翔太は初めて感じる感情に出会う。異様にむしゃくしゃして無償に殴りたくなる感覚

「お前らこそ何なんだよ!!人をいじめていた分際で何を偉そうに!少なくとも俺は秋がやられていたことを言葉で仕返しただけ!!お前らの体になんの損傷もない!!お前らのやってきた行為よりよっぽどマシだ!!覚えとけ!今後秋に手を出したら!この橳島翔太がお前をこてんぱんにしてやるよ!」

その感情は「怒り」以外他ならなかった。

・愛という感情=?

相談室での話し合いは終わり、保健室にいる秋を迎えにと足取りが重い中で長い長い廊下を歩き続ける。

「終わったな…長い戦いだった…」

「そうでござるな…早く秋のいる保健室に行きたいでござる…」

「そうだな…起きているといいな…」

史駕箕が自分で頬を叩くと「相棒!今こそ勝利にガッツを!」

と言い、手を差し伸べてくる。

「史駕箕……そうだよな!こんなときこそガッツを!」

歩いていた廊下全体に響くくらい大きな音で握手をする。

もう十分だろうと思い、離そうとするが、史駕箕がガッチリ掴んで離してくれない。

「どうしたんだ?史駕箕?」

「我、翔太殿に一つ聞きたいことがあるのでござるが…」

すごく真面目な顔で翔太を見つめながら質問してきた。

ここで笑顔なのも空気読めないやつだと思った翔太も真剣な顔をする。

「あぁ何でも質問してこい…」

「さっき翔太殿が撮った動画を見たであろう?」

なんかとても嫌な予感がする。

「あの動画、少し近すぎではないか?それとギャルがはじめ「陥れた」と言っていたであろう?しかもここの学生十人に対して一人で一層したという言葉が耳に入ったのだが、柔道が強い翔太殿なら可能であろう?もしかしてだけど、秋が殴られたきっかけって翔太殿なんじゃないでござるか?」

嫌な予感が当たってしまった…こいつ、妙なところで勘がいいな…いいところを突いてくる

「史駕箕、もしかして最初から知ってたんじゃないか?」

「知ってたなら我はいじめの現場に行っていたであろう」

確かに史駕箕の言う通りと普通の人は思うだろう、でも俺にはわかる…

「違う、お前は行けなかったんだ、いや正確に言うと助けに行かなかったんだ。」

「どういう事である?」

「そのまんまだ」

そんな話の中、保健室に到着してしまった。

「また違う日にでも話し合おう史駕箕。」

「そうですな、まずは秋の安否確認であるな」

そう言い、史駕箕が保健室の扉を開ける。

「失礼します。枸橘秋はいますか?」

「あぁ秋さんの様子を見に来たの?」

「でもごめんね、秋さん、今誰とも面会したくないって言ってて…」

現れたのは保健室の先生。結構若々しくまだ二十代くらいの美人だった。しかし保健室の先生が美人ということは置いといて、なぜ秋は面会をしたくないんだろうか…と考えているうちに史駕箕が話を切り出す。

