【大晦日】もうすぐおめでたいからおめでたい記念配信するよ【新年秒読み】 深夜の部
「いやーいやー…………こうして無事に年も明けまして。いやー本当おめでたいことです。もう本当にですね、視聴者の皆さんも本当ありがとうございます。今年もわれわれ『のわめでぃあ』と、そして実在仮想配信者業界をですね、どうぞなにとぞ宜しくお願い致します」
「「よろしくおねがいしまーーす」」
「えー、それでは…………乾杯!」
「「かんぱーーい!!」」
「…………というわけで! これ以降はお酒入るので、おもしろいトークとかあんまり期待しないでね! 願望は出るだろうけど確定情報はたぶん出ないよ! たとえ旅行いきたいとか具体的な地名とか出てきたとしても早とちりして引っ越しとか土地購入とかしないでね!!」
「めっちゃ予防線張るっすね……」
……というわけで、夜の部である。
さまざまな予想外のお客様と想像以上のはっちゃけっぷりに、どったんばったん大騒ぎだった『凸待ち』コーナー。
今年の活動と人気動画を振り返りつつ、また今後の活動に対する意見交換を行った『行くのわ来るのわ』コーナー。
そして……㈱マテリアライズアクター社という強力な後ろ楯を得たことで実現した、一般アーティストの方々の話題曲や超人気アニメソング等々をも多分に含んだ『カウントダウンおうたライブ』のコーナー。
それら見所いっぱいたのしいいっぱな長丁場と、年越しの瞬間のカウントダウンと、みんなそろっての新年のご挨拶と中締めを経て……現在時刻は、深夜一時。
霧衣ちゃん以下幼年組は、いい加減夜も遅いので一足先に『おやすみなさい』してもらいまして……現在はおれとラニとモリアキの三人(※内部的な通称『チームおじさん』)でお送りしている座談会、その名も『腹を割って話そう』のコーナーが始まったところである。
……いや、おれももっと早く幼年組をお休みさせるべきなんじゃないかとは思ったよ。いくら本当の小中学生じゃないとはいえ、あの子たちの見た目はどうみてもJSJCだもの。夜十時以降に働かせるのはコンプライアンス的にもよろしくないだろうし。
だけどね……三人が三人、泣きそうな顔で渋るんだもん。『まだいっしょにいたい』って。そんなんおれ抵抗できるわけないじゃんおじさん何だって言うこと聞いちゃうよ負けるに決まっとるやろがい(唐突な半ギレ)。
……まぁ、もし労基署的なところから何か言われたとしても、おれたちには日本屈指の実力者であらせられる神様(とそちらに連なる強力な引退神使)および経済界に多大なる影響力を持つ経営の神(と彼の可愛い秘書三人)がついているので、もはやこわいものなしだ。
わが『のわめでぃあ』は合法で健全です。なんだったら出るとこ出るぞおら。おなかとか出しちゃうぞおら。
「まーーた悪い顔して。今度は何を企んでるんでしょうね、このいやらしエルフは」
「い、いやらしエルフって!? いやらしいのは初芽ちゃんの領分でしょう! というかえっち妖精さんにだけは言われたか無いよ!」
「どもどもー褐色いやらしエルフの初芽ちゃんっすよー。イェーイみんな飲んでるー?」
「あっ、ハツメちゃんのソレなあに? おいしそうなにおい」
「ファジーネーブルっすよ。桃のリキュールをオレンジジュースで割ったヤツなんで、もう実質ジュースっす」
「えーいーなソレ! ちょっとひと口もらっていい?」
「いいっすよ~。ラニちゃんのひと口とかタカが知れてますんで」
「いぇーいハツメちゃん好きー」
「わたしを放置してイチャつかないでくれませんか!! いやらし呼ばわりしておいて放置とかいけず過ぎやしませんか!! わたしもなかまにいれて!! イチャイチャさせて!!」
「わたしのナカまでイれて!?」
「くちゅくちゅさせて!?」
「はいダメー! ダメですーブブーですー! わが『のわめでぃあ』は健全って言ってるでしょこの子たちはもー! お父さんそんなふしだらな真似許しませんよ!?」
「言動が女児なのによりにもよって自称『お父さん』は草」
「それな」
「きぃぃぃぃぃぃ!!」
お酒解禁プラス深夜テンションということで、ついつい色々とタガが弛んで見えちゃいけない部分が見えちゃいそうになっちゃってますが……そこはほら、小さなお子さまも安心して見れる『のわめでぃあ』ですので、局長であるわたしがビシッとNOを突きつけてあげなきゃいけないわけです。
こうして頼れる局長わかめちゃんのおかげもあって、健全なチームおじさん(※あくまで内部的な通称です)の酒盛り配信は大盛り上がりのコメント欄とともに順調に進んでいくわけです。さすがおれ。
「女児わかめちゃんは何飲んでるんすか? てかそもそもお酒飲めます? お酒はハタチになってからっすよ?」
「女児じゃないですし!! オトナなんですけど!? ふくし……じゃなくて、ぱそこんの大学通ってたんですけど!!」
「ねぇノワ、もしかしてそれもオレンジのお酒? ハツメちゃんのとはまた違うおいしそうなにおい」
「でしょーラニちゃんお目が高い! なんとこれ、沖縄の視聴者さんから頂きました地域限定のチューハイなんですよこれ! エ○ダーオレンジ味!」
「…………あー、ヤイマちゃんとミャークちゃんが推してた沖縄のハンバーガー屋さんですっけ、エン◯ー」
「そうーおきなわー! 行ってみたいねぇー! えへへ……青い海と白い砂浜……シャコとガンガゼとカツオノエボシ……」
