準備をしよう
随分と間を空けてしまいすみません。
久し振りな上にちょっと短いです。
さて、忘れがちだがここではっきりとさせた方が良い情報がある。
それは位置情報だ。
転移魔法で簡単に長距離を移動してしまえるので、残念な事に、目的地までの距離や方位がたまに分からなくなるのだ。
赤灰山に向かうとは言っても、万全な状態で突撃するのが一番。意気込んでおいて首を傾げるような言い方かもしれないが、事前準備は大事。繰り返すが、最寄りの街の宿で休息を取り、打ち合わせをし、装備の確認をし、万全な状態にする。何が起きるか分からないしね。
赤灰山最寄りの宿を探す為にも、現在位置の確認が必要となるのだ。
やや縦長に多角形の形をした大陸の中央に、大陸唯一の山脈群が存在する。その山脈群の丁度中央付近に存在するのが赤灰山だ。この山の由来は『日の出と日の沈む時間帯に、北から見ると赤く、南から見ると灰色に見える』自然現象から来ている。
それはともかく。
ザカライアに強制連行前にいた場所は赤灰山の北西。ザカライアは赤灰山から見て南南東に位置し、隣国を超えれば海が見える位置に在る。
宗教都市国家と聞くと地球のバチカン市国を思い浮かべてしまうが、ザカライアは宗教都市国家を名乗っている癖にそこらの小国とほぼ同じ大きさの国土を誇る。領地の殆どが、農作物の栽培に適さない不毛な土地で、魔物の巣も多い。都市が聖堂として機能している箇所が十数ヶ所で、そこにしか人が住んでいない。
これらの事から、厳密には『宗教都市群国家ザカライア』と名乗るべき状態なんだけど、……そこは歴史の謎だ。
ザカライアと赤灰山の直線距離はおよそ千キロ。このまま向かうのなら、南から山に入る事になる。けれど、ここで問題が一つ発生する。
忘れていたんだけどね、瘴気の洞穴から出現する魔族の対応にザカライアから神殿騎士が派遣されている。その拠点が赤灰山の南側に存在する。
こいつらの真上を空を飛んで移動する。何の冗談? 絶対、魔族と誤認される。下手すりゃ、下から魔法が飛んで来る。
ザカライア派遣組と鉢合わせをしたらどうなるかも分からない。無理矢理組み込まれる可能性も有る。最低でも脅迫を受ける事程度は想像出来る。邪魔されずに赤灰山に足を踏み入れるのなら、北側からが確実だ。目的地は南側に有るんだが、邪魔の有無を考えると北側からが望ましい。アレが南にいるかも知れないし。
そんな理由から、誤認攻撃と鉢合わせ回避の為に反時計回りで赤灰山の北側に向かう事になった。
赤灰山、北側最寄りの宿場町。
この宿場町は山脈群の西側に多く存在する鉱山から産出された多種多様な鉱石の交易の場でもある為、治安はそれなりに良い。
警備とサービスの良さそうな宿で部屋を借りた。利用する客層を見るに恐らくは商人向けの宿なんだろう。冒険者らしい人間の利用者は自分達以外にいなかった。
何でいるんだ的な視線を他の客から貰うが、自分を見ると納得したのか視線が逸れる。やっぱり、女でも安心して利用出来る宿と言う認識が在るらしい。ちょっと安心した。一階に食堂は無い。在るのは予約制の個室喫茶店みたいなスペースだけだ。ここは商談に使われているんだろうね。
ここに泊まる客の食事は、隣の富裕層向けのレストランを利用している模様。恐らく、提携関係に有るんだろうね。自分達は使わないけど。
少し離れたところに在る大衆食堂を利用する事になるだろう。大食いのクラウスの胃袋を満たすには、質より量を選ぶ。
食事や買い物以外で部屋から出ない宿泊客は目立つと言う事も無く、入念な準備と打ち合わせが行えた。
今回の装備で使いどころを選ぶのは、やっぱりベネディクトとロンが使いたいと言い出した銃火器だろう。この世界と言うか、この大陸に銃火器系は存在しないし、火薬が存在するか怪しい。
使えば絶対注目を浴びるだろうし、製造方法をしつこく聞かれる可能性は十分に有る。製造方法を手に入れようと拉致監禁に動く輩も出て来るかも知れない。過去の世界で、実際にいたからね。こう言うところは気を使うのだ。
可能な限り使うなと、二人には釘を刺した。
……銃火器を持っているのは自分も同じなので、自分も気をつけねばならない。特に爆発物。以前威力テストと称して色々と作ってしまい処分に困っている試作品が大量に有る。一度爆破解体技術の勉強をしようかと考えて『アホッ!』と突っ込まれたのは懐かしい思い出だ。
今回使う爆発物は余り無いだろう。使うとしても、閃光弾か音響弾ぐらいだ。
代わりに使う銃器は実弾系以外の、魔力を固めて弾丸にして撃ち放つ、通称魔力弾用の銃器になる。超電磁砲系は銃身に雷を纏わせれば簡単に作れたが、荷電粒子砲系は作れなかった。無念。持ち運べるハイメガ粒子砲とか作れればと思ったけど、空想科学の一種を再現するのは難しい。
銃器系は最近使っていなかったので、一度分解してから念入りに手入れをする。
弾薬の種類も大量に有るので量産を忘れずに行う。着弾地点で魔法が炸裂する銃弾とか、制圧用の非致死性ゴム弾とか。特注弾が多いので使用するベネディクトとロンに欲しい個数を確認してから作る。
銃器以外にやる事と言えば、クラウスからのリクエストに応じて彼の装備品の改良及び、追加装備の作製を行う事だ。
クラウスの装備品はバスターソード、盾、突撃槍、ダガー、ハーフプレートの鎧(余り使われない)で、ダガー以外は一年前には聖結晶を使った改良を加えている。この一年の間にも何度か改良を行った。
「竜化状態で使用出来る装備?」
故に、クラウスからのこのリクエストを聞き、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ああ。実を言うと、少し前の世界で竜化しても苦戦を強いられてね。その時は自己強化でどうにか乗り切れたが、念の為に竜化状態で使える装備が欲しいなって」
クラウスから詳細を聞くと、想像以上に苦戦を強いられていた。
クラウスの耐久力はパーティメンバーで一・二を争う上に、自力で回復出来る。更に魔法の火力も有る。こいつは意外にも敵に回すと厄介且つ、面倒な奴なのだ。自動回復機能が付いた、重戦車か戦闘機のような感じと言えば解るか?
「欲しいなって、何でもっと早くに言わなかったのよ?」
「ん~、この世界で竜化する機会が無さそうだったから」
「忘れてたの?」
「その通り」
「おい」
漫才じみたやり取り後、クラウスが希望する装備の作成に取り掛かった。
そして装備を万全にした数日後。
遂に赤灰山に向けて出発した。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
言い訳になりますが、途中の構想が何故か終わりと噛み合わなくて、何度か書き直しておりました。
書き直した結果、ほぼ書き終わりました。
見直しながら投稿して行く予定ですので、ちょこちょこ間が空くかもしれません。一名扱いに悩んでいるキャラがいます。優しくするのなら登場はあと一回で済ますか、バッドエンドなエクストラステージを与えるか。扱いが難しいキャラなので、書き上がりを読み直して修正しながら決めようと思っています。




