13.5 狭間。
予約投稿設定ミスって、昨晩1本あがってます……。
そちらを先に見て戴けますと幸いです。
申し訳ございません!!
このヒューがくれる、この温かい南部での甘さを、どうしよう。
ぎゅっと腕に力が入り抱き締められているのを実感する度に、時々我に返った。距離が近くて。心臓の音が聞こえて。でも数日後に、私は北部へ帰る。
「……さっき氷出してくれたから。整えていい?」
この体制だと顔が見えなくて。
さっきも長い時間かけて整えて貰ったから疲れていないかな、大丈夫かな……と心配になり、どうしようと返事に迷う。
すると身体が離されたと思ったらすぐ、縋り付くように両頬を包まれて。請うような赤い瞳が私を見ていた。ああ、それが何を意味しているかなんてすぐ解ったから。頷くしかなくて。
官能的なキスと、ゆっくり整えられていく魔力とが交互にぐるぐると私を支配した。
「明日も会える……? その時に九年前、何があったか聞いてもいい……?」
何回目かのキスの後、熱い息をつきながら唇が離れると、ヒューが少し弱々しく聞いてきたけど。
貴方の要望ならもう何でも。私は今の私に出来る精一杯の笑顔で答えた。
「あの海に行きたい。そこで話せる?」
ヒューはすぐに頷いて、私の額と唇にキスを落とした。
それからもう一度だけ私たちは抱き締め合った。
四日目。南部の商会の会議に出席して、取引先を回り、倉庫に顔を出して挨拶をして周り、夕方に訓練場へ着いた。夕方になったとはいえまだ日差しは強くて、無意識に日陰ばかりを探してしまう。
訓練場の隅からヒューを探すとすぐに目が合って、階段の下に居てとジェスチャーで言われたので駆け足で向かい、いつもの長椅子に腰掛けた。
ここは人の声や人の立てる音が少し遠くに聞こえて、まるで閉鎖された空間のように思えた。
私は氷を一粒だけ出して、服が濡れないよう手を前に出して手のひらの中でゆっくり溶かした。
指の隙間から冷たい水が滴り落ちていく。
それをなんとなく三回程繰り返して、ヒューがまだ来そうな気配がなかったので午前中に参加した会議の資料をパラパラとめくった。そしてその資料の脇に帰ったらやることを箇条書きにした。
あと数日後、私はいつもの日常に戻る。
お読み戴き、本当にありがとうございます。




