【大晦日】もうすぐおめでたいからおめでたい記念配信するよ【新年秒読み】 その②
『んじゃーそゆことで、また飲みいこうズェ! わかめちゃんもみんなも頑張ってなー!』
「はいっ是非! 村崎うにさん、ありがとうございました!」
つい先程までお話ししていた……あの勘違いされそうな言動で盛大に場を荒らし回ったミルさんとは異なり、非常にオーソドックスにお祝いと労いの言葉を掛けてくれた村崎うにさん。
ダーツの刺さった話題『動物に生まれ変わるなら何?(答:猫)』『推しバーガーチェーンと推しメニュー(答:バー◯ンのスパイシーワ◯パー)』も当たり障り無く、それでいて視聴者さんを楽しませながら、見事な手際で消化していってくれた。
ドあたま一発目の騒動を受けて警戒していたおれは、ほっと胸を撫で下ろした形になる。うにさんすき。
最初の頃はどちらかというと、うにさんのほうがグイグイ来る印象だったのだが……いやはや、積極性の中にも確かな『空気読む力』を秘めた、さすがの一流配信者さんでしたわ。
おれは鳴り響く着信音から目を背けながら、ホワイトボードに『②、村崎うにさん』と記入、振り返って腹をくくる。
『やったっ!! ……んんっ。……こんばんわ、『のわめでぃあ』視聴者の皆さん。酉の刻の長い待機画面を抜けると、そこは御伽の国だった。『にじキャラ』Ⅳ期の文学少女、『文郷ういか』ですっ!』
「!! ういか様っ! こんばんわにございまする!」
「こんばんわ、ういかさん! 来てくださってありがとうございます!」
『いえいえー! こちらこそお招き有り難うございます! そしてわかめちゃん、ならびに『のわめでぃあ』の皆さん。ゴールドランクおめでとうございます!』
「あ……ありがとうございます!」
おぉ、なんて良心的かつ常識的なお方だろうか。うにさんに引き続き、どうやら今回も平和におしゃべりが出来そうだ。
通話が繋がったのは……自他共に認める和服少女好きにして、自称・霧衣ちゃんの大ファン、文郷ういかさん。
おれたちとの絡みは、中華屋さんでご一緒したのと大規模キャンプの二回だけだろうか。……まぁ、度々アプローチを受けてはいたのだけど、対外的にはあまり手広く活動できてなかったからな。絡みたいと思ってたし、また思ってもらってたみたいだけど、残念なことにろくに身動きがとれなかったのだ。
……和服少女コラボしたい、って言ってたもんなぁ。ちょっと悪いことをしてしまった。
『わかめちゃん、いろいろと忙しそうにしてたので……あんまり、っていうか、わたしの方から話しかけることって、なかなかできなくって』
「うグゥっ、……そ、その件に関しましては……ごめんなさい、せっかく『コラボしたい!』って言ってくださったのに」
『あっ、ううん! ちがくて! 責めてるんじゃなくって! ……わかめちゃん、忙しいのに……ちゃんと覚えててくれたんだね。お酒の席での雑談レベルだったのに』
「そ……ッ、……そりゃあ、あこがれの方々ですし…………霧衣ちゃんにも、とてもよくして下さってましたので」
「はいっ! わたくし、たくさん『なでなで』して頂きましたっ!」
『んふふふ。気持ち良さそうに喉鳴らしてたもんねぇ……今思い出してもぽかぽかしちゃう』
「アァーー見たかったァーー!!」
「わ、わぅぅぅ」
古式ゆかしくもハイカラな、可愛らしい大正浪漫風の衣装もさることながら、その魂の趣味特技もなかなか雅で趣がある彼女。
かるたや花札なんかも得意らしく、うちの霧衣ちゃんと一緒に遊んでみたいと、度々口にしてくれていたのだ。
「……うーん……もうすぐお正月ですもんねぇ。かるたとか、百人一首コラボとか、旬といえば旬ですもんね」
『じゃあさじゃあさ! やろう! 百人一首コラボ! 明日やろう!』
「明日ァ!? ちょっ……正気ですか!? 元旦ですよ!? 【Sea's】ですごろくコラボやるんじゃないんですか!?」
『……あら、よくご存じで。でも大丈夫、すごろくは夜九時からだから。だから……夕方五時くらいから、どお? わたしのほうでも面子集め頑張るし!』
「うーん…………霧衣ちゃんが、いいなら……」
「は、はいっ! わたくし、やってみとうございまする!」
