487【驚天動地】神様のいない月
ご無沙汰しております。なんと生きてました。
音沙汰無さすぎて見放されてしまわないように、少しずつですが放流していこうと思います。ざばざば。
完結までもう暫しの間、お付き合いいただけると嬉しいです。
激動のイベントを乗り切って、九月最後となる定例生配信を乗り切って……こまごまとした撮影やお返しボイスの録音・送信や、SNSを用いての宣伝やコミュニケーションを順調にこなしていき。
次なる『せっかくとりっぷ』の行き先抽選、それを行う『生わかめ』をすぐ間近に控えた……九月三十日の、深夜。
九月から十月へと暦が変わった……まさにそのタイミングで。
「………!!?」「っとおビックリしたぁ!」
今まさに『おやすみ』しようとしていたおれたちを、突如けたたましい着信音が叩き起こす。
警戒心を掻き立てるこの発信音は、『対策室』からの緊急コールにほかならない。
「お疲れ様です。どこですか?」
『夜分恐れ入ります! 東京都渋谷区合歓木神前町……合歓木公園! 囘珠宮です!』
「っ!!? すぐ向かいます!!」
『こちらも機動隊を向かわせます! お気をつけ下さい! 反応規模が異常です!!』
「我が意を繋げ! 【繋門】!」
ここしばらく大人しくしてくれていたと思ったら……月が変わった途端にこれだ。フツノさまたちが懸念してたことがズバリ的中してしまったわけだな。
普段は『大神』鼎恵百霊世廻尊の加護によって護られていたはずの囘珠宮に、異常ともいえる特定害獣反応。
神様たちが出雲へと呼び付けられた隙を突いた……イヤらしい、それでいて効果的な奇襲。
「フツノさまも嘆いてたのにね。『適当抜かす法螺吹きのせいで出雲の爺共が調子づいた』って」
「コレ終わったら是非とも改革して貰うとして……行ってくる。あの子らをお願い」
「おっけー。……気は進まないけど『なるはや』で起こして追いかけるよ」
「頼んだぜ相棒」
「任せろ相棒」
口では言葉を交わしながらも、相棒から貸与された装備をてきぱきと身に付けていく。
いつぞやの写真撮影で大活躍した『エルフの弓使い』のときの、頭の先から爪先までの完全装備には何歩か劣るが……それでも『影飛鼬の脚衣』に胸当てつきチュニックと外套を羽織り、『聖命樹の霊象弓』と『銀檀の片手短杖』で武装したこの姿は、ただの特定害獣であれば後れを取ることはないはずだ。
万全を期すための後方支援要員――ひと足早く『おやすみ』してしまった良い子ちゃん三人――のことを相棒に任せ、おれはひと足早く【門】に飛び込んで現場へと急行する。
果たして、異常な反応規模が示された都心の緑地公園にして【神域】囘珠宮は……余所者でもすぐに解るほどの厳戒体制、誰も彼もが切羽詰まった表情でばたばたと行き交っていた。
やはりこんな時間まで詰めているということは一般の職員さんでは無いらしく、狩衣姿で弓を持った『神使』とおぼしき姿のひとがそこかしこに見られ……って!
「ちょ……あ、あのっ!? 【隔世】は!?」
「は、はいっ! いま現在も奏上中に御座いますが、一体どういうことか一向に術を結ぶ気配が見られず……」
「ッ……!? ありがとうございます!」
おれの【探知】魔法は、もうすぐそこといえる距離に複数の特定害獣反応を捉えている。
にもかかわらず、この合歓木公園近辺にはいまだ【隔世】の結界が張られていない。
それは、つまり……あの『特定害獣』の駆除作業を、一般の方々が目にしてしまうということで。
「……だからって! 静観する訳にぁ行かないんだよね!!」
≪―――縺ェ繧薙d縺雁燕!!!!!!≫
≪―――繧?k豌励°縺雁燕!!!!!!!≫
「どうかお静かにお願いします! もう真夜中ですの……でッ!」
≪―――縺舌o繝シ繝シ!!!!!!≫
≪―――縺ャ繧上?繝シ!!!!!!≫
自身の纏う【隠蔽】効果つき外套のフードを目深に被り、念のために自前でも【隠蔽】の魔法を纏った上で……手近なところから、手当たり次第に『特定害獣』の駆除を開始する。
一体や二体どころじゃない数が湧き出ているので、とりあえず数を減らさないことには話にならない。神使の方々や金鶏さんもあちこちで応戦しているらしいが……要であるモタマさまが不在なこともあってか、その処理速度はお世辞にも早いとは言いがたい。
「ふ、ッ!!」
≪―――縺ャ繧上?繝シ!!!!?!?≫
おそらくは、現在進行形で何者かが【隔世】の術を妨害している。
とりあえずは目につく限りの敵を倒し続けて、可能であればその妨害している張本人を排除する。
そうすれば……とりあえずは、沈静化に向かうはずだ。そう信じたい。
(ノワ! みんな連れてきたよ!)
(!! わかった! ごめんラニ、霧衣ちゃんに【霧】お願いして! おれも合流する!)
(えっ? …………ッ!!? 了解!)
行きがけの駄賃とばかりに『獣』を射殺し、おれは【門】の出現地点である倉庫へと急ぐ。
するとおれにとっては非常に馴染み深い、温かく心地よい魔力の波とすれ違い……やがて合歓木公園内の地面や樹木や池の水面そこかしこから、ゆらゆらと『霧』が立ち昇り始める。
一般の人々が住まう世界からほんのちょっと異相をずらした異界に『異物』を引き込み、遭遇を回避する【隔世】の術ではなく。
術者にとって馴染み深い『水気』を媒介とし、触れた者に一種の暗示を掛ける術。
魔力抵抗を持たない一般の人々に対して『人払い』を掛けるくらいなら……ちょっとした『時間稼ぎ』程度なら可能だろう。
なので、その間に……こっちをどうにかしなきゃならない。
「…………………………、………………。」
『感動の再会だってのに……ツレないねぇ? ツクシちゃん』
(やっぱり……出てくるよなぁ)
(多分だけど……この子のせいだね。このマワタマ神域の……食い荒らされた魔力の残滓が口元に)
(どんだけ規格外なのよ……)
おれたちの合流を阻むように姿を見せた、この場には到底似つかわしくない小柄な姿は……残念ながらほぼ間違いなく、この襲撃を引き起こした張本人。
この囘珠宮と合歓木公園の結界をズタズタに食い荒らし、【隔世】展開のための魔力を奪い尽くしている、悪食の異能者。
『勇者』の装いに身を包んだラニに、爛々と『敵意』に満ちた視線を向ける……【食欲】を冠する魔王の使徒だった。
ある程度のストックは作ったハズですが、もしまた使いきったらまた止まるかもしれません。
止まらないようにがんばります……!




