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聖女に認定されてしまったので逃亡します  作者: 天原 重音
とある王子の後悔

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とある王子の後悔⑤

 次に目が覚めて、鏡を覗き込むと、そこには十代半ば頃の自分の顔が在った。

 ――転生したんだ。

 女神の手により転生した。与えられた機会は二回しかない。その内の一回が今世。しかし、記憶を取り戻してもエステルらしき少女と出会った記憶が無い。

 どこにいるんだと焦ったが、女神の言葉を思い出して落ち着かせた。

『転生するのは二回。必ずエステルに会えるようにする』

 女神は必ず会えるようにすると、明言したのだ。記憶を取り戻す前に会わなくて良かったと逆に安心してしまった。

 必ず会える。その言葉を信じて、二年後に会えた。

 十代半ばまで成長したエステルと再会出来た。喜べる状況ではないのは解っているが、それでも、嬉しかった。

 言いたかった言葉、女神からの伝言を伝えたが、返って来たのは冷たい言葉。

「……そう」

 心底どうでも良い。そう言われているかのような返事だった。

「一つだけ言って置く」

 怒りが透けて見える瞳。前世でよく向けられていた眼。視線が合う事なく、エステルは俺に背を向けた。

「今のあたしは、もう、エステルじゃない」

「っ」

 放たれた言葉に思わず息を呑んだ。彼女はそれだけ言って走り去った。

 背後から避難を急かす護衛騎士がやって来た。



 想像以上の拒まれ方に俺は呆然としてしまった。女神からの伝言と言えば少しは話しが出来ると期待を持っていたのに。

 ここなら安全だと言われて連れて行かれた先で、聞き覚えのある囁き声を聞き、彼女らしき人物の存在が近くにいると知った。

 護衛騎士達の制止を振り切り、無心で森を駆けて、夜明けと勘違いさせた出現した黄金の太陽が一切合切を焼き払う光景に遭遇した。

 太陽が一切を焼き尽くし、金の粒子が空から舞い散る様は神秘的だ。

 粒子が舞うその中心にエステルと知らない三人の男がいた。

 僅かに苛立ちを覚える。名を呼んでもエステルは振り返らない。それどころか、行こうと、言い出す始末だ。

「待て、待ってくれ。俺は、俺はっ……」

 やっと会えたのに捨てられる。捨てられる事で生まれる感情で、言いたい事が言えない。

「先に拒んで捨てたのに、どうして捨てられたと分かると縋り付いて来るのかしらね」

「っ!?」

 痛烈な批判に、何も言い返せなかった。

「縋り付かれるのは嫌がる癖に、捨てられると縋り付いて喚くとか、迷惑以外の何物でもない」

 エステルの本心に、言葉が無い。

「やり直す? 無理に決まっているでしょ。何も始まっていないし、始まる事もない。何より、人を生贄にしようと企んだ野郎の息子とか願い下げよ」

 彼女が言っているのはこの世界の父の事。

 何て事をしてくれたんだと叫びたいが、続いた言葉を聞いて意識が凍り付いた。

「例え神の手で再び繋がれた運命だとしても、この手で切って拒むだけ」

 そう言って、エステルは何かを燃やした。恐らく、女神が用意した『確実に会う為の運命の糸』を燃やしたのだろう。推測は正しく、糸が燃えたと認識した瞬間に微かに女神の声が聞こえた。残された機会が消えたのではないかと肝が冷えた。

「あたしはエステルじゃない。エステルとは名乗らないし、名乗る事はない」

 それはここでの再会前にも言っていた事。

「その顔を見なくて済むところに逝ったのに、何で顔を見せに来るのよ」

 俺は、謝りたくてやって来たのだ。自己満足と罵られようとも、謝りたかった。

「謝りたいって思うのなら、もう二度と会いに来ないで」

 止めの言葉を、彼女の本心を聞き、どうすれば良いと悩む。

 悩んでいた間に彼女は三人の男と一緒に去った。

 朝日に消えて行くような光景を見て、足が動かなかった。

 どうしてあの三人は彼女と一緒にいるのか。その疑問は浮かばず、ただ苛立ちだけが募った。



 それからの日々は最悪の一言に尽きた。

 政争に巻き込まれ、時代の新たな流れに翻弄されて。気づけば毒杯が差し出された。

『何も出来ない役立たず』

 杯を持って来た父の部下に、最後にそう罵られた。

 確かに役立たずだろう。言いたい事が言えず何も出来なかった。

 次の運命に身を委ねるしかないのか。けれど、運命の糸は既に燃やされている。他ならぬエステルの手で。

 杯を眺める。次こそはと思っていたのに、蓋を開けたらこの有様。

 ここに居ない女神に祈った。

 もう一度機会が欲しいと。

 そして、苦い毒杯を呷り、意識を失った。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

連投はここで一度ストップです。


菊理が過去に出会ったキャラ視点の、別ストーリーがあった方が良いかなと書いたものです。菊理が去ったあとに起きるあれこれや、どうしてあそこで出会ったのか。書くと裏の補完話になりました。

次で最後の投稿になると思いますが、トビアスの今後の扱いが未だに決まらず、めっちゃ悩んでおります。

彼の場合は、菊理への執着を捨てて離れる事で、人生は良い方向に向かうのに、出来ないから悪い方向に向かう。でも、後悔しないと彼の話は始まらない。何だろうこの詰んでるキャラは? 詰み過ぎだけど、グッドエンドなる慈悲を与えるべきか。


作品構成と一緒に考えるので、次話投稿は少し間が空きます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 謝罪は自己満にすぎず 謝罪を拒まれたにも関わらずまた会おうとするのは ゴリ押しすれば謝罪を受け入れて貰えると思っているように見える 高い地位に産まれた人間の傲慢さが垣間見えるよね そこま…
[一言] なんだかこの世界の聖女は座敷童みたいですな。居るだけで栄えるけど、不幸にして出ていかれると揺り戻しがきて衰退する。 子を成さずに死ぬのが災いが起きる要件と分かっているなら、生理がきたら直ぐに…
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