『やったー! んふふ、霧衣ちゃんの可愛さがあれば参加者の頭数とか一瞬よ! あー楽しみ! ……わかめちゃん忙しいだろうし、こっちである程度詰めとくね。後で詳細チャット送るから! じゃあね!』
「ま、まって! ういかさんお題! お題ひとつも消化してな………………マジかぁー」
「あわわわわうわうわう」
あぁ無情、特製ルーレットによるお題トークを消化する暇もなく、和服美少女好き文学少女配信者ういかさんは颯爽と去っていった。
……まぁ、突発百人一首コラボの根回しに行ってくれたんだろうな。行動力よ。
とはいえ、われらがジャパニーズトラディショナルお嬢様であらせられる霧衣ちゃんのスーパーかわいいつよつよシーンをお見舞いできる演目とあらば、こちらとしてもご一緒させて頂くことはやぶさかではない。
この年越し配信は……多分、深夜二時とか三時とかまで続けるかもしれないけど、幼年組や霧衣ちゃんは最後まで付き合わせる必要もないだろう。程々のところでおやすみしてもらって、深夜パートは我々『チームおじさん』に任せてもらえばいい。
つまり彼女たちに、一月一日を健康的なスケジュールで過ごしてもらうことは、充分に可能なわけだ。当然夕方からの『百人一首コラボ』も問題ないだろう。
というわけで、演者ちゃんのスケジュール的にはヨユーである。なにより本人がやる気なので、モチベーションに関してもまったく問題ない。
あとのことは主催のういかさんに全てを委ねるとして……おれたちは、こっちだ。
「えー…………ちょーっとイレギュラー気味でしたが、『③、文郷ういかさん』っと。……というわけで、あした元旦夕方頃からの突発百人一首コラボ、よろしくお願いしますね! 詳細決まったらまたSNSでお知らせしますので!」
「はいっ! がんばりますっ!」
「あねうえどの、あねうえどの。我輩もご一緒してもよいだろうか。骨牌であれば我輩も嗜んでおるゆえ」
「し、小生も! 最近しもべたちの扱いがひどい小生にも! 何卒活躍とチヤホヤされる機会をぉ!」
「アッ、じゃあそのへんはオレの方から提案しとくんで、わかめちゃんは次の凸待ち対応お願いしますね」
「了解です! オッケーですよ何者でも掛かってらっしゃい! 今宵のわかめちゃんはつよつよですので! 虎だろうと龍だろうとお題ルーレットで返り討ちにして差し上げますとも!」
『アッ…………じゃあ、お言葉に甘えて。よろしくお願いします……で、ある』
「…………マジで龍が出てくるなんて思ってないんですよこちとらァ!!!」
はい、いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました。
これまであんまり込み入ったお話をさせていただいたことが無いお方ですが、そういう方々ともお喋りできるのが記念配信における『凸待ち』の良いところなわけですね。
少なくともわたしは……そりゃあ、ちょっとばかしビックリしましたけど、とても嬉しいです。
『えーっと……やっぱ自己紹介した方がいい?』
「アッ、お願いできますか? 知らないひとなんていないと思いますけど、一応」
『それは言い過ぎじゃないかなぁ……ん゛んッ。…………我輩の名は、ウィルム・ヴィーヴィル。恐怖の権化たる邪龍にして、悠久の時を生きる偉大なる存在である……です』
「……ハイ。というわけで『にじキャラ』Ⅰ期生【FANtoSee】きっての癒し系、『見た目詐欺』『聖なる邪龍』『ドジっ子おじいちゃん』などの呼び声も高い『ウィルム・ヴィーヴィル』さんです!!」
『ちょっと!?』
おれたちが彼の本領を目の当たりにし、また視聴者の皆さんが彼のイメージを確固たるものとしたのは……われわれの拠点(通称『のわめ荘』)にて行われた、大規模キャンプコラボでのことだろうか。
禍々しく人間離れしたビジュアルでありながら、他者を立てる・気が利く・空気読めると三拍子揃った『やさしい邪龍』。
容姿投影魔法【変身】を用いた際の体格ならびに重心が独特なため、要所要所で凡ミスをやらかしてしまう『ドジっ子』。
常に気を張り続けていた反動か、ごはんを食べたらねむくなってしまう(※実際寝た)極めて健康的な生活習慣。
