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22 兄さん。


 額にひんやりとするものがのせられて、気持ちが良いな……と思っていると「ニナ、ニナ」と耳元で名前を呼ばれたのに気づき、私はゆっくり目を開けた。


「ごめんな、調子が悪いところ起こして。俺らもう帰るから」

「ラディ兄さん……」


 私のベッドの横、床に膝をついた兄さんが私の顔のすぐ近くにいた。

 私の額、頬、首筋と順番に冷たくした手のひらをゆっくり触れてくれた。兄さんの魔法はやさしくて、やわらかい。


「ニナ、今の身体の重たくなる感じ、内側が空っぽになる感じをしっかり覚えておけ。今度からは、こうなる前に魔力を使い切るのを止めるんだ。そして使う度にどのぐらいなら使い続けられるかちゃんと確認しておけ」

「うん、わかった」


「よくやったな。みんな褒めてたぞ」

「うん……、さっきは怒ったくせに」

「はは、拗ねるなよ、大事なことだろ」

「うん」


「じゃあ、俺らはあの海にお礼を言ってから帰るから」

「私も行く」

「こらこら、お前が来たら他の人も来ちゃって帰れなくなるから、頼むよ」

「えーー、あ、うん」


「ちゃんと休んで体調が整って、かつ仕事が落ち着いたら一回帰ってこい。な?」

「わかった」

「ん」


 ラディ兄さんが、昔みたいにわしわしと私の頭を撫でてくれたから。

 こういうの懐かしいな、嬉しいな、なんだか一緒に帰りたくなっちゃうな……と少しだけ寂しい気持ちが心に沸いてきた。私らしくないな。


 その時、ラディ兄さんの後ろにいたジェス兄さんが無言で私に手紙を差し出した。


「え……、ジェス兄さん、お手紙書いてくれたの?」

「まさか」


 封書の裏にはジェス兄さんの嫁、つまりお義姉さんの名前があった。

 彼女は私の商会での上司にあたる。


「ありがとう。後で読んで連絡を入れるね。ジェス兄さん、帰った時に聞きたいことがあるから時間とって」

「……俺はない」


 冷たいことを言うのでシカトした。この兄はだいたいがこんな感じだ。

 横になったままでいいと言われたのでベッドの中から兄たちを見送ると、私はまたうとうとしてすぐに眠りについた。兄さんのひんやりとした手を何度も思い出しながら。




 再び目が覚めると、窓の外が暗くなってきていた。


「あ、起きた?」そう聞くのはヒューだった。体調はだいぶ良くなってきていたので、お水を飲んだ後に起き上がった。


「あれ? さっき兄さんたち……」

「うん、いらしてたよ。素敵なお兄さんたちだね」

「え、あ、うん」


 いつもなら照れて「そんなことないですよ」とか言っちゃうんだけど、さっきの冷たい手のひらが気持ち良くて忘れられなくて、ついつい肯定してしまっていた。


「九年経ってもとても素敵だった……!!」


 フィーも居て、まだラディ兄さん推しは健在みたいだった。良かったね、兄さん。

 キラキラした顔をする美人は本当に可愛らしい。でもまたアークに嫉妬されてキスされちゃうんじゃ……?


「あの宰相がニナとご当主様の魔力を整えてるんだよね? すっごくクールで素敵だね! 話したかったなぁ、オーラがすごくて近寄れなかったけど」

「えぇ? ヒューは宰相様推し? 私は断然ご当主様! あの宰相様はちょっと寡黙すぎじゃない?」


 あ、評価が分かれた。ジェス兄さんも一票入って良かったね……。

 そんなことをぼんやり考えながら、双子を観察していた。なんだかんだ可愛いんだ、この二人。


「さっきの会合でもね、前にニナさんから会議中お兄さんたちはただ早く帰りたがるって聞いていたじゃない? だからどの発言も本来は帰りたいだけなんだろうなぁと思ったら、笑いをこらえるのが大変で大変で……」


 に、兄さん、読まれてますよ!!




お読み戴き、本当にありがとうございます。

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