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行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました  作者: 鳥柄ささみ
第二章 恋

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第十八話 気になること

「シアちゃん。寝る前に申し訳ないんだけど、ちょっといいかしら」


 食事を終えて一服したあと、それぞれ湯浴みを済ませてゲストルームに戻ろうとしたタイミングで、シアはドゥークー辺境伯夫人に呼び止められた。


「どうしました?」

「ちょっと、気になることがあって。一応シアちゃんの耳に入れておいたほうがいいかなと思って」

「気になること、ですか?」


 気になることとは何だろうか、と考えるも心当たりは特にない。そのため、一体何のことだろうかと不安が過ぎる。


 ちょうど子供達は先にゲストルームに行ったので、多少遅くなっても問題ないだろうとシアはドゥークー辺境伯夫人の部屋に入り、促されるままにソファに腰かけた。


「シアちゃん、何か飲む?」

「いえ。もう寝る前ですから、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

「そう? じゃあ夜だし早速本題に入るんだけど、今日こちらに来てすぐに庭園に行ったとき、私達とシアちゃん達で一度別れたじゃない?」

「あぁ、はい。そうでしたね。そのときに何かありました?」


 シアのほうはフィオナがクレマチスを触るという事件が発生したが、もしかしたらドゥークー辺境伯夫人のほうでも何かあったのかもしれない。

 戻ったときに特に何も言われなかったが、実はあのとき何かあったのだろうかと考えながら話を聞く。


「何かあったというほどのことではないのだけど、アンナちゃんが彼氏から色々な花をもらったという話から、どんな花をもらったことがあるかって話に変わってね。それで、それぞれどんな花をもらいたいか、花言葉にはどんなものがあるか、とかの話で盛り上がったの」

「そうだったんですね」

「それでね。セレナちゃんもお花をいただいたことがあるって話してたんだけど、なんかその話を聞いてて、もしかしたらセレナちゃん……恋をしてるんじゃないかなって」

「セレナが恋、ですか……?」


 ふんふん、と聞いていたら突拍子もない方向に話がいって、思わずオウム返しをするシア。

 セレナが恋をしているなど寝耳に水で、なかなか理解が追いつかなかった。


「えっと、相手は誰かとか言ってました?」

「いえ。というか、私が勝手にそう思っただけなのだけど。でも、なんとなくお相手を隠したいのかなって感じがして。セレナちゃんて、そろそろのお年頃でしょう? もし、既に婚約者がいたりただならぬ恋だったりしたら大変だと思って、一応シアちゃんに伝えておこうと思ったの」

「ありがとうございます。一応、セレナにはそういう特定の相手はいないのですが……正直相手に心当たりがないもので、そういうのもお恥ずかしながら今初めて知りまして……」


 ずっと一緒にいたはずなのに気づかなかった自分を恥じるシア。よく見ていたつもりだが、ちゃんと見ていなかったのだと思い知らされて何とも言えない気持ちになった。


「そう。まぁ、年頃だもの。身内にはそういうものを隠したいものだと思うわよ。気にすることはないわ。でも、お相手含めて動向は見ておいたほうがいいかもしれないかも」

「というと?」

「それがね。どうもお相手が一癖あるのか、ただ考えなしなのかはわからないのだけど、セレナちゃんにシレネの花を贈ったらしくて」


 シレネ、と言われて花自体は知っているものの、イマイチ何が悪いのかピンときていないシア。花にはそれなりに詳しいものの、シレネの花言葉をよく知らなかった。


「すみません、不勉強で。あの、シレネの花言葉がわからないのですが……何かもらったらまずい花なんですか?」

「えぇ、それが……シレネの花言葉には『偽りの愛』や『罠』って意味があるのよ。だからあまり人にあげるような花ではなくて。わざとなのか、それとも知らなくてなのかは定かではないのだけど……」

「なるほど……」


 確かに、それは不穏である。故意なのか偶然なのか定かではないが、知識がある人からしたら気分としてはあまりよろしいものではない。


「まぁ、私の思い違いかもしれないけど。念のためにと思って。ごめんなさいね、寝る前にこんな話」

「いえ。有益な情報ありがとうございます。ここのところセレナは悩みがあるみたいだったので、もしかしたらそのことで悩んでたのかも」

「そうだったの。単なる私の杞憂だといいけど、初恋となるとなかなか難しいものがあるだろうし。特に公爵令嬢という立場柄、よからぬ手合いが来る可能性がなきにしもあらずだしね」

「そう、ですよね」


 ドゥークー辺境伯夫人の言葉に苦笑しながら相槌を打つ。頭の中がぐるぐるとするのを感じながら、シアは愛想笑いを浮かべるのだった。

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