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行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました  作者: 鳥柄ささみ
第二章 恋

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第二話 頼る

 夕食を終え、各自部屋に戻ったタイミングを見計らって、シアはアンナの部屋の前に来ていた。


 コンコン……


「アンナ、ちょっといいかしら?」


 控えめにドアをノックすると、「はーい」という声と共にドアの奥からパタパタと小走りする音が聞こえてくる。


「シア様? どうかしましたか?」

「実はセレナのことで聞きたいことがあるのだけど、今って時間大丈夫?」

「大丈夫ですよ。どうぞ、中へ」


 家族のことで困ったときに頼るべきもの。それはやはりアンナだった。


 ギューイ家に慣れてきたとはいえまだシアは新参者。


 そのため、誰よりもこの家族のことを理解しているアンナにまず話を聞いてみることにしたのだ。


「ごめんなさいね。いつもアンナにばかり頼ってしまって」

「いえ。シア様に頼ってもらえるのは嬉しいですから」

「いつもそう言ってもらえて助かるわ。本当にありがとう」

「お気になさらないでください。それで、お姉様のことって……?」

「それが……」


 ここのところセレナの様子がおかしいことやどうもパーティー以降から違和感があるようだと、シアは思いつくことを全てアンナに話す。

 そして、自分が来る前にもこういうことがあったのかも含めて、何か知ってることがあるだろうかと聞いてみた。


「確かに、お姉様はここのところぼんやりなさっていることが多い気がしますね。でも、具合が悪いというよりかは、何かを悩んでいらっしゃるというか……どちらかというと、考えごとをしているような感じかと」

「考えごと?」

「はい。お姉様はお父様に似たのか不器用なところがありまして。どうも考えごとをすると考えごとのほうに意識が向いてしまうみたいで、あんな感じでボーっとするようになるんです」

「なるほど。そうだったの」


 とりあえず、体調不良ではなさそうだということにホッとする。

 けれど、悩みごとがあるのならそれはそれで気がかりであった。


「ちなみに、アンナは何かセレナの悩みごとに思い当たる節ってある?」

「うーん、そうですね……今のところ特には」

「そうよね。セレナのことずっと見ているわけでもないし、わからないわよね。本人に聞いても絶対に答えないだろうし」

「そうでしょうね」


 アンナが苦笑する。

 シアもアンナも、セレナが頑なに答えない場面を想像するのは難しくなかった。


(困ったなぁ)


 ただぼんやりしてるだけならいいが、ここのところ頻発してることを考えると、放っておくのは躊躇われた。

 実際、ボーっとしてるせいか頭をぶつけたり小指を打ったりとやたらと小さな怪我をしてるのを知っているので余計だ。

 これ以上酷くなると大怪我どころか命さえ危うくなることが出てくるかもしれない。


(とはいえ、ここで唸ってたところでいい案が出るわけでもないし。一旦様子見するっきゃなさそうね)


 今セレナの部屋に行ったところで門前払いされるだろうし、さりげなく話しかけるというのも恐らく難しいだろう。

 明日以降よくよく見守るしか今は手がないと、シアは今日のところはセレナのことは断念することにした。


「ありがとう、アンナ。とりあえず、具合が悪いというわけではないというのがわかっただけでもよかったわ」

「いえ、ほとんど何のお役にも立てず、すみません。今はまだ何もわかりませんが、もし何かわかったらお伝えしますね」

「ありがとう。そうしてもらえると助かるわ。私もセレナのこと注意深く見るようにしておくわね。……ところで、ハロルドくんとはどう? 引き続き仲良くしてる?」


 せっかくアンナと二人きりになったのだからただ相談ごとをするだけでは味気ないと、好奇心のままに尋ねるシア。

 シアは自分の恋愛に関して疎かったものの、人の恋バナを聞くのは好きなのだ。


「はい、おかげさまで」

「それならよかった。よければそのうち我が家に遊びに来てもらったら? 家もだいぶ片付いたし」


 シアが来てからもう半年すぎ。

 家の中は来たころに比べて見違えるように綺麗になり、シアが手入れを頑張ったおかげで華やかな雰囲気にまでなっていた。

 現状であれば、人を呼んでも恥をかかない程度には綺麗になっていると言えるだろう。


「そうしたいのはやまやまですが、多分お父様がお許しにならないかと」

「大丈夫よ。日中ならバレないだろうし、そもそもレオナルドさんもちょっとずつ子離れしないといけないんだから。それに、このままいつまでも進展しないなんて時間がもったいないわ。若いうちにできることしなきゃ」


 レオナルドには悪いが、シアはレオナルドの妻でありながらもアンナの母でもあるので、娘の恋路を応援したかった。

 また、シア自身にはそういう経験がなかったものの、周りから若い頃だからこそできた甘酸っぱい思い出をよく聞いていたので、アンナにもその機会を与えたかった。


「いつも言ってるでしょう? アンナはもっとワガママを言ってって。もちろん、アンナがしたくないというのなら別にいいのだけど、もし我慢してるというのなら本音を話してちょうだい」


 シアがアンナに詰め寄る。

 長年我慢するのが癖になってしまっているアンナは、シアが何度説得してもなかなか自らワガママを言うことはないからだ。


「えーっと……であれば、ちょっと近場でいいので一緒にお出かけしたいなっていうのはあります」

「いいわね、それ。休日にデート! アリバイ作りなら任せて。私、そういうの得意だから。ちなみにどこに行きたいとかある?」

「そうですね。いくつか行きたいところはあるのですが……」

「え、どこどこ?」


 セレナの話を聞きに来たはずが、いつのまにかアンナの恋バナへ。

 二人は夜更けまで女子会に花を咲かせるのだった。

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