195【週末配信】手に汗握れ攻防
握れ(威圧)
おれとラニがそれぞれ企画案を持ち寄り、霧衣ちゃんをどう料理げふんげふんプロデュースするのかを争う特別企画……題して『どっちの動画SHOW』(※後日企画名が変わった際は察して下さい)。
ラニが持ち込んだ『KIRI'Sキッチン』(以下ラニ案)と、おれの持ち込んだ『キリエクローゼット』(以下ノワ案)の対決である。
まずはそれぞれ、企画名を公表してからの支持率調査。ユースクに備わるライブ放送アシストツールのひとつ『アンケート』機能を利用して、ラニ案かノワ案かを選んで投票してもらったところ……
「やっぱねですね、視聴者さんは欲求に正直だなって」
「ぐぬぬぬ」
『勝ったな(慢心)』『てれる』『ミニスカ希望』『それほどでもない』『おりょうりがあああああ』『まだだ!まだ終わらんよ!!』『勝ったな。フロ入ってくるわ』『ま、まだこれからだし』
スタート時の投票結果は、わがノワ案がやや優位。六割超の支持を集める結果となったが……しかしまだまだ、充分巻き返しの圏内だ。今後の展開に期待が高まりますね。
まだまだ最初も最初、第一印象のみで判断した投票結果にすぎない。ここからのプレゼンでどう評価が変わっていくのか、二転三転していく戦況もこの企画の醍醐味だ。
というわけで、いよいよ勝負開始。
まずは先攻ラニ案『KIRI'Sキッチン』のプレゼンが幕を開ける。
「はいみなさんご拝聴。ボクが紹介する『KIRI'Sキッチン』ひとつめのアピールポイントですが……まずなによりも『料理する女の子は可愛い』『美味しそうに食べる女の子は可愛い』というところをアピールさせていただこうと思います!」
「アッ、それはわかる」
「ひゅぃ!?」
「構想としては……キリちゃんがキッチンに立ってお料理をしている様子をカメラで撮らせてもらってですね、控え室のボクがそれを拝見しながら、解説とか『ここすき』なポイントとかをおしゃべりさせて貰って……出来たお料理は拘束して嗅覚以外の五感を封印しておいたノワの前に配膳してもらって……そしてさいごに拘束を解いて実食したときの、ノワの反応もあわせて味わってもらいたいなぁって」
「なんか不穏なワード聞こえましたよ!? わたしまた拘束封印されるの!? やですよわたし!!」
「……わたくしは、お料理をすれば宜しいだけ……ですか?」
「そだね。ボクらはとくに邪魔も茶々入れもしないから、腕によりをかけておいしそうなお料理つくってもらって、拘束されたノワの前に配膳してくれれば……それでオッケー」
「……なるほど。安心致しました」
「わたしは不安になりました!!」
『拘束wwwww』『【¥10,000】のわ虐たすかる』『嗅覚だけ残すって拷問じゃん……』『【¥10,000】緊縛代』『【¥30,000】つまりえっちなやつですね』『【¥3,000】少ないですがロープ代』『まな板の上の鯉はのわちゃんだった説』『局長の扱いひどくない?』『なるほど料理(意味深)』『【¥4,980】DVDでくれ』『わかめ料理かぁ』
おっとぉ思わぬ地雷が隠されていましたね!
まさかのまさか、こっちに向けた攻撃が飛んでこようとは思いませんでした。霧衣ちゃんかわいいをアピールするための企画なのに、隙あらばおれを辱しめようとするのはちょっとひどいと思う。
ああでも……霧衣ちゃんのおいしい手料理がいただけるというなら……いやいやしかし。
「シュンさん『のわ虐たすかる』すぱちゃありがとう! やめてあげて! ケータさん『緊縛代』すぱちゃありがとう! すごい複雑な気持ち! たまごやきさん『つまりえっちなやつですね』三万もすぱちゃありがとうございます! でもちがいます! こんなことにそんな大金つぎ込まないで! 『少ないですがロープ代』たどちゃんさんすぱちゃありがとうございます! 少なくないよ! 何メートル買わせるつもりだよ! ざっそうにゅーすさん『DVDでくれ』あげません! でもすぱちゃありがとう! ちくしょうお礼言うべきか罵声浴びせるべきか悩むじゃんかよ!! ぜえはあぜえはあ」
「荒い息づかいたすかる。……というわけでアピールポイントそのいち、『お料理中のキリちゃんの姿』と……ついでに『拘束されて喘ぐノワの姿』。魅力たっぷり間違いなし! ……どうかな?」
「ついでで拘束されるの割とひどいと思いますが! ラニ最近隙あらばわたしを縛ろうとしてません!? ああもう、つぎつぎ! 次わたしのターンいきますから!」
「ノワは可愛いからね。仕方ない」
「あ……ありがとう…………じゃなくって! ……こほん。わたしの『キリエクローゼット』ですが、企画の大筋としては『和服以外を身に纏う霧衣ちゃんの恥じらいを愛でたい』という点に集約されます。つまりはここ、アピールポイントそのいち。それはずばり『慣れない洋服を着せられる霧衣ちゃんがお上品に恥じらう姿』です!!」
