1-01 第2任務の開始
アレン歴 1764年 商月 下弦日 降一の刻
周りを確認しながら茂みの中を移動する。
地面は人が通った形跡が無く、木々が生え、地面は雑草で土が見えない。自分たち以外は周囲の木々や雑草で見通しが悪い。その中をかき分けながら歩き進む。
劣悪な場所を半刻ほど歩き続けていた。1人の小柄な男が、周囲の人間のみに聞こえるような小さな声で
「ステイ!」
その声を聞き、全員が移動を止め、前屈みの状態で周りの警戒をする。声を発したのは灰色のローブを身にまとう左目が前髪に隠れた紫髪の男。その男の紫色の右目付近に浮遊している金縁の透明な円形。そこには様々な色がうっすら色づいている。部分的に際立つように赤色がはっきりと濃くなっている箇所が多数あった。赤色の数を数え終わると
「ここからは歩きながらではユークでも解除出来ないほど数が多いぞ」
フゥと息を吐き少し脱力した後、気合いを入れるように話を続ける。
「これからは、箱と併用して俺のスキルを使う。罠の種類や場所を正確に探し出す。ユークは俺の後ろについてきて、罠の解除を行なってくれ」
「「了解」」
小柄の男以外が声を揃えると、死角を無くすように警戒を続ける。ローブの男に続き、呼ばれた男が罠を解除するため、その集団から離れる。その後ろ姿は、周りの男達より比較的軽装をした少し細身の茶髪男性だった。
半刻ほど経過したとき、2人の男が集団に戻ってきた。
ユークが先ほどのグループに合流すると大柄の男に話し出す。
「アルバート。別ルート側にあった全ての罠を解除した」
自身の後ろを親指で刺しながら話し、正面を人差し指で刺すと、
「俺たち側は移動しながらでも間に合う量まで減らした。すぐに次の段階に移れる」
声をかけられた金色短髪、白色の鎧に身をまとう大柄の男、アルバート。アルバートはユークに向かってゆっくりと頷く。大柄の体格に似合った声質から想像できないような丁寧な口調で話し始める。
「半刻で罠の解除を終えたのですね。さすがですファミ、ユーク」
今まで警戒していた状態を解くよう所作をすると周りの男たちも警戒を緩める。
「アレス、カント、レオン、3人ともユークの話を聞きましたね」
問うように皆の顔を見る。全員が理解をしているのを確認し終えると、
「これからの作戦はαで行きます。2手に分かれて次の段階に移ります」
その言葉を聞くと、中でも緊張が隠しきれていない男2人。
アレスとレオンは固唾を飲んだ。
「アレス、レオン、2人ともそんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
アルバートが緊張している2人に向かって話し始める。
「私たちがいますから。ファミとユークのおかげで、私たちがすることは簡単になりましたからね」
アルバートが話し終えると穏やかな雰囲気でニコリと笑い2人の緊張を解く。
すると、周囲の男たち全員の空気も柔らかくなり、全員の緊張が一瞬にして消えた。
「アレス、カント、私たちはゲルマニウムの討伐に向かいます」
2人の重装備をした男は返事をするように浅く頷く。
「ファム、そちらは引き続き、罠の解除を行なってください。敵と遭遇した際には退避を中心に考えて動いてください」
とアルバートが普段より優しい口調ででファムに話す。
「分かっているアルバート。任務中心で動く」
ファムは一瞬、驚いたが、ニヤリと笑うと
「もう同じ失敗はしないから。安心してくれ」
とアルバートに笑い返して返事をした。
緊張を隠せていなかった重装備をした黒髪の男、アレス。
アレスは隣で緊張を隠せていなかった銀髪の男に話しかける。
「レオン、この任務が成功したら俺の方が評価が上がるからな。お前を抜かしてやる!終わったあとでお前の成果を聞かせろよな」
レオンがアレスを挑発するように話しかける。
「ああ。成果がない方が穏便に任務が終わったって証明できて助かるがな」
と少し嫌味を含ませるようにレオンはアレスに返答をした。
レオンは右手でアレスは左手で拳を作る。
2人の挨拶、アレスがレオンの拳にぶつけて、一時的な別れの挨拶をした。
アルバートの指示で分かれた六人の男たちは、三人ずつに分かれる。
それぞれ三人ずつの職業に合わせた陣形を整え終える。
「それでは、4班。第2任務αを開始します」
アルバートがそう言い放つと、それぞれ逆の方向に動き出した。
メルシグド史書 “1-01 第2任務の開始”
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次回は、“1-02 予想外の遭遇”です!