凶悪な見た目から来る第一印象と大きく異なる彼のキャラクターは、『そんな人だとは思いませんでした。ファンになります』と老若男女問わず大人気なのだ。
「ご無沙汰である、みるむどの! 先日の『干物』はみるむどのに頂いたものだと聞いておる! とてもおいしかったので礼を述べたかったところなのである!」
「そ、そう! あの鯵めっっっちゃ美味しかったです! みんな大喜びで! 本当にご馳走さまでした!」
『いやぁ、恐縮です。本当は初夏のモノのほうが美味しいんですけどね。『のわめでぃあ』さんには僕らも』
「口調」「である」
『ふぐ!? …………吾輩らも、そなたらには大層世話になったからな。…………えーっと……僅かばかりとはいえ、恩返しが出来たのなら、吾輩としても……えー、恐縮で…………ごめんなさいわかめちゃん、あの……そろそろ勘弁……』
「ほんっと癒し系邪龍ですよねぇ……」
「に。吾輩もそう思うである」
『ぐぬぬ』
一人称(※キャラつくってるときに限る)が同じ『吾輩』だからだろうか、意外なほどウィルムさんに懐いている棗ちゃん。
実際例のキャンプコラボのときなんかは、おれやカメラの目がないところで肩車(※邪龍ウィルムさんの背中に棗ちゃんが飛び乗ってただけ)している姿が何度か見られているという。……ちくしょうおれも見たかった。
しかしそんな癒し系邪龍、いや『だからこそ』と言うべきだろうか。
その性根は個性派(すぎる)配信者が揃っている『にじキャラ』さんの中でも極めて常識人ポジションであり、幅広い層の支持を受けているのだという。
実際として……うちの棗ちゃんはもちろん、朽羅ちゃんも目を輝かせてたりするんだよな。
「それでは最初のお題、『今後やってみたいこと』。これはまた定番なのが出ましたね」
『つまんないとか言わないで下さいよ? 吾輩だってボロ出さないように必死なんですから』
「もう手遅れだと思うので気にしないで下さい! さぁ己を解き放って!」
『い、嫌だ! 絶対アホ魔王とバカ勇者に弄られる! 実直にいきますので実直に!』
「えー」
『えーじゃないが。…………えーっと、『今後やってみたいこと』。……そうですね、吾輩は幸いにしてあの図体なので、なんかそれを活かしたコトやってみたいですね』
「ほうほう。……たとえば? 何か構想あったりしますか?」
『うーーーーん……』
先程も軽く述べたように、ウィルムさんの【変身】後の姿は、多分に人間離れしたものだ。
漆黒の鱗に覆われた大柄な体躯と、世界的怪獣みたいに前に寄った重心と、これまた大きな手と長い尾と一転して可愛らしい翼を持つその姿は……まれにだけど、撮影の際に特別なスタジオを用意しなきゃならなくなるほどだとか。
そんなデメリットがある一方で、逆にその姿ならではのメリットもあるはずなのだ。恐らく(今のところは)唯一の個性である『人外種族』を全面に押し出した演目……それは決して他者には真似できない、ウィルムさんならではの強みとなり得るわけだな。
なるほど……人外種族。邪龍。黒い鱗。ドラゴン。怪獣。モンスター。……狩人?
「……いっそ開き直って、邪龍アクション動画とか撮ってみたらどうですか?」
『じゃ、邪龍アクション動画……?』
「ですです。ほら、武道の達人がカッコイイ演舞したり、メイド服着て抜刀演舞してみたり、スーツ姿で妙にカッコよくビニ傘振り回してたり、ヌンチャク振り回してビール瓶の栓抜きしてみたり……なんかほら、そういうのあるじゃないですか」
『あぁー…………つまりは『邪龍の身体でカッコイイアクションを撮る』っていう? ……でもほら、吾輩そんなカッコイイアクションとかよく知らないっていうか……』
「そこはほら、たとえば……『にじキャラ』さんの企業力にモノを言わせて、プロの手を借りてみるとか。◯映さんとか◯宝さんとか、もしくはカ◯コンさんの関連スタジオさんに、ドラゴンアクションの監修お願いしてみるとか。どうせ稼ぐモン稼いでんだろジャンプしてみろよおら!」
『やだこわい! このエルフ怖い!』
「コワクナイヨ。良心的ダヨ。ロケ地にウチのお庭提供しちゃうくらいには良心的ダヨ」
『アッ、それは助かるかもしれないです。人目につかない広い場所って限られるんで。……それはそうと、なんか吾輩に当たり強くないですか? 吾輩Ⅰ期ぞ? ういかさんとはえらい違いですけど』
