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聖女に認定されてしまったので逃亡します  作者: 天原 重音
襲撃と再会編

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過去は忘れた頃にやって来る

結末までの構想が固まったので二章を投稿します。

 季節は一巡し、隣の大陸へ移動を検討し始めた頃。すっかり忘れていた問題が再燃した。

 とある街にて別行動中、妙な集団に声を掛けられた。

「クロウティア・ノース嬢。教皇聖下が」

「人違いですので行きますね」

「いえ、聖下が」

「人違いです」

 青い髪に黒い法衣をまとった集団に向かって『人違い』を主張する。

 困惑して顔を見合わせているが、まるっと無視。暴言吐かれたからやらない。あの時そう言って行方を眩ましたのだ。

 少しずつ後ろに下がり、タイミングを見計らって逃走。

 呼び止める声を無視して、男衆に念話を飛ばして、街の外を合流場所に指定する。

 合流と同時に空間転移魔法で即座に移動。街から百キロ離れた草原に降り立ち、情報を交換し合う。

 幸いな事に、男衆はあの集団と遭遇しなかったらしい。

「変装しないと駄目かな?」

 ある程度逃走したので髪と瞳の色を変えずに過ごしていた。合流出来た事で出来た余裕が原因か、ちょっと慢心していたのかもしれない。 

「どうでしょうね。顔が知られている以上、この大陸の何処に行っても意味がない気もしますが」

「何処に行ってもって、どんなストーカーよ」

「ストーカーか否かはこの際どうでもいいけど、何で今になって見付かったんだろう?」

「教皇聖下が~って言っていたんだったら、本腰入れて探し始めたって事じゃないかな」

「可能性は高いですね」

 四人で見解を述べ合う中、奇妙な視線を感じた。

 周囲には自分達以外に人気はない。草原のど真ん中で、何故視線を感じたのか。

「ベネディクト。人の気配とか感じない?」

 この面子で最も気配探索能力が高いベネディクトに尋ねる。ベネディクトは首を傾げたが、何も言わずに探索を始める。頼んでいないのに、ロンとクラウスも探索をする。

「……人の気配どころか、魔物の気配も有りませんね」

 三人揃って見付からなかった。

「でも、ククリが言うって事は……」

 全員でクラウスと同じ事を思ったのだろう。

「忘却の彼方に追いやりかけていた『アレ』って事だね」

「ロン、明るく言うな」

 噂をすれば影が差すは本当らしい。

 ケラケラと笑うロンに突っ込んだ直後、空からズシンッと音を立てて、『それ』は前触れなく降って来た。全員武器を手にする。

 ぱっと見はグロテスクな丸い肉塊。表面にテカリはないが、肉が蠢いていて、ミミズの移動のように『蠢く』と言った動きで気持ち悪い。

 彼我の距離は目算で二十メートル前後だが、この肉塊の直径は五メートル強と大きい。圧迫感が強い。

 この蠢く塊は何なのか。その答えは誰も持ち合わせていなかったが、頭頂部分に亀裂が入り、『頭部』と思しき部分が迫上がった。粘液塗れで見ていて気持ち悪い事この上ない。

 頭部に続き、人体で言うところの胸の辺りまで迫上がった直後、頭部側面の一部が、かぱっと、口のように開き、咆哮を上げた。

「オアアアアアアアアッ!!」

 咆哮と共に肉塊から複数の触手が伸び、鞭のような動きで攻撃をして来た。

 即座に号令なく散開するが、触手は自分だけを追って来た。粘液に塗れていないので、素早い動きをしても粘液を撒き散らさない。粘液塗れに何てなりたくもないが、触手に捕まりたくもない。

「火輪! ――って嘘ぉっ!?」

 炎属性の防御魔法で、その名の通りに己の周囲に円状の炎の壁を生み出す。何時もならば触手は高温の炎の壁を突破出来ず焼けて塵となる。

 しかし、現実は違った。

 触手は火傷一つ負う事なく高温の炎の壁を突破した。慌てて別の魔法障壁を展開し、上空に逃げる。咄嗟に展開した障壁は突破されなかったが、ただ一度の打撃で亀裂が入った。

 別方向からも複数の触手が伸びるが、それらは全て銀を纏う白く輝く矢によって、ほぼ同時に空中に縫い付けられた。縫い付けられたのは触手の先端。故に、伸ばす事も縮める事も出来ず、縫い付けられた触手は動きを止めた。

「そのまま、宙に!」

 ロンの声に行動で応える。高度を維持したまま空中で空間遮断障壁を展開。行使可能な魔法障壁で最も硬い障壁は、触手の打撃が数度加わっても耐え切った。そして、障壁に打撃を叩きつけた触手の動きをロンが矢を放ち、空中に縫い付けて止める。

 狙撃の腕は相変わらず見事だ。ロンをチラリと見れば、ロングボウに新たな矢をつがえていた。

「避けもしないですが、堅いですね!」

「神聖魔力付与でなら断てるぞ!」

 他方、ベネディクトとクラウスは触手が襲い掛かって来ない事を確認してから攻撃を繰り出していた。それぞれの手には暗器の短剣とバスターソードが握られている。目を凝らせば、クラウスの手にある剣に薄っすらと銀光が纏わり付いており、触手をサクサクと切っている。短剣を弾かれて困り顔を浮かべていたベネディクトは、クラウスの助言通りに短剣に銀光を纏わせ、即座に切り付ける。短剣はあっさりと触手を断ち切った。

