表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある娘

作者: 南区茜

私が部屋で本を読んでいると、玄関が、インターホンが押さるれこともなく乱暴に開く音がした。次いで怒声。わたしは耳をふさいだ。嫌だ。もう聞きたくない。私の生活に干渉しないでよ・・・そう願った彼女の祈りは今日も届かず、怒声の主である男は階段を一段一段踏みつぶすようにゆっくりと登ってきた。ああ今日もかぁ・・・彼女は疲れ切ったこけた頬の顔を上げ、男が入ってくるであろう自室の扉に目を向けた。覚悟はできている。いつものように、ただ抵抗せずじっとしていればいいだけ。抵抗しても長引くだけで余計つらいのは私が一番よく知っている。感情を殺せ。何も考えるな。これは試練なのだ。私はこの先にきっと光をつかむのだから、今だけは頑張ろう・・・


終わった。今日も、いや、今日は一段ときつかった。なぜ自分だけこんな目に合わないといけないのだろうか。考えないようにしていても、つい自分の不遇な環境をほかの人と比べてしまい涙が出てくる。いつまでこんな生活を続けるつもりだ。お前もつらいだろう。そうあいつは言っていた。なんてことを。私がこんなにもつらいのはお前がここに来るからで、お前さえいなければ私は、私は・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

彼女は今日も家から出ない。理由はたしか「めんどくさい」だ。全く、聞いてあきれる。確かに元からめんどくさがりの気はある子で、それは恐らく妻からの遺伝だろうが、いや、もしかすると自分かも・・・まぁ、そんなことはどうでもいい。現状をとにかく好転させることが第一だ。しかし、今日は驚いた。珍しく制服を着て出かけたかと思えば、妻と私が仕事に出かけるまで庭に隠れて待機していたという。どこまであの子は家から出たくないのか。会社で学校から娘がまた学校に来ていないという知らせを受けて、幸い(?)そこまで家から遠くない会社から昼休みを使ってわざわざ怒鳴りに行ったがそれも徒労に終わった、いやむしろ逆効果だったみたいだ。娘はなおいっそう家から出ることを拒み、今日は泣かせてしまった。こうじゃダメだとわかっているのだが、泣き顔を見るとつい可哀そうに感じてしまう自分がいる。はぁ・・・明日はちゃんと学校に行ってくれればいいのだが・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