【緊急特別企画】どきどき★なんばーわんばにーさん決定戦【ばにーさんの日】_その2
できたてほやほやなので投稿します
まにあったよほめて(しっぽぶんぶ
ではここで改めまして、『どきどき★なんばーわんばにーさん決定戦!』詳細の方をご説明させていただきましょう。
本企画、ものすごーく簡単にご説明しますと、わたくし木乃若芽ちゃんと朽羅ちゃん一対一による『障害物競走』でございます。
走者二名とも可愛らしいばにーさん装束に身を包み、視聴者さんと審査員にその可愛らしさとばにーさんらしさをアピールしながら競技に臨む形となります。健全です。
さてさて、肝心の『障害物競走』部分ですが……そもそも『ばにーさん』とは一体どういうものでしょうか。
先にお断りしておきますが、えっちなことするときの衣装ではありません。わが『のわめでぃあ』は健全なので、断じてえっちなことは関係ありません。
おじいちゃんおばあちゃんからお孫さんまで、ご家族みんなで楽しめる『のわめでぃあ』です。そこんとこ宜しくお願いします。いいね。
さてさて、話を元に戻しまして、ばにーさんの本来のお仕事は何ぞやと申しますとですね……ずばり、給仕さんなわけでございます。
主なところでは飲食店なんかの給仕係、まぁ他にもカジノのディーラーだったり手品師のアシスタントさんだったりもするのですが、今回は『給仕さん』として定義しましてですね、そこんところの能力を競おうという催しでございます!
ルールは至って簡単。ばにーさん姿の走者ふたりが円形トレンチ(※よくばにーさんがカクテル載せてそうなお盆)を使い、いかに多くのドリンク(に見立てた空き缶)を運べるかで勝負する形になります。
スタート地点にはご覧の通り、大量のドリンク(に見立てた空き缶)が並んでおり、これらを倒さずにゴール地点のテーブルへ運べればポイントになります。
注意すべきは、二点。
ひとつはドリンク(に見立てた空き缶)を倒したり、落としたりしたら、その場で拾ってトレンチに立て直さなければ動けない点。
そしてもうひとつは……トレンチに並べられるドリンクは三点まで、それ以上を運ぶ場合は上に積まなければならないという点。
「つまりはバランス感覚と、判断力……少数を載せてたくさん往復するのか、それともたくさん積んで一気に稼ぐのか。そのあたりの駆け引きが見モノってとこだね! いやーどう思いますか、解説のキリちゃん!」
「は、はいっ! お肩が出てしまっておりますゆえ、お身体のほうが冷えてしまわぬよう……かっ、風邪などお召になられませぬよう、気をつけていただきたい、ですっ!」
「かわいい…………うぅ、かわいい……」
ほんとそれな!!
さてさて、おれと朽羅ちゃんが半ば無理矢理着せられたばにーさん装束ですが、例によって代名詞ともいえるエナメル地のワンピース(上はぱかぱか、下は鋭角のやつ)に肌色の透けがセクシーな黒のタイツ、上腕から先をドレスアップするスリーブと、襟元をキチッと飾るカラーとネクタイのフルセットだ。もちろん頭上にはうさちゃんの耳を模したヘアバンドもついている。
ぱかぱか鋭角ワンピースのみの軽装型ばにーさんと比べ、主に手足の肌色露出は控えめだが、しかしそれでも霧衣ちゃんご指摘の通り肩と腋は丸出しだ。
白熱して汗をかいて体を冷やしてしまわないように、年長者たるおれが気を配らなければならないだろう。
なお、当然のように足元はエナメルのピンヒール(※子ども用サイズ・マジで何処から調達して来た!?)のため、いつも以上にバランスを取りづらい。
これは勝負の行方も荒れそうだ。もちろん配信のほうも荒れそうだ。
……というわけで、説明と心の準備はこんなもんで大丈夫だろう。
死んだ魚のような目で全てを諦め受け入れたおれとは違い……まさか自分も『破廉恥な装束』を着る羽目になるとは思っていなかったのだろう、目に見えて羞恥に染まる朽羅ちゃんの対比が嗜虐心をそそる。もとい、可愛らしい。
スタート位置の大量の空き缶も、ゴール位置の丸テーブルも、審判である棗ちゃんも、全部が全部準備万端だ。
おれは確かに、なんばーわんばにーさんの座にこだわりは無い。……が。
べつに、ぜんぶ運んでしまっても……圧倒的大差で局長の実力を見せつけてしまっても、構わんのだろう?
「それではァっ! これより第一回『どきどき★なんばーわんばにーさん決定戦!』を始めます! それでは両者……位置につドンッ!!」
「「ほあーーーー!?」」
「はわわわわうわうわう」
やってくれたなあの妖精!! 覚えてろよちくしょうマジ!!
