とある王子の後悔①
今後の扱いに悩んだキャラであり、突然現れた菊理との関係のあるキャラの過去話です。
どれほどの月日が経過しようとも、トビアスの、この後悔と絶望は消えなかった。
彼女と違う女と婚姻し、子を成し、王位を継いで国を治め、永い年月が経過した。
大人になり、王になった俺は、気づくと何度も、王城敷地内の霊廟に足を向けてしまう。
この霊廟は、この国に女神の生まれ変わりとして生まれ、国に繁栄をもたらした少女達を弔うだけの墓場だ。
生まれ変わりが一人でも生まれるとこの国は異常に繁栄し、数多の富を授かる事が出来る。
国に繁栄をもたらす存在であるが故に、ここに弔われているのだが、もう一つ理由がある。
過去の資料を読んで初めて知ったのだが、女神の生まれ変わりは皆寿命が短い。その死因は『自害』である。何故例外なく皆自害しているのか。調べると、これまた例外なく、家族から虐待を受けていたのだ。
家族からの虐待、望まぬ王族との婚約で齎されるやっかみと嫌がらせに、皆命を絶ってしまい、きちんと弔われないのだ。
故に、国が専用の霊廟を建てて弔っているのだ。
その霊廟の一角で足を止める。
ここに、俺の婚約者だった少女の亡骸が今も眠っている。
今思い出すと、彼女は救えたのだ。王族が婚約者に選ばれるのは、彼女を守る為だった。
父も守れと言っていたのに。
でも、俺は拒んでしまい、彼女はこの世界からも去ってしまった。
あの光景は数十年経った今でも、はっきりと思い出せる。きっと、俺が死ぬ間際でも、鮮明に思い出せるだろう。
「大っ嫌い。――二度と、その顔を見なくていいところに私は逝く!」
そう言って、自分の婚約者だった少女は、隠し持っていたナイフで自分の首を斬り、自害を図った。
泣きながら自分を詰り、ずっと溜め込んでいたものを全て吐き出し、彼女は血の海に斃れた。
会場は騒然となり、周りの大人が悲鳴を上げている。
思い出す度に、俺の後悔は消えず、深い絶望に囚われる。
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キリの良いところまで連投します。