中編:ダンジョン攻略とサポートヒーラーの思い出 その4
13歳という言葉を聞いたアゼルが言う。
「13歳なー。ウチは貧民街出身だったから、もっとちっちゃい時から働いたりしてたけどよぉー。普通は13歳は、まだ働く年じゃないんだろ?」
「そうですわねぇ。ダンジョンからマナストーンが採れるようになったおかげで、生活は豊かになりましたし、各地の王立図書館が小さなアカデミー、つまり学校のような役割をしていますから、少なくとも働くのは15歳ほどから、とはお聞きしますわ」
「そうなんだね。僕の住んでいた町では、12歳くらいから、場合によってはもっと小さいのに働く子供も多かったけれど」
「地域によって差があるんだろうな。俺の故郷では、ショーティアさんの言う通り15歳までは勉強するってのが一般的だったよ。幸いかどうかわからないが、隣町に王立アカデミーの分校があってな。俺はそこに通ってた」
王立図書館、王立アカデミー。それは主要エネルギーをダンジョンのモンスター等から採れるマナストーンとするバレンガルド王国にとって、冒険者や研究者を増やすために作られた施設だ。
「ちなみにミカどの! ミカどのはどのような勉強をされていたでありますか? やはりミカどののクラスである魔城学術の勉強でありますか?」
「……実を言うとな。違うんだ」
ミカが首を振ってから話したクラスは。
「実は、パラディンを目指していた」
「マジか!? ウチと同じじゃん!」
全員が反応を示したが、一番強い反応をしたのは、同じくパラディンであるアゼルだった。
「マジかー! ミカもパラディン目指してたのか!」
「ああ。10歳ころからアカデミーで訓練を始めてな。本当は王国騎士団に入りたいと思ってた」
「師匠に聞いたことあるぜ! 年に何回か、各地の優秀なパラディン候補の子供が王都に集められて、パラディン見習いの認定試験を受けるって。ミカも受けたのか?」
「……そこなんだよな。俺は受けられなかった」
「え? ミカ、それはなんでだい?」
疑問を投げかけるクロに対し、ミカは。
「俺、先生からの評価が良くなくてさ。アカデミーから認定試験を受けるための支援金、普通なら受け取れるはずなのに受け取れなかった」
「マジかよ!? なんで評価が低かったんだ!?」
「後で聞いた話なんだが、俺の幼馴染……ミューラって居ただろ? あいつ外見は良くてさ。モテてたんだ。思えば当時からミューラには色々やらされてたが、それがどうも先生や他の生徒に妬かれていたらしい」
「えぇ……僕もびっくりだよ。そんなことで人の評価を変えるなんて」
「ま、支援金受け取れなくても……実は当時、アカデミーの帰りにレストランのキッチンでバイトしててさ。あの頃から物づくりは得意で、それで稼いで家に金を貯めてたんだ。それを使えば良かったんだが」
ミカの口調から、皆が何かを察した。何かの理由により、ミカはその金を使えなかったと。
「使えなかったでありますか?」
考えを最初に口にしたルシュカ。ミカは首を縦に振った。
「なんというか……俺、親もちょっとアレでさ。父親とは血がつながってないし、あのとき母親は……東方の変な占いにはまっててさ。貯めてた金、全部ギャンブルだの怪しい道具とかを買うのに使われてた」
「ぐへぇ、マジかよ」
そうして完全にパラディンへの道を断たれたミカは。
「そっからは色々あって魔城学術士のクラスになって、16歳くらいの頃、先に冒険者になってたミューラの居たパーティ、紅蓮の閃光に合流したんだ。そのあとは……まぁお察しだ」
その後の顛末は、青空の尻尾のメンバー全員が知っている。
ミカの持っていた採取や製作技術。そして高い魔城学術のスキルもあり、10年近くの活動期間の間に、パーティをSランクに押し上げた。しかし、そのぞんざいな扱いを受けたあげく、パーティを追放されてしまった。
「大変でしたわね……」
ショーティアが、ミカに対する心配を口にした。
「ま、もう過去の話だ。そして、これだけは皆に言わせてくれ」
すると、ミカはやわらかい笑みを浮かべて、皆に言った。
「青空の尻尾に入ってから今まで。ここまで楽しいと思ったことはない。本当にありがとう」
そう言ってミカは頭を下げた。
「な、なんかよぉ、そう言われると、恥ずかしいぜ」
「むしろ僕はミカに感謝しかないよ」
「そうでありますなぁ! 今の自分たちがあるのは、ミカどののおかげ、間違いないであります!」
と、皆が思い思いにミカに話す。
シイカも言葉こそ発しないものの、側にあった曲がり角から片手を出して、親指を立てていた。
そしてショーティアは。
「あらあら。とても嬉しいですわ。おっぱい触ります?」
「……そこまで何度も言われると本当に触るぞ?」
「あらあら。ミカさんならいつでもウェルカムですわ。少々お待ちを」
「いや、ちょっと待ってくれショーティアさん。ここで装備を外すな。服を脱ごうとするな。というかなんで脱ぐんだ」
「生がお好みではなくて?」
「言い方が生々しい。とりあえず今度、今度で頼む。ここはダンジョンだ。そろそろ地下へ進む方法を見つけないと」
そうミカが言った時。
「……にゃ」
シイカが小さな声を出した。その声に反応して、ミカはシイカのもとへ向かう。
「どうしたシイカ?」
「にゃ」
シイカの指さす先。シイカの居た曲がり角。その先には、地下へと続く階段があった。
「なんだ、こんなに近かったのか。というかシイカ、気づいてたなら先に言ってくれても良かったんだが」
「……にゃ」
「あらあら。シイカさんは案外空気を読める方ですわ」
そうショーティアが言うと、シイカは両手でピースサインを作った。
「……それ好きだな」
「にゃ」
「ま、何はともあれ、先へ進むとするか」