「危険生物は充分に気を付けて貰うとして……良いっすねぇ、旅ロケ。今年はもっと遠くに行ってみたいっすよね、『普段なかなかお目にかかれないであろう、ちょっとリッチな非日常をお届けします』的な」
「……なるほど? すっごく遠くなわけだ。それはまたハイベースくんが大活躍しちゃうやつだね!!」
「いや、さすがに無理」「っすね」
「ヌェェェ!?」
まぁさすがにね、たぐいまれなる居住性と走破性を兼ね備えたハイベースくんでもですね、いくらなんでも海は渡れないわけですよ。
これまでは㈱三納オートサービスさんからのご要望を鑑みて、旅といえば車旅が多かったわけだけども……おれたちの活動も二年目に突入し、また新しい年にもなったので、そりゃ新たなことにも挑戦してみたくなるだろう。
……いや、もちろんハイベースくんでの旅は続けていきますけど。そういう契約ですし。
それに……せっかくラニちゃんもこの世界に染まってきてくれているのだ。今更だが、いろんな公共交通機関を体験させてあげても良いかもしれない。
新幹線とか……それこそ、飛行機とか。きっとおくちあんぐりで驚いてくれるに違いない。
「でもっすよ? せっかく飛行機とか沖縄とか考えるなら……ラニちゃんは勿論っすけど、プリミシア博士も巻き込んであげたいっすよね」
「…………そっか、行ったことないんですよね……沖縄」
「まぁオレもなんすけどね。……多忙かつ謎が多い方っすけど、意外とノリが軽いみたいですし。博士の理論の……『魔法』の先行モニターであるわかめちゃんの頼みなら、聞いてくれるんじゃないっすか?」
「うーーん……でもめっちゃ忙しそうでしたし…………先日の一周年配信のときも、なんだか『特例で休暇貰えた』みたいなこと言ってましたし」
「ぇええ…………どんなブラック環境で働かされてるんすか博士……」
「なんか……色々と平行して進めてるみたいで……全然人手が足りてないんだとか」
「…………前人未踏の新技術っすからねぇ……魔法」
「『魔法』ねぇー…………」
きょう現在において実現に漕ぎ着け、世間一般の皆様に対して周知されている『魔法』は、あらかじめ強く念じて思い描いておいた姿に容姿を投影する魔法【変身】、ならびに演出用の投影魔法のみ……ということになっている。
つまりはこれからプリミシア博士の主導のもと、様々な『魔法』を研究・開発していくところであり、早くも各分野から期待と疑惑の声が寄せられているのだとか。
……まぁ『さもありなん』と言ったところだろうか。何てったって『魔法』である。
ゲームやライトノベルやコミックが広く普及したこの国において、そのワードの示すものへの注目が低いわけがないのだ。
そんな中で、大衆向けとなる『魔法』の第二弾として取りかかっているものこそ、ずばり【治癒】に類する回復魔法らしい。
発言力と資産と社会的地位を得た方々は、やはりえてして健康や寿命に関する関心が高いのだろう。というかそれこそ『不老不死の魔法は無いのか』『若返りの魔法は無いのか』なんていう歯に衣着せぬ要望もあったらしく……プリミシア博士が苦笑いしていたのは記憶に新しい。
待ち望む声が数多な『魔法』の開発と、現代における公害である『特定害獣』への対策……そして、調査人員を『異世界』へと向かわせるための『世界間調査坑』の構築。
多忙きわまりないプリミシア博士のタスクは、てっぺんさえ見えないほどに山積みなのである。
巡りめぐって自分たちの世界の復興に繋がるのだからと、労基も真っ青な勤務スケジュールで働いてくれているらしいが……さすがに息抜きは必要だろう。
適当なところで連れ出さないと、不眠不休でぶっ倒れるまで働き続けてしまいかねない。強行手段も視野に入れておいたほうが良いかもしれないな。
われわれ『のわめでぃあ』は健全でホワイトな優良チームですので。プリミシア博士もわれわれの関係者……もとい、提携先である以上、いずれはホワイトに染めてやらねばならないのだ。
「…………という感じで。モノは試しでやってみても良いんじゃないっすかね? 文章の雛形はオレ作るんで」
「へぇぇー! そんなことできるんだ! 楽しそう楽しそう! ……ねーえ、ノワいいよね? やってみようよ!」
「うん、そうですね。……ん?」
「「ヤッター!!」」
「………………んん!?」
「んじゃ、こんな感じで。大田さんに案件依頼出しますね。非日常的な気分を味わえる施設のプロモーション案件、できればリゾートホテル的な感じで。美少女エルフの水着姿が拝めますよって。はいメール送ったー」
「ホァーーーー!!?」
「さーびすが増えるよ! やったねノワちゃん!」
「まァーーーー!!?」
おれたちの活動も二年目に突入し、また新しい年にもなったので……そりゃあ、新たなことにも挑戦してみたくなるだろう。
われわれ実在仮想配信者の可能性を拡げるためにも、おれが先陣きってやってみるべきなのかもしれない。
……まぁ、そういうことにしておこう。
しかし……しかしですよ。わが『のわめでぃあ』は小さなお子さん含むご家族みんなで楽しめる安全健全な放送局ですので!
その牙城だけは、最後の一線だけは、ぜったいに崩すわけにはいきませんからね!!
こらそこ、残念そうな顔しない!!
おきなわ編の予定は無いです!
期待しないでください!!




