342【企画撮影】せっかくとりっぷ・結
…………待って。まって。
まって。わかんない。なにがあったの。いったいどういうことなの。
「ノワただいま!! 完全勝利だよ!! ふへはー!!」
空間をぐんにょりねじ曲げて【門】を開き、まず現れたのは妙にハイテンションの相棒兼破廉恥妖精、ラニちゃん。
元気一杯のその姿は、なんだかさっきよりもずいぶんとご機嫌な感じがするけど……まぁ、それはいい。
「ご無沙汰してます、若芽さん。SNS見てましたよ」
続いて【門】から現れたのは、ツヤツヤロングストレートの髪の毛からフリフリボリューミーなお召し物から、総じて真っ白な美少女(にしか見えないがち◯ち◯がついている)……おれ同様の実在仮想配信者にして『苗』対策の心強い助っ人、ミルク・イシェルさん。
彼女……もとい彼も、まぁべつに問題ない。シーカヤック挑戦中かつインストラクターさんの注視を浴びていたおれに代わって、初となる現場を見事にこなしてくれたのだ。出撃を依頼したのは他ならぬおれなので、当然彼の参戦は知っている。これも特に問題ない。
問題は……彼の、ミルさんの肩に器用に腰掛けている、妙に可愛らしくデフォルメされた魚のような……鋭角的な鼻先と大きな口と立派な背ビレを備えた、アッ鮫ですかねこれは。
そこはかとなく『ゆるキャラ』感を漂わせる鮫のマスコットは……やはりというか、どうやらぬいぐるみなんかでな無いようで、おれと目が合うなり『ぺこり』と会釈してみせる。
おぉ……鮫に会釈されたよ、おれ……。
「ミルさん、あの…………その子」
「そうそう! すごかったよーノアくん! あの『獣』かそれ以上にでっかくなってさ、こう……バクッ! って!」
「実は……ラニさんと若芽さんの関係性に憧れて、色々と試行錯誤してみたところ…………デキちゃいました」
「ミルさん本当にち◯ち◯ついてますか? 顔赤らめていわないでください? めっちゃセクシーなんですが?」
「ついてますよ。見ます?」
「ヒュっ、」
話の流れから察するに……要するに、ミルさんの『従魔』とか『使い魔』とか、そういう類の魔法生物なのだろう。
おれの頭の中でくすぶっている魔法知識の中にも、そういう魔法生物の錬成手法に関する記述もあるようなので……おれやミルさんのように『魔力』を備えた存在であれば、なるほど生み出せないこともないようだ。
特にミルさんは、水棲系生物に強力なバフを掛けたり、高度な連携が行えたりするキャラクターだという。水棲生物の中でも強者として名高い『鮫』の使い魔とあらば、戦力としても申し分ないのだろう。
そ、そっかぁ……あの『獣』を『バクッ』てできちゃうくらい強いのかぁ……。
「まぁ、他愛ない奴等であったな。坊も家主殿に劣らず、術師としては中々のものよ」
「あっ、ナツメさんお疲れ様です。ありがォ」
「有無。我輩の【隔世】が在れば、家主殿も存分に力を振るえよう。斯様な悪鬼如き、そうそう不安は在るまいて」
おれが、真に言葉を失ったのは……囘珠宮のモタマさまよりお預かりした、錆猫の神使棗さん。
赤毛混じりの黒の毛並みを持ち、責任感とプライドが高く、好奇心が旺盛で……テーブルの下やおれたちのお膝がお気に入りな、つやつやふかふかで可愛らしい猫ちゃんだ。
……その、棗さん、が。
「――――如何したのだ、家主殿。中々に愉快な顔をして居るではないか」
「いや、あの、えっと、あの、その、あの」
「――――何だ? 鶴城の宮より白狗の娘が嫁いだと聞いた故、ヒトを模した姿も嫌悪感を示さぬだろうと踏んだのだが……」
「と、嫁いゅ……っ!?」
「…………何だ、……好いては呉れぬのか? 我輩の此の姿は」
「いいえ!! すきです!!!」
形の良い三角形の耳を頭頂部に備え、毛並みと同じ鼈甲色の髪をおかっぱに揃え、しかしながらその金色の瞳には縦に長い瞳孔を持ち、おしりから垂れるふわふわの細長いしっぽをうねうねと動かし……。
それでいて、へそ出しキャミソールとダボ袖パーカーにホットパンツとニーソックスという、めちゃくちゃイマドキでおマセな感じの、ぶっちゃけ非常に火力の高い現代衣類に身を包んだ……その姿は。
「うーっす戻りましたーカヤックの支払いバッチリ済ませウワアアアアアアア猫耳美幼女だアアアアアアア!!?!」
「む、う…………済まぬ、不快で在ったか?」
「いいえ!! 好きっす!!!」
「――――う、うむ。嫌悪感を抱かれて居らぬなら……それなら良い。……さて、家主殿よ」
囘珠の神使たる錆猫の少女は、その……ちょっと神使っぽくない装いに身を包んだ小柄な体で、堂々と胸(平たい)を張り。
おれとモリアキが口元をニヤけさせながら目を見開き、霧衣ちゃんがお口に手を当ててびっくりしたお顔で、ラニちゃんとミルさんはデレデレのニコニコのいい笑顔で、五人それぞれの視線を、臆することなく受け止めて。
「短い間だが、よおく観させて貰ったのだがな。……我輩も、そなたらの演目には興味が湧いた。白狗里の娘ほど堪能ではないが……及ばずながら我輩も、手を貸そうぞ」
「やだ……かわいい…………すき」
「どうしよオレ結構ツボなんすけど」
「まこと……愛らしくございまする」
「この衝撃を食らいながらちゃんと戦ったぼくすごくないですか?」
「ははは……本当ミルちゃんよく頑張ったよね……」
歴史あるお社の神使らしくない、活発そうなイマドキの女の子の(たぶん合歓木公園に遊びに来ていた女児の服装を真似たのだろう)装いで。
しかしその格好とは(おれの偏見かもしれないけど)少々そぐわない……理智的で、計算高く、真面目そうな、愛らしくも凛々しい表情を浮かべ。
「我輩は……八海山の棗。此より暫し、我輩の興味と好奇心が尽きるまでの間……貴嬢と、貴嬢の生み出す演目に、微力ながら全霊で以て力添えとならんことを誓おう」
小さくてしなやかで可愛らしい猫耳美少女ナツメちゃんは、モタマさまに頼まれたからではなく……自分自身で観て、聞いて、考えて、導き出した意思のもと……
おれたちに……『のわめでぃあ』に、力を貸してくれることになったのだった。
【まじめがんこくーでれ猫耳幼女】
棗ちゃん(SSR)がなかまになったよ!!
やったね!!!!




