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中編:ダンジョン攻略とサポートヒーラーの思い出 その2

「鑑定でありますか?」

「ああ。地面に光を放つんだが、この光は強いモンスターの側を通ると光を増すんだ。攻撃性能は無いんだが、こうしてダンジョンに向かって使うことで、中に居るモンスターのおおよその強さを測れる」

「あー、それでさっきBとかCとか言ってたんだな! それがこのダンジョンの難易度ってことか!」

「とはいえ、おおよそだ。聖魔導士の技量によってぶれるし、まれに低ランクなのに高ランクのモンスターが混じっていることもある。冒険者ギルドおかかえの聖魔導士だって、100パーセント正確にはできない」

「う……身に覚えがあるであります」


 事実、ミカが入る前に青空の尻尾では冒険者ギルドでランク付けされたDランクダンジョンに挑み、隠し通路を見つけ、Sランクのドラゴンに出会ってしまっている。


「本来ならダンジョンを見つけたら冒険者ギルドに報告して、神学院を卒業した、冒険者ギルドおかかえの優秀な聖魔導士にダンジョン判定してもらうってのが普通なんだが」


 ミカがちらりとショーティアを見る。いつもの優しい笑顔のショーティア。


「ま、その点は安心だな」

「それでミカ。ダンジョンを見つけたわけだけど、僕たちはどうする?」

「CとかBなら挑んじまってもいいんじゃねーか? たのしそーだぜ!」

「そうでありますなぁ! 誰も足を踏み入れていないダンジョンであれば、古代の遺物、つまりお宝はがっぽがっぽでありますし、モンスターから取れるマナストーンの量も多いと聞くであります!」


 皆、意気揚々とダンジョンへ挑もうとしていた。しかしミカは。


(ダンジョンか……確かに新しいダンジョンは早い者勝ち。攻略できればおいしいはおいしいが……ルシュカやシイカは完全に連携慣れはしてないし、事故が怖い。だがダンジョン踏破へ挑むのが、連携の練習になることも確かだ)


 ミカが悩んでいた、その時。ショーティアが口を開いた。


「みなさん、わたくし達はまだ、ミカさんに連携を教わっている段階ですわ。特にルシュカさんとシイカさんは、入院のため連携の練習に参加できていなかったこともあります。それこそ、ミカさんが居れば攻略はできるかもしれませんが……ミカさんに負担がかかってしまいますわ」

「……確かにそうだね。ショーティアの言う通りだ」

「うう……そう言われると、連携できてない自分がふがいないであります」

「まぁ、しゃーないよなぁ。できるだけミカァには負担かけたくねーし」


 諦めのムードに傾きかけたところで、ショーティアが言葉を続けた。


「そこでミカさん、ご相談ですわ」

「ん、なんだ?」

「思えば、ミカさんと一緒にダンジョンの攻略、というものを行ったことがありません。よろしければミカさんと一緒にぜひとも攻略をしたいのですが……ミカさんにはお手を煩わせてしまいますが……ミカさんが『自分がなんとかしなければ』となった際、すぐにお話頂きたいのです」

「……なるほど」


 ミカはショーティアの提案を理解した。それはつまり、ミカは皆の立ち回りに合わせ、もしも皆の連携が崩壊し、ミカが一人で対応しなければならない状況になりそうなら、話してほしいということだ。


「ミカさんからお話があれば、すぐにダンジョンを脱出しましょう。もちろん、帰還魔法の使用も想定に入れて、すぐにお話ください。わたくしたちは、ミカさんからお話頂ければ、すぐにでも脱出を考えます」

「そうだね。僕たちはまだ……こう言ってはなんだけれど、自分の実力での押し引きができていない」

「そうでありますか?」

「ルシュカなんかは典型的だね」

「ぎえー! クロどの! ひどい言い方でありますよー!」


 ショーティア達の話。それは、できるだけ自分に負担をかけまいという話だ。

 そんな話を聞いてミカは思う。


(……前のパーティでは考えられなかったな)


 以前は。紅蓮の閃光では、とにかく自分に負担が来た。明らかに撤退しなければいけない状況。その状況を進言しても無視され、挙句攻略失敗の責任を押し付けられた。追放されたのも、それが契機だ。


「あとミカァ、ウチ聞いたことあるんだけれどよ? サポートヒーラーってのは、本当は一歩下がったところからパーティの状態を見る、司令塔みたいな立場だって聞いたぜ。ウチらはミカァのこと信頼してっし、進むか戻るか、そこはミカァの判断に任せるぜ! あ、でもたぶんウチらも意見するから、それは聞いてくれよな!」

「そうか……あはは」


 ミカは自分の頬をかいた。

 サポートヒーラーの本来の役割。それがまさか、アゼルの口から聞けるとは思っていなかったからだ。


「わかった。今日使う予定だった道具も残ってるし、このままダンジョンに潜っても大丈夫だろう。みんな、準備ができたら行こう」

「おー! やったぜ! 頑張らねぇとな!」

「ふふ……ミカさん、ありがとうございます。シイカさんも喜んでいますわ」


 ミカはそこで気づく。見れば、ショーティアの隣にいつの間にかシイカの姿が。


「いつの間に居たんだ……」


 シイカは小さく「にゃ」とつぶやくと、ミカに向かって両手でピースさんを作った。


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