18.5 フィーと。
今朝、1つ前に更新しています。
そちらから読んで貰えると嬉しいです。
記憶が無いのは事故のせいではなく、故意に封じ込めたものだったの……? 意外なフィーの言葉に驚きが隠せずにいると、フィーはテーブル越しに少し前屈みになって私の方へ顔を寄せ、抑えた声で言った。
「九年前、何があったかヒューからは聞いているのですが、ニナさんからも聞いていいですか……?」
私は頷くしかなかった。近づいてきた美人の迫力、すごい。……それだけではなく、この人がどれだけ必死にヒューを守ろうとしているのかが解ったような気がして、自分に出来る手助けはしたいと心から思った。
「わかりました」
私がそう言うとフィーは扉の外にいるメイドを呼び小声で何かを言付けて、一回座り直し、お茶を一口飲んだ。
「九年前のあの日、私は前の北のご当主と次期ご当主がいらっしゃるから同席するよう言われて、この屋敷に父と来たんです」
「あぁ、アークさんのお兄さんがうちの父と兄たちを招待したという時ですね」
「はい。ヒューは普段から長男なのに魔力なしで……とか、私と逆だったら良かったのにね……という周囲の評価に悲しんでました。泣く時は必ずどこかに隠れて泣くんです。だから探すのが大変で。あの日も私だけが呼ばれたことに悲しんでいなくなってしまったんです」
「そうだったんですね……」
「だからヒューを探すのは母に任せて、私は父とこの屋敷へ来ました。きっとその時、ニナさんはあの海でヒューと会ったんですよね……?」
「たぶんそうです。私は当時、父と兄が招待を受けていたことを知らなかったのですが、あの時私だけ護衛とメイドとあの海へ行ったんです。一人で長く泳いでいたところ、あの岩のところで泣いているヒューと会ったんです」
「昨日のあの岩のところですね。あの場所まで泳げる子が当時ほとんどいなかったので、ヒューのお気に入りの場所だったみたいです」
「……ヒューも私もここまで泳げる子供に会ったことに驚いて話したんです。私が泣いている理由を尋ねたら、大切な家族と喧嘩してしまったことと、みんなに魔力がない魔力がないと言われることが悔しくて、毎日ちょととずつ寝ている時にお姉さんの魔力を盗んでいるんだと話してくれました」
「そうなんです、当時は気付いていなかったのですが昔から【吸収】の能力があったのか……、少しずつ私の魔力を溜め込んでいたみたいなんです」
「それがあの時、爆発しちゃったんですね」
「……やっぱりヒューは爆発したんですね?」
「はい。急に空を見上げて無言になったと思ったら、なんで! と叫んだ後、大きな炎が立ち上がりました。なので私は慌てて水で包んで消火したんです」
「……当時のあなたが水で?」
「あ、えっと、ここだけの話にしてほしいのですが、私は子供の頃から兄さんの魔力をのせて貰っていたので、当時から多少は水の魔法が使えたんです」
「あぁ、そうだったんですね。……ということは、あの宰相さんが【吸収】?」
「恐らくそうかと」
「なるほど。……たぶん、あの日のこの屋敷での北との会合で、私が北の次期ご当主様、あ、今のご当主様を格好いい素敵素敵ってベタ褒めしていたら、アークに嫉妬されてしまって。会合が終わってから裏庭でキスされたちゃったんです。初めてのキスでした。たぶんそれがヒューに伝わっちゃて、爆発したのかなって思っています……。それから二日間ほどヒューが何も食べないし話もしないし、もうどうしようかと思って……」
「……は?」
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