「すいません、家族なんですけど…」

「家族はより一層ダメって言われててね…」

その言葉を聞き史駕箕は保健室の隅に体育座りで座り込んでしまった。それを見ていた翔太に保健室の先生が話しかける。

「あの、もしかして翔太さん?」

「え、なんで俺の名前を知ってるんですか?」

「…とりあえず、こっち来てもらえる?」

「まぁ大丈夫ですけど…」

保健室の先生が奥へと誘導してくる。

「待ってください!この我は!?」

「そこで待っていてね。」

また隅で体育座りになってしまった史駕箕を見ながら奥の方まで保健室の先生と一緒に移動する。

「ちなみになんで家族以外なんですか?」

「家族以外って訳じゃ無いのよ、秋さんが翔太君を呼んでこいってうるさくてねぇさっき呼びに行こうとしてたんだけどそっちから来てくれたから好都合だったよ」

秋に俺がどうしたのかを伝えてくれって先生にあらかじめ話しといたから怒られることはないと思うんだが、まさか先生、秋に言っていないのか?だとしたら結構まずいぞ…

奥に行きながらも言い訳を考えるが、保健室は狭いから考えてる間にも着いてしまった。

「ちなみに北村先生って来ましたか?」

保健室の先生に最後の確認としてボソッと耳打ちをする。

「あぁ北村先生ね、来たけどそれがどうしたの?」

「いや、聞いただけです」

じゃあなんで俺は招待されているんだ?と疑問に思いながらカーテンを開ける。

「秋、元気か?」

「翔太…お陰様で元気だよ」

「それならいいんだが…」

弁解できたから話せるかな〜とか思っていたけど人間関係そんな簡単なことではないと気づき、後ろを向き黄昏れていると

「ねぇ翔太…」

「どうした?秋?」

翔太が後ろを向くと、その直後目を手で覆われて何も見えなくなった。

「絶対見ないでね、絶対!」

「あぁわかったから手を離してくれ」

「いや、このままでいい、すぐ済ませるから」

声がするたび息がかかるくらいに秋の顔が近い事に違和感を持つ

「なんか近くないか?」

「いいから黙ってて!」

「行くよ、私…緊張すんな〜いっせーので」

と聞こえなくしようと消音で言っているが顔が近すぎるので全部聞こえる。

「行くってなんだ?どこに行くんだ?」

「あぁ!ちょっと待っ…」

秋と翔太がベッドから転落し、保健室内に大きな音が鳴り響く。

端から聞くとただ単にベッドから転落した音

だが翔太は他の感覚に困惑している。

翔太にとって初めての感覚、唇に妙な違和感がある。

「あふぃ、どうなっていふんだ?ふふぃびるがなんかふぇんだぞ?(秋、どうなってるんだ?唇がなんか変だぞ?)」

目を塞がれて何がなんだかわからないし、唇が塞がれていてうまく話ができなくて困惑していると、カーテンが勢いよく開くのと同士に唇が開放される。

「どうしたの!何かあったの!?…って、本当に何があったの?」

次は保健室の先生が困惑している。

「俺が知りたいですよ、知りたいなら秋に聞いて下さい…」

「秋さん、よかったら何があったか教えてくれない?ほら秋さん、こっち向いてくない?」

翔太が立ち上がり、ベッドに座り込む秋の方を見るが後ろを向いている。

「俺からも何があったか教えてくれないか?」

「嫌です…」

「なんで嫌なんだ?」

「そ、それは…」

どうも言いたくないのか必死に拒んでくる。

「誰なら教えられるのか?」

朱里(あかり)さん…」

「それ、誰だ?」

朱里どっかで聞いたことある名前だと思っていると、保健室の先生が反応する。

「あぁ今体験で先生やってる大学生の子か!」

「そうです…」

その言葉で翔太も思い出したが、決定づけるのはまだ早い、大学生の朱里なんて世界中にいる。

「もしかして汐田朱里(しおだあかり)さん?」

翔太は苦笑いで名字を言う。

頼むから山田とかでもいいから汐田は来るな!

「おぉ翔太くんよくわかったね!そうだよ汐田朱里先生って言って、友達が担任をやっててそれに憧れて?みたいな理由で来たらしいよ」

あぁ、神様はどうにも味方してくれないようだ…俺なにか悪い子としましたっけ?あぁ、秋のこと半裏切った罰か…

「翔太、朱里さん呼んできて…」

「なんでお前はそんな病んでるんだよ…」

翔太は呼んできてと頼まれ行こうとし、後ろを振り返るが、どうにも行く気が起きない…

「なぁ、やっぱり先生が行くっての…」

「早く言ってきて!」

「わかったわかった!」

翔太がカーテンを開け、そそくさと出ていく

「じゃあ私もこれで、」

「先生待って!ここにいて…」

秋がゆっくり振り返るとその顔を見た先生は「え?」と驚き、途方に暮れる。

それもそのはず、秋は先生が予想していたつらそうな顔はしておらず、顔が火照って今にも顔から火が出そうだった。

その時翔太は、秋に朱里を呼んでほしいとお願いされ、職員室まで何回も通った廊下を通る。

「この廊下ももう馴染んじゃったな」

「そうであるなぁ」

「…なんでお前居るの?」

翔太が若干、顔を引きつらせながら史駕箕に問う。

「妹のためならどんなところでも向かうであるよ!!」

「お前、キモいな…」

「全人類、誰でも妹を大切に思うのは、当たり前であるよ」

「そうだといいな」

そんなことよりも翔太は今、職員室向かうこと第一、史駕箕の話は流して聞いて、歩くこと約2分、職員室の前に立っていた。

「はぁ、呼ぶか…」

職員室をノックし、朱里を呼ぶと、職員室の中から、金髪の人がこっちに寄ってくる。

「今、教師なのに金髪でいいのかよ(あか)