そんなこんなで、いきなり始まった決勝戦。とにもかくにもトレンチに空き缶を積まないことには始まらない。
しかしながらそこはエルフ、吟遊詩人適性さえも備える狩猟民族の本領発揮とばかりに、ずば抜けた『器用さ』を発揮。
左手の指を伸ばしてトレンチをバランスよく保持し、いともたやすく空き缶三つをヒョヒョヒョイと載せてみせる。どや。
「ひゅ、っ、これ、ふるえ……ああーーー!!」
一方こちら、どんがらがっしゃーんと転がる朽羅ちゃんのトレンチである。
慌てて再チャレンジしてみるものの、結果は先程と同じ大クラッシュ。その度に『ああー!』とか『やあー!』とか『いんー!』とか悲鳴が上がるので、申し訳ないけど吹き出しそうになる。
どうやら朽羅ちゃん、神々見に居たときから……その、なんというか、奔放だったようで、恐らくだけど給仕とかやったこと無いのだろう。
左手はフリスビーのようにトレンチを保持してたし、へっぴり腰で空き缶を運んでみたり……かと思えば、今度はお茶くみ人形のように両手で『ぎゅっ』とトレンチを構えて微動だに出来なくなっていたり。
……両手でトレンチを突き出して、更にお尻を突き出して固まってプルプルしてるんだから……なんかこう、じわじわくるよね。
本当なんていうか、よくもまぁあんな大言壮語できたなおまえな。
「……もう逆立ちしても負けないくらい差ぁ開いたと思うんだ」
「ゼロ本だもんねぇクチラちゃん。……いや、さすがのボクも……ここまで口だけだとは思わなかったよ」
「なるほど口だけ。クチラちゃんだけに?」
「おだまり! ノワのおばか!」
「あっ、ひどい! そこまで言う!?」
「ご、ごしゅじ……ふぐゥゥウゥウゥ……!」
朽羅ちゃんがどうにかこうにか一往復する間に、器用なエルフことおれは既に三往復は済ませている。あまり無理をせず、しかしそれでも一往復につき三個ずつは運んでいるので、既にポイントは九ポイント……はい、今ので十二ポイントですね。
一方の朽羅ちゃんは二ポイントなので……えーっと、トリプルどころじゃないな。シックススコアとでも言えばいいのか?
まぁ、とにかく圧勝なわけだよ。局長の。
得点差を認識してしまったときの朽羅ちゃんの顔がとても可哀想なことになってしまっていたので、多分もう戦意くじけちゃったんだろうな。かわいいね。
「…………えー、結果発表…………する?」
「い、一応……企画だし」
「ぐすっ……えぐ、っ、ぐしゅ」
「……えー、二十二ポイントと四ポイントで……局長、ノワの勝ち!」
「わ、わぁい」
「ふぇぇぇぇぇえん!!!」
『かわいそう』『かわいそう……』『あーあ』『かわいい』『勝負にすらならなかったか……』『くちらちゃんかわいそう』『脱ぎたての服貰っていきますね』『【¥1,500】これでプリンでも食べな』『よくあんな自信満々に勝負挑んだな』『かわいそうかわいい』『ウサガキの泣き顔たすかる』『なぜ勝てると思ったのか』
「だ、だってえ……!!」
あまりにもあんまりな結果と、視聴者さんたちからの当然ともいえるツッコミの嵐に、敗者であるウサミミロリウサギの朽羅ちゃんが口を開く。
ナマイキですぐ調子に乗っちゃう困った子だけど、やはり見た目『は』とびっきりの美少女なだけに、こうして顔を赤らめて涙目でいられると……なかなかにクるものがあるんだよな。
「だって! 小生はただごしゅじんどのに『ばにーさん』を着せたかっただけに御座いますれば!」
「まって」
「普段はガードが堅いごしゅじんどのの破廉恥なる姿を堪能したかっただけに御座いますれば! 小生までもが破廉恥されるなどと夢にも思わず……!」
「おい」
「だいたい! 小生は生まれたときから『かわいいうさぎちゃん』であると常々申して居りましょうに! だというのに一体何ゆえ! なにゆえ更にうさみみを纏う必要が在りましょうや!? これ最早うさちゃんのみみが四本で御座いますれば! 稚児にも可怪しいということが判りましょうに!!」
犯行動機である『局長の破廉恥姿を堪能したかっただけ』という事実が告げられ、一部てのひらを返した視聴者さんからの喝采と慰めの言葉を掛けられる朽羅ちゃん。
……きみがそこまで若芽ちゃんの破廉恥を欲してくれてるのは嬉しいような悲しいような複雑な心境ですが、それはそうとてこの子にはお仕置きが必要だとおもう。よって泣かす。
