【オフレコ】のわめ荘✿開花戦線_参幕
【コントラクト・スプラウト】だめ知識
佐久馬聖ちゃんのお名前は淫魔からとってるよ
愛欲だからね、しかたないね
「……あのね、シズちゃん。いい? 聞いて? エッチが大好きなのと羞恥心が無いのとはね、全く別のお話なの。あたしはお外で露出するような趣味は無いし、そもそもあたしの『欲望』の根本は『エッチしたい』のほうだし、べつに慎みなく露出しても興奮するわけじゃないし……むしろ単純に、普っっ通ぅぅに恥ずかしいわけ。…………わかる?」
「…………はい」
「そりゃあたしだって半脱ぎエッチ好きだし、下だけ脱いで■■■でガツガツされるのもキライじゃないけど、でもあたしに露出と■■■■の趣味は無いの。おトイレでとか汚いのはダメなの。もっとこう、ムードある場所で■■■■と■■■■■■■するほうが好きだし、屋外露出なんかよりオモチャとかでじっくりねっとり■■■と■■■同時に■■■■■して■■■されたほうが嬉しいし、やっぱ落ち着いてエッチできる雰囲気って大事だと思うの。そうでしょ?」
「…………はい」
「つまりはね、あたしにだってシチュエーションに好き嫌いはあるし……っていうかそもそも、おトイレ終わったと思ったらいきなり『ドボン』って沈んだんだからね? 真っ暗になったと思ったらいきなり山ん中よ? めっっちゃビックリしたんだからね? 【非常呼集】するときは前もって教えて、って前あたし言ったよね?」
「…………はい」
「シズちゃんが積極的に動いてくれてるのは、あたしだって嬉しいよ? 前よりもお喋りできる機会増えたし、この前もわかめちゃんのクッキー貰ってきてくれたし……確かに『次はあたしも行きたい』とは言ったし、願いを叶えてくれたことは嬉しいよ? ……でもさ、だって推しと会うんだよ? こう、色々と準備とか……心構えとか、させてくれても良くない!? おトイレ終わって直後ってさすがにひどくない!? あたしこれでも乙女なんだけど! 聞いてるシズちゃん!?」
「…………はい」
「良くも悪くも効率的に、効率を突き詰めようとするのが、シズちゃんの良いとこだけど悪いとこでもあるの。……もうちょっと、こう…………女心ってものを、お勉強してみてほしいかな、って。……言っとくけどシズちゃん、自分のこともちゃんと自己分析しなきゃだからね? せっかくこんな可愛いのに……自分磨きしなさいって」
「……持ち帰り……検討させて頂きたく」
「………………はぁーー。……お返しに今度ミニチャイナ着せるかんね」
「ぇええ…………」
…………うん、まぁ……今回のは確かにシズちゃんが悪いと思う。
ひととおり思いの丈をワッと吐き出し終えて、仕返し宣言もキメて、とりあえずは溜飲を下げてくれたのだろうか。
……まだ言い足りなさそうだけど、おれたちの手前ガマンしてくれたんだろうな。うう、本当いい子だ。
佐久馬聖ちゃん……シズちゃん同様『魔王の使徒』として、『愛欲』に根差した権能を与えられた美少女。
歳の頃は、見た感じは十代前半。霧衣ちゃんと同じくらいだろうか。権能由来の淫靡さと社交性の高さに加えて、面倒見が良くお世話したがりで家庭的な面も持ち合わせる……たいへん、大変魅力的な女の子だ。
例の『魔王』絡みの騒動の末、おれたちと交友を深めるに至った彼女たち。現在は某配信機材レンタル会社の社長秘書……の一人として、その腕をふるっている。
……そんな彼女であったが、おトイレから出たところを『ドボン』されたとあっては、さすがにプンプンでおこの模様。
はー…………かわいいが。
「……ごめんね、わかめちゃん。……と、くちらちゃん。ホンット見苦しいところを……」
「いえまあ、その……仕方ないといいますか。いきなり呼び寄せられちゃったみたいですし」
「まぁ……ね。逆に会社で良かったわ、おウチだったら裸足よ裸足。…………でもま、なんとなく事情はわかったわ。この糸に沿って遊歩道作ればいいのよね?」
「そりゃそうなんですけど……でもそんな、お客様にお手を煩わせるのも申し訳ないっていうか、わたしが【魔法】でチョチョイ…………とまではいかなくても、えいやーとりゃーんびゃーぽぬーってすれば」
「それこそ、心配しないでよわかめちゃん。あたしを誰だと思ってるの?」