「キノセイダヨ」
配信者としてのキャリアや立場を考えてみれば、ともすると失礼に当たるかもしれない言動だという自覚はあるのだが……彼の人柄のなせる技なのだろうか、どうにも馴れ馴れしく接してしまいそうになる。
もちろん彼ならびに『にじキャラ』の皆様は、それぞれが偉大なる先達である。尊敬の念は常に抱いているはずなのだが、それと同じくらい『彼は弄られて輝くキャラだ』という印象が強いのだ。
……きっと、常日頃から彼を弄っている周りの環境がそうさせているのだろう。つまりはおれはわるくない。
『……まぁ、楽しそうではあるので……マネージャーさんに相談してみます。またロケ地とか相談させて頂くかもしれません』
「心得ました。お待ちしてますね。……はいそれでは、ダーツ二本目! 霧衣ちゃんお願いします!」
「はいっ、……むー…………えいっ!」
「よっし刺さった! さぁー次のお題は…………おあ……」
『あー、『今日のパンツの色』ですか。……まぁいっか。赤のボクサーです』
「あら情熱的。…………ごめんなさい、はいてるんですね」
『そりゃそうですよ、今は人間で…………アッ、ちがくて。吾輩邪龍だけどオウチにいるときは服着てるますなので』
「魔王さまー勇者さーん見てますかー!」
『や、やめてー! やめてー! じじゃじゃ、じゃあ! 棗ちゃんはどうなんですか!』
「んに? まっしろなのであ「オワアアアアアアア!!? 棗ちゃん止まって! 見せようとしなくていいから!! ちょっとウィルムさん!? 誰に聞いたか解ってるんですか!?」
『あー、えっと、あの…………ごめん……』
その後……『年端もいかぬ幼女のパンツに興味を抱いた罪』により、どうやら通話切断後も『にじキャラ』内裁判が執り行われ、心やさしいドジっ子邪龍に対する処刑が決まったらしいのだが。
わたしは、なにも、しりません。
さあ! つぎはだれかな!!
たのしみだな!!!!!
『②、村崎うにさん』
ゲームつよつよ妖精ラニちゃんを見いだし、大躍進のきっかけを作ってくれた張本人。配信者活動におけるいちばんの恩人かもしれない。
そのグイグイ来る性格も相俟って、大規模キャンプ以降も度々おうちに遊びに来てくれている。というかプライベートで温泉街に遊びに来て『もしもし私うにーさん。今滝音谷におるんやけど』をやってのける。でもこちらの都合がつかないときは、空気読んできちんと引き下がって更に労ってくれる。良心。
その積極性と社交性の高さと空気読むスキルは相変わらず健在。仲のいいくろさん共々、『にじキャラ』さんや他配信者さんに関する情報をもたらしてくれる、いわば業界の情報屋(※なお対価はおもてなし)。
『③、文郷ういかさん』
じつは霧衣ちゃんとけっこう仲良しな女性配信者。オフで遊ぶことこそまだ無いが、REINで着付けコーデの相談や情報交換をよく行っているらしい。
なんだそれ羨ましいおれにも見せろ。
【変身】技術の実装にともない、細かな動作を配信に乗せることが可能となったため、全身を映しての『名作読み聞かせ動画』はより一層の人気を博している。喜怒哀楽の表情を浮かべながら感情豊かに読み上げる朗読は、どこぞの小中学校の国語教材として用いられた……とかいう噂も。
……でもね、ういかちゃん。自分が描かれてるからって、同人誌(※全年齢)の音読配信はちょっとおじさんどうかと思うの。
『④、ウィルム・ヴィーヴィルさん』
じつは棗ちゃんが結構なついていた(らしい)男性人外配信者。吾輩同盟(※非公式)。【変身】後の身体を見事に使いこなし、『ドジっ子』という新たな属性を獲得するに至った。つよいぞ。
Ⅰ期生の中では貴重な常識人であり、そのおかげで非常に弄られやすい。当初のキャラクターコンセプトであったはずの『傍若無人系邪龍キャラ』は……もはや跡形も無い。
以前にも増して見た目と内面とのギャップが取りざたされることとなり、ここ最近で登録者数と人気が急上昇。『コラボの先々で登録者数をガッツリ浚ってく』ともっぱらの噂。
遥か後日、『にじキャラ』所属として初の特撮作品出演を果たすことになるのだが……このときはおれ含め、まだ誰も知る由がなかった。