「詭弁だよ朽羅ちゃん。うさみみが四本だから何だっていうのさ。牛さんだって胃袋四つあるでしょう? ねこさんとかうさぎさんだって乳首八つくらいあるでしょ」
「ち、ちくび……ッ!? そ、そそんそん、そんな…………え、えっちに御座いまする!! いけませぬごしゅじんどの! 小生も棗どのも、まだ童女に御座いますれば! そういうのはまだ早」
「朽羅ちゃんたちのじゃないから! ……まぁ、例えがちょっとセンシティブだったかもしれないけど……つまりうさみみが四つあろうとおかしなことじゃないし、朽羅ちゃんがばにーさんの格好してても何もおかしくないんだよ」
「ふ、グゥ……っ!?」
「おぉ、これが『グゥの音』ってやつか」
「ぐーの、ね? ……朽羅様、おなかがすいたので御座いましょうか?」
「精神的にはとってもキてるだろうから……明日のごはんは朽羅ちゃんの好きなのにしてあげてね」
「はいっ! 霧衣めにお任せ下さいませっ!」
「きりえどのぉ! ……ぐしゅっ」
『尊ぇ……』『【¥4,500】これでいいお肉でも買いな』『おねえちゃんママ……』『尊ぇ』『きりえおねえちゃ……』『おねえちゃやさしい、すき』『おぎゃばぶ』『やっぱ尊ぇよなこの姉妹』『やだぁ!小生もおねえちゃんの子どもになるゥ!』
こうして、無事に(?)大会は幕を閉じ……記念すべき初代『どきどき★なんばーわんばにーさん』の栄冠は、局長の木乃若芽ちゃんが手にすることとなった。
視聴者さんたちもおれのかわいいばにーさん姿を堪能できて大満足、朽羅ちゃんも戦意を喪失して大満足(?)、ラニちゃんも謎のドヤ顔で大満足している模様。
……では、あるのだが。
「……いや、さすがに時間余りすぎですので……しょうがないですね、ボドゲでもやりましょうか。棗ちゃん、おいで」
「む! わがはいの出番であるか!」
「ははは……見せ場全く無かったもんね。審判どころじゃ無かったし」
「うむ、まったく情けない破廉恥兎よ」
「ふひィん……!」
広々リビングスペースからテーブルのあるダイニングスペースへと移動して、カメラ等の配置と入力信号の調整を済ませて、うさぎさんモチーフのボードゲームも用意して。
……せっかく視聴者さんが喜んでくれている『ばにーさん』姿を、もう少し堪能してもらえるように。
「えー、それでは……エキシビションマッチ、ボードゲーム大会を始めます!!」
「イェーーーイ!!」
「「い、いえーい!」」
『ラニちゃんgj!!!』『さすラニ』『やってくれると信じてた!!!』『もうちょい上からのアングルでどうぞ』『【¥2,881】見え……ッ!!』『ちくしょう!局長がもっとボインだったら!!』『セクシーバニーさんの胸元ライブはここですか』『ラニちゃんありがとう』『↑は?ストンだからいいんだろうが!』『わかってねぇな!ペタンだからこその絶景だろうがよ』『まな板』『局長がボインとか想像できない』『局長かわいそう』
「おいモリアキ映像止めろォ!!!」
「わー待って! 落ち着いてノワ!」
「おだまり主犯格!! ……っ、止めないで棗ちゃん! ちくしょう誰がまな板エルフだこのやろう! おれはこのスケベフェアリーを稲のように植えてやるんだ! やってやるんだ今すぐ! 秋になったらこのドスケベの服を『ベッ』て刈り取ってやるから! 今すぐ止めろモリアキ!」
「「ヒィィッ!?」」
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ボードゲーム大会が無事に再開したのは……それからおよそ、十分以上は後のことだった。
シンプルなゲームなだけに、どちらかというと舌戦のほうが『撮れ高』高かったような気もするが……まぁ、視聴者のみなさんが喜んでくれたのなら良しとしよう。まな板は許さないけど。
こうして、無事に(?)すべての演目を終えて『ヴィーヤ!』が終わった、深夜〇時。
おれは霧衣ちゃんと棗ちゃん、そして朽羅ちゃん(ばにーさん)に慰められながら……近々ラニちゃんに反省を促すための企画を敢行することを、ひっそりと心に決めたのだった。
また……顔を羞恥でいっぱいに染めて(※憤怒です)泣きじゃくりながら(※怒声です)声高に主張していたかわいいロリエルフの姿を見て、なにか思うことがあったのだろうか。
視聴者さんの間で、ひそかに『まな板』が禁句になっていたことをおれが知ったのは……けっこう後のことだった。
※ ラニちゃんおしおき編の配信予定はありません




