中編:占星術師のエルフ幼女 その3
もともとミカやリーナを快く受け入れてくれた皆だ。占星術師の少女の事も、皆抵抗なく受け入れた。
●ルシュカの場合
「んあああああ! もっと! もっとでありまーす!」
占星術師の少女が、寝そべるルシュカの尻を、棒でぺしぺしと叩く。
そんな姿を見ていたミカは、その少女に尋ねる。
「……楽しいのか?」
「これ、いつまでやればいいんでしょう」
なぜか、アゼルとの戦いを見ていたルシュカが、自分の尻を叩いてみろと言い出したのはつい先ほどのこと。
そして元々表情が豊かではない占星術師の少女は、さらに無表情になってルシュカの尻を叩いていた。
そしてひとしきり叩かれ終えたルシュカからの評価は。
「素晴らしいであります! この後味すっきりさわやかなお尻の感触! 程よい痛み! 最高であります!」
●ショーティアの場合
「女性同士の恋愛ものでしたら、リリープリンセスというシリーズ物の書物がオススメです。女性同士の恋愛を描く作家が集まって発行したものです」
「あらあら、そのお話を詳しくお願い致しますわ」
「あとは、王都で女性同士の恋愛を描いた演劇もやっているそうです」
「まぁ! 反対派や教会からの圧力で問題がありましたが、ついに公開されたのですわね!」
なぜか廊下で出会ったショーティアと、同性愛に関する話で盛り上がる。
その様相を見ていたミカは。
「な、なるほど。ショーティアはどっちでも行ける派か」
と呟いた。するとショーティアはすかさず。
「ミカさん。わたくしは男性同士も女性同士も、男女もいけますわ」
「き、聞いてたのか……」
●シイカの場合
「……」
「……」
パーティハウスの曲がり角で、ばったりと出会ってしまった、占星術師の少女とシイカ。
しばらく無言で見つめあっていた二人。
すると先に、占星術師の少女が、まるで鷹が威嚇しているようなポーズを無言でとった。負けじと、シイカも右手を前に突き出し、まるで拳法の構えを取った。
そんなシイカを見た少女は。
「やりますね」
「……にゃ」
その会話にミカが思わずツッコむ。
「いや、何がだよ」
しかしミカの言葉は二人の耳に入らず。
「では、これならどうでしょう」
「むふー」
さらに色々、傍から見れば変なポーズを取る二人。そして数分ほどポーズを終えた二人は、なぜか握手をした。
「素晴らしいです」
「……にゃにゃ」
二人とも、どちらかと言えば無表情寄り。二人は表情を変えることも無いまま、お互いの手を強く握りしめた。
それを傍から見ていたミカが一言。
「何だこれ」
●クロの場合
「そう、そこで主人公が右手を頭の後ろに回して、親指を下に向けて言うんだ」
「『決着ゥーー!』って言ってましたね。あそこはかっこよかったです」
「そうそう! あのファンタジー小説、僕大好きなんだ! 本当にかっこいいよね!」
と、ファンタジー小説の話で盛り上がるクロと少女。そしてミカもその話に加わり。
「わかるわかる! 俺もその小説は読んだよ。その後にある、主人公とボスで手錠デスマッチするシーンは、凄い燃えた!」
「さすがミカわかってるね! あのシリーズ、男の主人公が多いんだけど、第六部で女性が主人公になったんだ。僕は二部と四部と六部が好きだなぁ」
「わたしは一部と五部が特に好きですね」
「俺は二部と三部と、あと七部が好きかな。今でも続いてるんだよな?」
「だね。長寿小説シリーズだ。僕が子供の頃から、王立図書館に置いてあったよ」
「噂では、作者は吸血鬼なんて話もありますね。だから長い間、衰えずにお話が書けると」
と、三人は自分の小説の趣味が一致し、大いに盛り上がった。
そしてクロは、その少女に言う
「なんだか、最初は不思議な感じがしたけれど、あなたとは話が合いそうだ。ミカも交えて、もっと小説談義をしたいね」
●リーナの場合
夕方ごろだった。ミカは占星術師の少女と共に、パーティハウスの側にある崖際にやってきた。
空がオレンジ色に染まる中、崖際に座る一人の狼耳少女。
「ん? どうしたのよあんたたち」
一人海を眺めていたリーナ。尋ねられると、ミカは。
「いや、この子がリーナに話があるって」
「ふーん、あたしは別にその子に強い興味は無いし、皆が受け入れるなら受け入れるって感じだけれど」
と、占星術師の少女がリーナへ近づく。すると、手に持っていた聖杖を振りながら、踊り始める。
杖の先端が地面に何か、魔法陣のようなものを描く。すると、その少女は立ち止まり、地面に自身が魔法陣を見た。
「星極。月影。水瓶。天道」
「な、何よ。いきなり躍ったかと思ったら、何か呟きだして」
「ああ。リーナ。これは占星術師の占いの踊りだ。こうして夕方のような、星がほとんど見えない時間帯は、空の星の位置を感知する踊りを踊って、感知した結果をこうして地面に描くんだ」
そうして地面を見つめていた少女は、何かを確信したかのようにリーナに言った。
「あなたの今の運勢は、大吉です。ラッキーカラーは赤」
と、特に深くもない占い結果を言う少女。その言葉を聞いたリーナは。
「ぷっ……あははははは! 何よそれ! もっと大層な事を言うかと思ったら!」
そんなリーナの態度に、少女は少しふてくされた。
「わたし、マジメです」
「あはは! ミカ、あたし、この子気に入ったわ!」
「お! それは良かった。しかし、ユーモアのセンスもあるんだなぁ」
と、ミカとリーナが感嘆している横で、その少女は。
「わたし、マジメです」
ふてくされていた。
〇〇〇
そうして、いつの間にか皆に受け入れられていた少女。その少女とパーティハウスの廊下を歩きながら、ミカは話していた。
「いやしかし、君が馴染めそうで良かった。俺も君を雇うのは賛成だ。いや、パーティに入ってくれてもいいかも」
ミカは考えた。彼女の洞察力や判断力は、かなり高い。槍を作ってあげて、近接アタッカーとして迎え入れれば、晴れて八人パーティになる。
四人と四人で分かれて行動もしやすくなる。
「皆も同じ意見だと思うが、俺からも推しと……どうした?」
ミカは、なぜか立ち止まってしまった少女に振り向き、声をかけた。
すると、その占星術師の少女は。
「まだ、あなたにお礼をしていませんでした」
「お礼?」
「美味しい料理の作り方を教えて頂いたお礼です」
「いや、そのくらい気にしなくていいよ」
しかし少女は首をぶんぶんと振って。
「いえ、お礼させてください。しかし、今わたしにできるのは占いだけ……そうですね。何が良いでしょうか。これまで過去に人気があったのは、やはり恋愛……」
そして、少し考え込んだ少女は、ミカにこう言った。
「では、あなたのお婿さんを占ってあげます」
「……はい?」