 その光景から、肉塊の正体に行き着く。だが、同時に疑問も湧く。

 一年も経った今になって何故、と。

 魔物の上位種が出現するようになったとは聞かされた。けれど、自分はこの世界の情勢なんぞどうでも良い。

 行方を眩ませたものを探し出さなければならない状況に陥ったか、あるいは別の理由が有るのか。

 攻撃を妨害された事に苛立った肉塊が全方位に触手を伸ばす。攻撃は単調で触手を地面に叩き付けるだけ。触手が叩いた地面に変化は見られない。

 ロンが動きを止め、クラウスとベネディクトが触手を断って行くが、肉塊にまでは到達していない。

 自分への攻撃の手は弱まった。今が機会だ。一発で葬ろう。

「霊力封印率、八割に移行」

 神聖魔力が効いている事からの推測だが、あの肉塊は魔族である可能性が高い。

 そうならば、霊力なしで葬り去るのは難しいだろう。魔法による攻撃が通じない訳ではないが『効き難い』のだ。耐久限界を超える程の魔法攻撃を叩き付けるとなると、大量の魔力を消費する事になる。だが、霊力を用いればその心配はない。

「選別」

 非物質に干渉する魔法を用いて、特定対象にだけ効果が発揮されるように選び別ける。対象はあの肉塊だ。

 続いてイメージするは全てを塵に焼き焦がす高温の青い炎。

「青天」

 頭上に手を掲げて魔法名を唱えれば、青空のような青い炎の塊が頭上に出現。炎には砂金のような金の粒子が混じっており、炎に負けない輝きを放っている。この輝きは霊力の光。二割開放状態にしては粒子の量が多い気もしなくはないが、眼下の敵を葬り去るには十分だろう。

 肉塊は動いていない。触手を伸ばして攻撃をするだけ。

 手を振り下ろす。青い炎が眼下に飛んで行き――着弾し燃え上がる。

 草原の草は一つも焦げ付かないまま、肉塊は断末魔の悲鳴すら上げられず燃え尽きた。

「何度見ても凄い威力ですね」

 地面に降り立つと、戦闘終了と見做したベネディクトが近付いて来た。他の二人も歩み寄って来る。

「青天にしては威力が強すぎるけど、霊力を使ったのかい?」

「うん。神聖魔力付与でダメージが通るのなら、霊力を使用しないと葬れないと思って」

「あー、霊力を使ったから、威力が一段階増なのか」

 クラウスの質問に答えつつ、霊力の封印率を九割に戻す。

「霊力の粒子見えなかったの?」

 クラウスの質問に疑問を持って問うと、そう言えばと、答えが返って来る。

 確信がなくて尋ねて来たのか。

「そんな事よりも、移動しないと不味くない?」

 ロンの指摘により、逃亡中だったと思い出す。

 しかし、街に立ち寄っても先の集団がいるかもしれない。いや、いるな。教皇がどうのって言っていたから、虱潰しで捜索しているだろう。



 先の集団の特徴である青い髪は宗教都市国家ザカライアの人間の特徴だ。不思議な事にこの国で産まれた人間は皆、『両親の髪色が青色でないにも関わらず』青色で産まれて来るのだ。原因は不明とされているが、青い髪を持って産まれたものは例外なく聖職者になっている。

 青色=聖職者と言うイメージが定着している訳ではないが、ザカライアの人間――特にこの国の聖職者は『青色』を神性視している。

 ザカライア以外で青い髪を持って産まれてくる人間がいないからかもしれないが。

 

 

 かの宗教都市国家はここから……あれ?

「ねぇ、今思い出したんだけど」

 大陸地図を思い浮かべ、現在位置と周辺国の位置について思い出し、とんでもない事に気付いた。

「奇遇ですね。私もです」

「うん。俺も」

「? どうしたの?」

 ベネディクトとクラウスも同じ事に気付いたのだろう。冷汗をかいている。

 未だに気付いていないロンは首を傾げるばかりだったが、現在位置について尋ねると直ぐに思い当たったらしく、顔を引き攣らせた。

「何処に行くか、悩むな」

「話題にすら上らない事が難題に変わるとは」

「ん~~~、取り合えず今日は移動先の宿で良いんじゃないか?」

「クラウス、宿は……いや、可能か」

 クラウスの提案に無理と答えようとしたベネディクトが、何かに気付いて肯定した。

「宿は流石に無理じゃ?」

「いや、今日に限っては大丈夫でしょう」

「今日に限って? ……ああ、そう言う事か」

「へ?」

 ベネディクトが言った『今日に限って』のところで、何となく分かった。理解が追い付いていないロンにクラウスが解説する。

 今日に限って大丈夫、と言う理由は、先程『魔族らしき肉塊』と戦闘をしたからだ。

 魔族との戦闘痕跡が有れば調査する。捜索員を調査要員としてここに派遣する為に、一時的に捜索の手は止まると、クラウスは読んだのだ。

 この辺りの事をロンに分かり易く解説し、移動を始める。

 ただし今度は空中を移動する。

 其々所有する飛行用魔法具に乗り、空に上がる。計器で測定し、高度は八百メートル程度で固定。

 通信機は魔法具に積んであるので、緊急時に対応出来る。

 ザカライアから離れる為に空を飛んだ。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

やや短いですが、区切っても良さそうな部分がここだった事も有り、投稿しました。

書き溜め分を一括で投稿しますので、次話もこのあと投稿します。

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