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メルシグド史書  作者: カツマタキ
第1章 1764年 シュッダリウム砦 奪還作戦
5/5

1-05 砕けた刃

前回までのあらすじ:

二つ名の戦いはアルバートの勝利で幕を閉じた。

しかし、ファムたちは謎の男との戦いが続いていた。

 少し離れた場所で、氷の大きな柱が出現した。


「アルバート、やりすぎだぜ」


 ファムが横目で氷の柱を見て苦笑いする。


「あんたさ、よそ見している油断あんの?」


 男がファムに向かって少しイラつきを見せながら話しかける。ファムに向けられた殺気に額から汗が垂れ、顎までしたたると水滴がポトリと落ちる。そして全身から鳥肌が立ち身震いをする。

ファムが固唾を飲んだ瞬間、ボロボロになったレオンが


「おまえもだよ!」


 何度も返り討ちを食らった痕跡、半袖と長ズボンは所々切り傷として破れながら血が流れている。切られた付近の服は赤くにじみ、切られた場所以外は泥にまみれ、グシャグシャになっている。それでもレオンは男の背後から再度、突撃する。

右手で持っている大剣とレオンの双剣2本が同時に当たるが、金属のぶつかり合う音が徐々に軽くなってきていた。そのかすれたような金属音は、すでにレオンの身体が限界を超えていることを感じさせる。


「……ったく。いい加減、とっとと寝てな!」


 鍔迫り合いの状態となっていたレオンの上から左拳でレオンの上体を叩き潰そうとする。


「っぐ!」


 拳が背中に入り、身体全身を地面にたたきつけられる。左手を首元に運び、コキッコキッと音を鳴らす。ようやく仕事が終わると少し安堵したような雰囲気で一瞬緩めるが、すぐにレオンを見ると、


「ようやく近くで止めれたよ。さあ、死ね」


 右手に持った大剣を振り上げると、一気に振り下ろす。

背中に入った打撃の痛みがひどくレオンの身体は動かない。


(ああ、ここまでなのか……)


男の強さに、自分の弱さに後悔し、歯を食いしばりながら目を閉じる。


「待たせた! レオン!」


 ファムが叫び、死期を悟り、食いしばっていたレオンは目を開ける。ファムの前には大きな魔法陣ができていた。


「『風射(ウインド・ショット)』」


 緑の円形魔法陣から出た強烈な風のまとまりが男を襲う。

切りかけていた動作を止め、大きく飛び跳ねることで男はファムの魔法を回避した。


「……今頃邪魔してくるのね。助太刀も遅すぎるんじゃない?」


 レオンは男が離れたのにまだ起き上がらない。


「あんたほどの男なんだ。俺のやっていたことを見逃してくれてたのに何を言ってんだ?」


 ファムの発言が何を示しているのか分からなかったが、何かをしていたような口降りをする。


「そんな()()()()()()()()()に長い時間かからないだろ。あんたらは、俺の強さにビビってただけじゃないの?」


 男は何をしていたのかファムから聞き出そうとするもあっさりと受け流される。


「気づいてないなんてありがたいね」


 ファムが嫌味を込めた御礼を言う。男は右手の人差し指でこめかみ付近を掻くと、ハァとため息をつき、大剣を握り直してファムに構える。すると、気づかぬうちに移動していたユークは太ももに隠していたクナイのような刃物を右手に数本持ち、男に投げつける。

身体を一回転させるとユークの攻撃を簡単に弾いた。

 ユークの武器は跳ね返されると地面に全てが刺さり、一本はレオンの頬をかすめた。するとようやくレオンの身体が動き始める。


「まったく、古代宝武具(こいつ)もなんでそんな弱いやつを()()()()()。ようやく見つけた()()。逃がしはしない」


 レオンの着ていた服は何とか服として維持しているようなほど身体中に切り傷をつけられている。2人の単体の勝負はもはや勝負とは言えずに、一方的な攻撃と防御に近く、誰が見ても一目瞭然だった。


「うるせーな」


 レオンは立ち上がりながら、敵を睨み付けて話す。


「俺だって選ばれたくなかったぜ。本来ならあんたが言った通りに俺は()()()()。ここにいるべきじゃ無い人間なんだ」


 全身が切り傷と打撲で身体は悲鳴をあげている。先ほどかすめた右頬からは血がたれている。


エクスカリバー(この箱)のせいで俺はここにいる。今、俺はエクスカリバー(こいつ)のせいで死にかけているんだぜ?」


 敵にこんなことを言いたくなかったが、事実は変えられない。レオンの心中は悔しい気持ちでいっぱいだったが、それでも話し続ける。


「あんたが思っているほど楽じゃねんだよ。エクスカリバー(こいつ)に選ばれてから、嫉み、妬み、皆の前で今以上にリンチされた時もあった。それでも、俺が選んだんじゃない。俺を選んでくれたエクスカリバー(こいつ)のためにも、俺は自らの命を軽んじるわけにはいかないのさ」


 レオンが今までの事を振り返りながら話す内容は決して煌びやかな良い思い出なんかでは無かった。それでも、彼は”今”を生きている。


「箱の”所有権”を捨てれば良い……」


 最初に見かけた時の男は、ただ気怠げな男。今の厳格な雰囲気にどうやったら変わるのであろうか。


「そう言おうと思ったが、お前の覚悟を聞いた以上。この言葉は失礼だな」


 その話を聞くと、レオンはふっと笑う。


「ありがとうよ。だけど、わざわざ気を遣わなくても良いぜ?」


 レオンは左足を引き、姿勢を低くし最高の攻撃を放つための準備を整える。目を閉じ、最初の一撃と同様に一瞬で距離を詰めると、互いに剣を振るう。


 今まで何度も剣と剣をぶつけ合い、負け続けていたレオン。それでも何度もレオンは振り続ける。


「いい加減、学びやがれ! おらっ!」


 気合いを入れたように大剣を振るう。今までの感覚では()()()双剣を砕いていたはずだった。 


 しかし、レオンの双剣が大剣を砕いた。

メルシグド史書 “1-05 砕けた刃”

を完読していただきありがとうございます!


次話予定投稿日:未定

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