「どうしよう、やっぱソソられる」
「ひょんなぁ!?」
「ご覧の通り可愛い霧衣ちゃんなのですが……実はですね、我々も彼女が『洋服』を着てるところを見たことが無くてですね。……そうなんですよ、部屋着も和服なんです。お風呂上がりとか浴衣ですよ浴衣。それも決して悪くはないんですけど……やっぱさぁ、スカートとかノンスリーブとか……おみあしとか上腕二の腕とか、気になるじゃん? 気になるでしょ?」
「ぶっちゃけすごい気になる」
「ちょっ…………!? わ、若芽様ぁ!」
さすがに、俗にいう『破廉恥』な格好をさせるようなことはしない。しないが……たとえばふわっと広がるフレアスカートから覗く健康的なおみあしや、肩や腕が拝めるデザインのサマードレスやキャミソールのような……健康的で健全な衣装を着てもらいたいし、見てみたい。
可愛い女の子に可愛い格好してほしいというのは、健全な人間であれば誰しも持ちうる感情ではなかろうか。
『可愛い服!!』『おめかしキリちゃん!!!』『【¥999】のわちゃんの下着代』『和服美少女はじめてのスカート(Gokuri)』『【¥40,000】きりちゃん下着代』『【¥30,000】マスター、あちらのお嬢さんに萌え袖パーカーを』『和服もいいけどなぁ……たまには』『きりちゃん悲鳴かわいそう』『【¥10,000】美少女の涙御馳走様です』『悲鳴たすかる、ボイス販売あくして』『刀郷くんおるやんけ』『刀剣ニキスパチャ芸わらう』『相変わらず変態じゃねえかwwww』
さっきまでのにっこり顔とはうって変わって、悲壮な雰囲気を滲ませる霧衣ちゃん……まるで一人ぼっちで置き去りにされたわんこのようなその雰囲気は愛らしくもあるのだが、そうはいってもやっぱり嫌われたくはない。
企画が単なる『イジメ』になってしまわないよう、線引はしっかりと弁えておく必要があるだろう。
「シコルスキーさん『のわちゃんの下着代』『きりちゃん下着代』お一人で二通あわせて上限ギリギリすぱちゃ本当にありがとうございます! 無理しないでね! あからさまな待遇格差は見なかったことにしてやる!! たましーさん『マスター、あちらのお嬢さんに萌え袖パーカーを』すぱちゃありがとう!! いいねぇお客さんわかってんねぇ! 霧衣ちゃん萌え袖パーカー絶対かわいいよ……ホッパとニーソ合わせようぜ。とうごうけんじさん『美少女の涙御馳走様です』すぱちゃありがとう! 霧衣ちゃんにひどいことしないで! …………原因わたしか!! 霧衣ちゃんごめん!!」
さすがは土曜日の夜、ということなのだろうか。昨日のライブ配信に勝るとも劣らない勢いで、コメントと色付きコメントが流れていく。
……万札規模をほいほい投げられると、例によって申し訳ないゲージが急上昇してしまうのだが……座右の銘(昨日決めた)である『寄せられるスパチャは期待の現れ』を念頭に、おれは感謝の気持ちとやる気モチベーションを高めていく。
おれが寄せられるスパチャにお礼を返している間も、視聴者さんたちは結構悩んでくれているようだ。
彼ら彼女らの葛藤がコメント欄に現れており、おれたちはそれをときに拾い、ときにツッコミを入れ、視聴者さんたちとの心のふれあいをしばし楽しむ。
普段は報告事項や演目披露など、一方通行の配信が多い気がする弊『のわめでぃあ』だが……やっぱり視聴者さんとの距離が近い雑談配信というものも、また違った楽しさがあるのだろう。……今度やろう。
『悩める……』『そうきたかー』『緊縛のわちゃんかぁ』『どうしよう揺らぐ』『のわちゃん拷問』『拷問のわちゃん見たいよなぁ』『どっちもみたい』『今北なにこの究極の選択』『おまえら!!キリちゃんが可愛そうじゃないのか!?』『きりちゃんの夏色ワンピ拝みたい』『のわちゃんの拷問は可愛そうじゃないのか……』『のわちゃんはいいのか』『局長の扱いひどい放送局ですね!?』『どうしよう本気で悩む』
特選素材として特等席に座らされている霧衣ちゃんも――おれたちのプレゼンで一喜一憂していたけれども――目まぐるしく流れていくコメントと、視聴者さんたちの意見や感想を興味深そうに眺めている。
おれたちの行っている『番組づくり』への興味と理解を深めてもらえると嬉しい。
「さてさて、だいぶお気持ちが揺らいだ方が多いのではないでしょうか。まだ第一プレゼンを終えたばかりですが、現在の支持率チェックいってみましょうか?」
「ぐぐぐ……巻き返せるかなぁ」
なんの説明もない状態で行われた最初の『アンケート』結果は、六割越を取得したノワ案が優位。
一度目のプレゼンを終えた後での、全四回中の二回目となる『アンケート』。このままノワ案が逃げ切るのか、それともラニ案が追い上げを見せるのか。
ドキがムネムネでワクワクが止まりませんが……それでは、チェックしてまいりましょう。
今のお気持ちは……どっち!!
テレッテレッテーテーレーレーレー(効果音)




