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行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました  作者: 鳥柄ささみ
第一章 結婚

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第十五話 招待状

「じゃあ早速ワガママというか……シア様が言う通り、実は一つ悩みがありまして。聞いて欲しいのですが、よろしいでしょうか」

「もちろん。どんな悩み事?」

「こちらなんですけど……」


 そう言ってアンナが机の引き出しから出してきたのは何かの招待状だった。


「見てもいい?」

「はい」


 そこには来月に開催する交流パーティーの案内が書かれていた。


「ディラン伯爵家のパーティー……これがどうしたの?」

「そこのご子息の方に誘われまして。何度か断ったんですけど、熱心に誘われてしまって」

「うん? 断ったってことは、アンナは行きたくないの?」

「いえ、行きたいは行きたいのですが……」

「うんん?」


(パーティーに誘われて、行きたいのに断っているというのはどういうことかしら?)


 話が読めなくてシアは首を傾げる。いくら頭の中で反芻しても理解できなかった。


「えーっと、行きたいのなら行けばいいじゃない。あ、もしかして家のことが心配とか? だったら私がいるし、心配しなくても大丈夫よ。アンナが一日不在にしたって問題ないわ。あぁ、それともドレスを新調したいとか? それなら心当たりがあるからすぐに手配しておくわよ」

「いえ、そういう心配ではなくて……」

「んー? 他に何か懸念材料があったかしら……」


 色々考えるも思い浮かばない。そもそもパーティーに呼ばれたのに出られない理由など、シアには一つも思い至らなかった。


「あの……パーティーはお父様に禁止されているから、行きたくても行けないんです」

「えぇ!? 何で? どういうこと?」

「それは……私の口からは何とも……」


 急に奥歯に詰まったような物言いをするアンナ。

 たまにギューイ家の人達は突然口籠ることがあるが、いずれも理由はわからず。


 レオナルドもそういう節があるので、もしかしたら遺伝なのかもしれない。


(それか、何か隠しごとがあるとか)


 秘密主義なレオナルドならあり得そうと思うも、だからと言ってその隠し事がなんなのか教えてもらえるほどまだ関係ができあがっていないことはシアもわかっていた。


 そもそも本当に隠し事があるのかさえ謎である。


 個人的にはどういう理由でパーティーを禁止にしてるかは気になるが、まずは理由はどうであれ、パーティーに参加できるようにするのが先決だとシアは結論づけた。


「ねぇねぇ、アンナ」

「はい」

「もしかして、ディラン伯爵の令息といい感じになってるとか?」

「あっ、え……!? べ、べ、別に、そんな……っ、そういうわけでは……」


 シアの指摘に、明らかに挙動がおかしくなるアンナ。どうやらビンゴらしい。


「いいじゃない、隠さなくて。誰にも言わないわ。そうやって悩むくらい、好きなんでしょう?」

「………………はい」


 蚊の鳴くような声で耳まで真っ赤にしながら俯くアンナ。「いいわね、青春よねぇ、甘酸っぱいわぁ」と心の中で思いつつ、シアはニヤケそうな口元を精一杯引き結んだ。


「すごい優しい方で、ずっと私のことを心配してくださっていて。シア様が来てくれたことを話したら『よかった。もうキミだけが家に囚われずに済むようになったんだね』と、喜んでくださって」

「なるほど。だから余計に諦めずに招待してくれたのね。いいじゃない、アンナのことを大切に想ってくれている証拠だわ」

「でも、最近はシア様に家のことを丸投げで甘えすぎな気もしていて」

「何を言ってるの。さっきも言ったように、私はそのために家にいるんだから、そんなことアンナが考えなくてもいいのよ」


 普段からシアに好意的なアンナだが、こんなに自分のことをあれこれお喋りしてくれることは少ない。そのため、シアはこうしてアンナが色々と話してくれるのは嬉しかった。


「レオナルドさんは私が説得するわ」

「え、いいんですか?」

「もちろん。愛娘の頼みとあらば頑張っちゃう」

「ありがとうございます。……でも、お父様は……その、とても気の難しい方ですから、頷いてくれないかもしれません」

「頑固だものね」


 シアが直球で言えば苦笑するアンナ。シアよりも付き合いが長いのだから、その辺りはかなり実感してるだろう。


「大丈夫よ。任せなさい! 何としてでもパーティーに参加できるようレオナルドさんを説得してみせるわ」

「ありがとうございます」

「とりあえず、アンナはパーティーに参加するつもりでいてね」

「わかりました」

「ということで、好きな色は何?」

「へ?」


 突拍子もないシアからの質問に、目を丸くするアンナ。


「まさか、ドレスを新調しない気?」

「え、だってまだ、行けると決まったわけでもないですし。それにドレスなら既にいくつか持っていますし」

「ダメよ、せっかくお誘いされたんだから、ドレスは新調しないと。年々新作も出てるのだし、流行は常に変わるのよ。それに、若いのだからもっと綺麗な色味じゃないと。着れるうちに着れるものを着ておかないともったいないわ」


(母の受け売りだけど)


 母に常々言われ続けて来たことをまさか義理とは言え、娘に言う日が来るとはと感慨深く思いながら、シアは最もらしい言葉で戸惑っているアンナを説得する。

 実際、アンナのドレスはどれもこれも暗い色が多く、全体的に古めのデザインばかりだったので昨今のパーティーには向かないものが多かった。


「いいんですか?」

「もちろん、いいに決まってるでしょう。ドレスだけじゃなくて小物も用意しないとね。靴は早めに用意して、履き慣らしておかないと。あぁ、あと髪型やメイクも必要ね! なるべく早く手配しておかないと」


 やらなきゃいけないあれやこれを脳内でリストアップする。それと同時に、レオナルドを説得するために必要なこともピックアップしておく。


「それで、アンナは何色が好き?」

「……私、恥ずかしながら若草色とか好きなんですけど……似合うと思います?」

「似合う似合う! 恥ずかしがることじゃないわよ! 若草色、いい色じゃない。私も好きよ。綺麗で若々しくて目にも優しい素敵な色よね。では、ドレスや小物はその色味に合うものにしましょう。他に希望ある? レースが多めだとか、フリルが多めだとか……」

「えーっと、他は……」


 それからアンナの好みをどんどんと聞き出す。最初こそなかなか言い出しづらいようだったアンナも、シアが促すうちにだんだんと気持ちが乗ってきたらしい。好みの系統や最近の流行りの話など時折脱線しながらも、二人は楽しく会話をするのだった。

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