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行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました  作者: 鳥柄ささみ
第一章 結婚

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第二十七話 約束

 とにかく、状況を確認しようとリビングへと向かう。

 すると、そこには綺麗に着飾っている姿とは対照的な意気消沈したセレナとフィオナがいた。


「どういうことなの?」

「どうもこうもないわよ。お父様がやっぱりパーティーに行かないって言い出したのっ。あー……ほんっと、期待した私がバカだったわ」


 セレナが忌々しげに吐き捨てる。

 けれど、苛立った様子ながらも声は震え、目を潤ませる姿はとても痛々しかった。フィオナを見てもセレナ同様落ち込んだ様子で、何を言うでもなく俯いたまま。

 今朝の賑やかな子供達の姿は見る影もなかった。


「ごめんなさい。私がパーティーに行きたいなんて言わなければこんな準備をすることもお姉様とフィオナが失望することもなかったのに」

「アンナ……」


 アンナが顔を赤くしながらポロポロと泣き出す。自分のせいだと自責しながら。

 みんなそれぞれ気落ちして動けない状態。そんな憐れな彼女達の姿を見て、お節介焼きなシアが黙っていられるはずもなかった。


「アンナのせいではないわ。貴女は自分を責めないで。それと、パーティーには行くわよ」

「え? ですが、お父様が……」

「レオナルドさんは私が説得するわ。だからセレナもアンナもフィオナも今すぐビアンカのところに行って化粧直しをしてきてちょうだい」

「何言ってるのよ。いくらあんたでもあんな状態になったお父様を説得するのは無理よ」

「無理? まだ何もしていないのに? 諦めるならやってみてからでも十分間に合うでしょう。それに、私は諦めの悪いお節介焼きだから、人が悲しむのは嫌いなの。そもそも私は貴女達とパーティーに行く約束したのだもの。約束は果たすためにあるのよ? 約束を破るだなんて、私の信用問題に関わるわ。というわけで、私はレオナルドさんのところへ行ってくるから、待っててちょうだい」


 シアはそれだけ言うと、キッと眦を上げてレオナルドの私室へと足早に向かう。そして、到着するやいなやノックと共に部屋の中に入った。


「失礼します」

「……っ! ノックと共に入ってくるやつがいるか」


 最低限のマナーもなしに勝手に入室してきたシアに驚きつつも声を荒げるレオナルド。昨日の穏やかな姿はどこへやら。その姿は手負いの獣のように必死でこちらに威嚇しているようだった。


「ここにいます。どうせノックしてもレオナルドさんは開けないようにするか入るなって言うでしょうから」

「だったら」

「レオナルドさんは、どうしていきなりパーティーに行かないなんて言い出したんですか?」


 シアはツカツカと窓側にいるレオナルドのそばまで行くと、彼のセリフに被せるように間髪入れずに尋ねる。

 レオナルドはバツが悪いからか、シアの指摘に彼女と顔を合わせないように外方を向いた。


「…………私が行かなくたって支障はないだろう」

「昨日まで行く気になってたじゃないですか。もしかして、急に具合が悪くなったんですか?」

「…………」


 シアの問いかけに黙り込むレオナルド。

 不機嫌そうに固い表情をしているが、自分が理不尽なことをしている自覚はあるようだった。


「レオナルドさん」


 シアはレオナルドの前に立つと、彼の手をギュッと握った。


「私、誰にも言ってない秘密があるんですけど」

「……急に何だ」

「実は人に嫌われるのが怖いんです」

「は?」


 いきなり何を言い出すんだという顔でシアを見るレオナルド。


「私がお節介焼きなのも八方美人だからです。人に嫌われたくない。だから手紙も嫌われたくなくて、やめどきがわからなくてあんな量になりました。みんなから少なからず慕われているのも、相手が欲しい言葉や態度を考えてそういう風に振る舞っているからです」

「何が言いたいんだ」


 シアがまっすぐレオナルドを見つめる。


「レオナルドさんは、きっと『わかりました。今日はもうパーティーに行かなくていいです』という言葉を望んでいることはわかっています。けれど、私は今それを言いません」

「…………なぜだ」

「私がレオナルドさんの妻だけでなく、セレナとアンナとフィオナの母だからです」


 シアが言い切ると、レオナルドが衝撃を受けたように目を見開いた。


「レオナルドさんの妻としての役割だけでしたら、きっと私はレオナルドさんにパーティーに行かなくていいと言っていたでしょう。ですが、私は三人の娘の母でもあり、今回彼女達とパーティーに行くと約束しました。だから、親としてその約束は守らなければなりません」

「…………」

「レオナルドさんにも行きたくない事情があるのはわかります。こんなギリギリになって投げ出したいほど、レオナルドさんにとっては何か嫌なことがあるのだというのも理解できます。けれど、レオナルドさんは彼女達の親です。常に品行方正でいろとは言いませんが、親であるなら子供達には手本になるような正しい姿を見せてはいけないのではないでしょうか」

「親であるなら、か……」


 レオナルドが黙り込む。何やら色々と考えているようだった。


「それと言っておきますが、もし今日本当にパーティーに行かなかったら彼女達からの信頼はかなり地に堕ちると思いますよ。今、既にレオナルドさんにかなり不信感を抱いているようでしたから。言ってしまえば、家族の危機です。早く撤回されるのが得策だと思いますよ」

「それは……確かに困るな」


 だんだんと落ち着いてきたからか、声色がいつもの調子に戻ってきたレオナルド。シアはそんなレオナルドの様子を見計らって、握ってた手をさらに強く握った。


「ねぇ、レオナルドさん。私達は家族です。先程も言いましたが、私はセレナとアンナとフィオナの母ではありますが、レオナルドさんの妻でもあります。言いにくいのはわかっていますが、困ったり悩んだりしてることは話していただけないでしょうか? 夫婦なんですから、私も妻として、レオナルドさんの力になりたいんです」


 再び黙り込むレオナルドの言葉を根気強く待つ。そして、かなりの間沈黙したあと、レオナルドはゆっくりと口を開いた。

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