「……えっ? あの、すてら、ちゃん?」
元『魔王』の従僕、第二の使徒……【愛欲】のリヴィディネム。
その力の根源は、愛に拠る全ての行為。
して、その権能とは……生物非生物問わず、周囲を思うが儘に『従わせる』もの。
「さぁ、て……【総員傾聴】」
「ぉおお……!?」「ぴゃわーー!?」
「あたしだって……好きなコに、ちょっとくらいイイトコ見せたいんだから! 【道を拓け】【頭を垂れよ】【分を弁え】【門出を飾れ】……【実行】!!」
「「わああああああ!?」」
聖ちゃんが号令を下すや否や……おれたちの目の前で、それはそれは不思議なことが起こった。
元気いっぱい伸び、朽羅ちゃんにビンタ食らわせた藪は、『スンマセン自分ら身の程を弁えます。いえホント大人しくしてますんで』と言わんばかりに控えめに引っ込み。
ふかふかの腐葉土と蔓延る木の根でひたすら歩きにくかった足元は、『ささ、どうぞこちらへ。お足元お気を付けを』と言わんばかりにピシッと整い引き締まり。
そこかしこにゴロゴロと転がり、土や苔であちこち汚れていた石や岩は、『身を粉にして働くンは得意ですんで』とばかりに手頃なサイズに砕けて敷かれ。
縦横無尽に根を伸ばしていた木々は、『お待ちしておりました御客様。ささ、どうぞこちらへ』との声が聞こえそうな程あからさまに、ざわざわと捩って道を譲り。
土が騒ぎ、木々が揺れ。
森が踊り、山が蠢き。
それはそれはなんというか……スーパーでカリフラでエクスみあるドーシャスな感じあふれるメルヘンチックな光景が、しかし事実として目の前で繰り広げられているわけで。
「…………ま、ザッとこんなもんじゃない? 細かいトコはほら、『おにわ部』ちゃんがいるでしょ? ここから足したり引いたりしてくれれば」
「ん…………良いと思う。歩きやすいし、見通しもいい。……ありがとね、すてら」
「い、いやいやいやいや……!! お礼言うべきはわたしですってば!! ……いや、ぇえ、ちょっ、…………ぇええ……すっご。……いえ、お世辞抜きにすごいし……助かりました。ホントありがとうございます、聖ちゃん」
「ふふっ。……恩人で、推しである箱のみんなのためだもの。何だってするわよ、あたしは」
「…………すてらちゃ「いま『何でも』って言いましたかァーー!!!」う、うわーー!? えっち妖精だァーー!!」
でたなエッチフェアリーめ!!
この子がひとり戻ってきたということは、当初の目的通り【座標指針】を打ち終えてくれたということなのだろう。
エッチフェアリーはちょっとエッチなのが困りものだけど、それでもやるべきことをすっぽかしてエッチに走るほどエッチではない(ハズな)のだ。
仕事ていねい有言実行、誇り高い【天幻】の万能アシスタント。
そこんところは、おれたちも全幅の信頼を置いているんだけれど。
……ただ、まぁ、もう少しこう、なんというか。慎みというか。
「めっちゃスゴい魔力の流れにビックリして飛んできてみたらステラちゃんがバッチコイエッチ宣言してたんですけど!! ええそんな! いいんですか!?」
「よかねぇよ!! 空気読めこのスケベフェアリー!! 今聖ちゃんがめっちゃいいこと言う雰囲気だったのに!!」
「ステラちゃんとえっちでイイコトする雰囲気ですって!?」
「お客様の中に耳と脳のお医者様は居られませんか!!!」
「…………ホントにエッチな妖精さんなのね、ラニちゃんは」
「ごめんなさいホントマジで。ラニちゃんには後で入念に『はぶらし』しときますんで」
「ヒュっ」
当初の予定とは、ほんのちょっとだけ異なる展開だったけど……とにかくこれで、目的地までの道はご覧のようにキレイに拓けた。
足を取られる心配も、藪や枝にビンタされる心配も、ヘビや虫に不意打ちされる心配もない。
とても歩きやすく心地よい、森の中の素敵な遊歩道である。
後はこの道をまっすぐ進み、先行した天繰さんを追っかけ、目的地である桜の(可能性が高い)木まで辿り着き、現地調査を始めるだけだ。
さてさて此度の催し、真のゴールは楽しい楽しい『お花見』でございますれば。
この調子でその最終目的まで、一気にたどり着いてやろうじゃん!
※ しつこいですが明日も続きます