「ハーフでって言って、ギリギリセーフ的な?」

身長180cmの翔太より小さい150cmくらいでとても大学生には見えない。

「で、要件は?まさか体!?」

朱里が自分自身を抱擁するが、顔は笑っている。

「そんなわけ無いだろ、からかうなよ…しかも用があるのは秋だ」

「秋さんが自分になんの用だい?」

「要件は後で言う、とりあえず、着いてきてくれ」

そう言い翔太と朱里は一緒に保健室まで向かう。

「そういえば秋とはどういう関係なんだ?」

「秋さんとは、学校以外の場所でよくつるんでいたから、秋さんがいる学校に体験で行けるって決まったときは二人で喜んだよ」

「その「秋さん」っていうのは学校だからか?それともいつもそう呼んでんのか?」

「いつもは「トゥモローズ・フェザー殿」って呼ばしてもらってるよ」

何だその呼び方は…バカなんか?と呆れながらも歩き続け保健室に着き、カーテンを開ける。

第一声は朱里が担当した。

「元気やってる?トゥモローズ・フェザー殿〜」

「トゥデイズ・コモドロン〜!」

その声に反応しまるで何かが吹っ切れたかのように朱里に抱きつく。

「おうおうトゥモローズ・フェザーどうしたんだ?何があったか話してみろ?」

「うん…、でもその前に…」

秋が翔太の方を睨みつける。

どうやら秋にとって翔太はこの会話にはいてほしくようだ。

「俺か!?」

「どうやらトゥモローズ・フェザーの話に翔ちゃんはお邪魔みたいだな」

「わーったよ、出ていくよ」

翔太は、少し落ち込みながら、カーテンを開けでていった数十秒後、秋が発言する。

「トゥデイズ・コモドロン、コモドロンって、恋したこと、ある?」

「まさかトゥモローズ・フェザーから恋愛相談をされるとはね、まぁいい教えてあげよう、だがあまりいい話はないぞ?私は」

「それでもいい!教えて!」

秋がわざとらしい上目遣いで、朱里の方を見る

「わかった!話すよ!でもアドバイスを一つ言うとしたら恋愛は早い者勝ちだよ!」

「トゥモローズ・コモドロン、そんなこと言って恋愛、真面目にしたことあるの?」

その言葉をきっかけに朱里と秋の間に沈黙が続いた。

・恋愛=早いもの勝ち

その日の帰り道、史駕箕はバイトがあると言い残し、先に帰ってしまい、秋と二人で帰る羽目になった。

秋と二人で歩くというのは会話のドッジボールのできない翔太にとってめちゃくちゃハードであり、あの一件のこともあって、とても気まずかったが、翔太は他の感覚でも気まずく、今の翔太には、この感覚が何なのかがわからなかった。

「翔太ってお兄奇と同じ高校なんだよね?」

「ん?まぁそうだな」

「ふーんそうなんだ…」

秋がガッツポーズをしながらすごく嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。

翔太は自分が史駕箕と同じ学校だったのがなぜそんなに嬉しかったのかがわからなかったが、翔太は、秋の笑顔を少し「かわいい」と思えてしまった。

その会話から歩き続けること五分、無言がしばらく続いていたが、後分ぶりに秋が口を開く

「ねぇ、翔太ってさ…」

秋が何か翔太に質問しようとしていたようだが、その後の言葉が出てこないようだった。

言葉が詰まる秋を心配し、翔太が口を開く。

「どうした?」

「まだ待って!後もう少しで着くから!」

着くってどこにだ?そんな有名なスポットやら公園はこの付近には無いはずだが、と思いながら、秋に着いていくこと三分。

「着いた!ここ!ここ!」

辺りを見渡すが、左家、右家、前道路、後ろ道路と何もない場所、一つ言えるとしたら大型車がギリギリ通れるか通れないかの交通が比較的少ない何の変哲もないただの狭い道だった。

「ここになにかあるのか?」

「…翔太、ここはね、」

「あ!思い出した!!」

喫茶店内の一角にある、とある席で一人の女子が何かを思い出す。

「その道の名前は和議真空脇(わぎしんくうわき)通りだ!!」

ある道の真ん中、空が赤く、冬なのでより早く暗くなる時間帯。

「翔太、ここは告白すると必ず成功するっていう道だよ…」

「…つまりどうするんだ?…」

聞かなくてもわかっているがなぜか聞き返してしまう、この動作は戸惑いというやつから来ているに違いない、のに熱があるかのように体が暑かった。

「つまりね、翔太、ここで言うのはただ一つ…」

なにか言う前に秋が深呼吸をする。

「翔太くん、私と付き合ってください…」

「っ……」

思わず言葉が出てしまった、それも結構恥ずかしめのやつ、だがどう反応していいのかがわからない…寿々香の告白のときは困惑したがもうちょっと冷静だったはずだ…なのになんで秋のときはこんなに顔が赤くなって今にも倒れそうなんだ…翔太は必死に考え、その正体について自分なりに結論付けた。

「……、そのなんだ、俺達付き合ってみるか…?」

言葉を出すのに、全力を出しすぎて今にも倒れそうになりながらも、秋の方を見る。

その表情は、喜びよりも驚きのほうが勝っていたようだ。

「え、いいの?嘘じゃないの?」

「まぁ、そのこれが俺なりに最大限考えた結果だ」

「そ、それじゃあ、その、これから、よろしく、おねがい、します……」

「お、おう…」

言葉は途切れるが、時と足は動き、各自宅へと足を運ぶ。

その道の電柱柱には和議真地脇(わぎしんちわき)通りと書いてあった、これは見間違えでは無いだろう…

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