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8話 サポートヒーラーと事件の気配

 クロが深々と頭を下げる。ショーティアやアゼルも同じだ。


「このままだと僕たちはダメになる!」

「ウチもよ、手入れしてもらった装備でダンジョン行ってみたら、Dランクモンスターが簡単に狩れたんだよ……」

「ですが、それはわたくしたちの本当の力ではありません。すべてミカさんのおかげですわ。きっとミカさんが居れば、わたくしたちはとても強くなれます」


 3人は、ミカがなぜ前のパーティを追放されたかを聞いてた。だからこそ、3人は『このままではだめだ』と結論をつけ、今回ミカに相談したのであった。


「俺としては、前のパーティで『役立たずのサポートヒーラーとしてやって当然』と言われてたことをやったんだが……」

「それはきっと、あなたの以前のパーティがとてもひどい方々ばかりだったからですわ」


 ミカは以前のパーティで不当な扱いを受け続けていたため、通常なら仲間内でさえ金を払ってやるようなことでも、雑用と認識させられてしまっていた。

 

「僕たちはきっとキミがいう雑用というもののおかげで、強くなれる。けれど、それはミカがサポートしてくれるからだ!」

「ウチらがもし、今後もいつもいつもミカァに頼って、もしそれが『当然』みたいに思いこんじまったら、前のパーティの嫌な奴らみたいになっちまうだろ?」

「ヒトというのは、業が深い生き物ですわ。わたくし、同じように他人の善意を『当然』としてとらえ、感謝もしなくなった方々を、聖魔術教会に所属していた頃に見てきましたの」


 その話に、ミカは確かに覚えがある。前のパーティでも、最初は感謝されていた、だが、いつしかそれが当然になってから、感謝されなくなったのだ。


「ミカ、Dランク冒険者の僕から見ても、キミは全部一人で背負いすぎなんだ。僕たちはパーティなんだから、みんなで背負えばいい」

「そうだぜ! 例えばさー、簡単な素材採取とかモンスター素材集めなら、ウチらに任せてくれよ!」

「あなたのサポートがいらないと言っているわけではありません。実際、とてもうれしいです。最初はご迷惑をおかけするかもしれませんが……サポートを受けるばかりではなく、わたくしたちも、あなたをサポートできるようになりたいのです」

「俺のサポート……?」


 それはミカにとって衝撃的な言葉であった。

 今までずっと、ミカは他人からサポートをする、なんて声をかけられたことはなかった。

 他者へのサポートに徹してきたミカにとって、何よりもうれしく、心暖かい言葉。

 そんな言葉を、無下にできるわけがない。


「わかったよみんな。俺は……」


 ミカが口にしたとき。

 ドン、とどこからか衝撃音が響いた。


「な、なんです今の音は! 交尾にしては激しすぎる音でしたわ!」

「そんなもののわけがないだろう!? 僕もわからない、どこから聞こえてきた!?」

「なにかがぶつかった音みてえだったけどよぉ!」


 慌てる三人をよそに、ミカは冷静に状況判断をした。


「音の方向からしてここより下……崖下だ!」


 すぐに4人は屋敷を飛び出し、崖下を見た。


「ミカ、あれはなんだい? それに、血だらけのヒトが乗っているよ!」

「多分小型の高速船だ。崖に衝突したんだろう。ヒトは……だめだ、遠くて俺にはよく見えない。すぐに下に降りて、助けるぞ!」


〇〇〇


 崖下へと降りたミカたちは、すぐに乗員の救出にあたった。

 乗員は40歳前後の男性だ。


「ミカ、彼の背中、ひどい傷だ」

「わかってる。爪痕のような傷。モンスターにやられたんだ。ショーティア、俺と一緒にヒールをかけるぞ」

「わかりましたわ!」


 全力でヒールをかける二人。そのかいもあってか、男は意識を取り戻した。


「う、うう……ここは?」

「皆、ここは俺が答えるよ。ここは、ヴェネシアートの冒険者居住区画だ。どうしたんだあんた、ひどい傷だった」

「冒険者……!? た、助けてくれ! 商船がモンスターに……モンスターに!」


 男はミカに語った。

 男は貿易商人だという。今回は長い航海ののち、この港町へ向かって航行していた。

 だが、航行中に航路から離れた遠くで『救難灯』が灯っていることに気づく。

 救難灯というのは、船が航行不可になったとき、他の船に知らせて助けてもらうために灯す明かりのことだ。

 救難灯が灯っていれば助けに行くのが海のルール。男は商船の仲間とともに助けに行ったのだが。


「数百人が乗れるようなでかい船だった。俺たちはその船を見つけた。近づいても何も反応が無く、連環鎖れんかんさという船と船をつなげる鎖を使い、乗り込んだんだが」


 突如、その船内からモンスターが現れた。すぐに商船で逃げようとしたが、商船の帆がモンスターに折られてしまい、乗組員たちが止む無く、モンスターの現れた大型の船の中へ逃げ込んだ。


「逃げる途中で何人も死んだ。だが、船底近くの倉庫らしき場所に、みんなで逃げ込んだんだ。だが、いつまでも籠っているわけにはいかねぇ。俺は助けを呼ぶため、船底を出て、商船に積んでいたこの船で脱出しようとしたんだ。もっとも、モンスターの攻撃を食らっちまったがな……うっ」

「おい、大丈夫か!」

「ああ、大丈夫だ……頼む、俺をこの国の町まで連れて行ってほしい。この国の海軍に、助けを乞いたいんだ」

「わかった……ショーティア、クロ、留守番を頼む。アゼル! 彼を抱えられるか!?」

「おうよ! 力仕事はまかせろってんだ!」

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