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中編:ダンジョン攻略とサポートヒーラーの思い出 その1

ここからは3つほど中編を。

幕間となります!

 それはある日の昼のことだった。


「ふぃー! 今日の依頼も楽勝だったな!」


 ヴェネシアートから少し離れた場所にある街道。古い煉瓦の敷き詰められた、いわゆる旧道と言われる道。その上を、アゼルが歩いていた。

 アゼルだけではない。その後ろには、青空の尻尾の面々、全員が歩いている。


「そうでありますなぁ! 自分も三回ほど被弾しただけであります! これは褒められてもいいのではないでありますかミカどの!」

「その内2回はいつもの痛み好きが発症した無駄な被弾だな」

「う……も、申し訳ないであります」

「まぁ、慣れてけばいい。急ぐ必要は無いんだ」

「ところでミカ。僕の立ち回りはどうだったかな?」


 今日の立ち回りを振り返るミカとクロ、そしてルシュカ。その背後には、周囲をきょろきょろと見渡すショーティアが。


「あらあら」


 ショーティアは街道沿いに生えた木々の間に何かを見つけた。そこには、木の陰から顔をのぞかせたシイカが。

 シイカはショーティアの視線に気づくと、ビクッと体を震わせて素早い動きで木々の間を移動しながら隠れた。


「あらあら。シイカさん……」

「お? ならいっちょうちが引っ張りだしてやろうか?」

「大丈夫ですわアゼルさん。シイカさんはシイカさんらしく、無理強いはさせたくありませんわ」

「そうだなぁ。そうそう。シイカの毒は今日めっちゃ役に立ったぜ! あの恥ずかしがりのおかげで、敵の背後を取るのは得意みたいだなシイカは」

「本当……Bランクの依頼をこなせるとは思っていませんでしたわ。ミカさんのおかげですわね」


 ショーティアの言葉に、ミカが反応する。


「ん? ショーティアさん、呼んだか?」

「ふふふ、ミカさんのおかげでBランクの依頼がこなせたと話していましたわ」


 今日、青空の尻尾の面々は、全員で一つの依頼をこなした。

 それはBランクの、比較的強めな害獣の駆除依頼であった。

 パーティランクがCに上がったこともあり、一度Bランクの依頼に挑戦してみようと話にあがったのが一昨日のこと。

 皆入念な準備を行い、Bランクの依頼に赴いた。しかしミカの的確な指示などもあってか、準備した消耗品などをほとんど使うことなく、こうして依頼をこなして帰路についている。


「何度ミカには感謝してもしたりないよ。ありがとうミカ。キミのおかげだ」

「いや。今回俺は指示はしたが、Bランクの依頼をこなせたのは個々の力だ」

「そう謙遜なさらずとも、ミカさんは実際すごいでありますよ! さすがは元Sランクであります!」

 

 と、皆が談笑しつつ歩いていたときだ。


「……ん?」


 ミカは足元の揺れに気づいた。ミカだけではない。周囲の皆も、その揺れに気づいき、戸惑っていた。

 その揺れは次第に強くなると、ミカの足元、街道とするために、煉瓦の敷き詰められた道が盛り上がり始めた。


「皆、離れろ!」


 ミカの言葉に、メンバーが散開した。

 目の前で起きている光景に、アゼルが驚愕する。


「な、なんだってんだこれ!? 地面が、地面が!」

「あらあら、あらあらあらあら」

「あわわわわわ、い、異常事態でありまーす! と、逃走準備でありまーす!」


 慌てる面々。しかし、その中に落ち着いているのが二人ほど。


「これは……もしかして」

「お、知っているのかクロ」

「ああ……本で読んだことがあるよ。ダンジョンが生まれる瞬間の話を」


 盛り上がった地面は、どうやら地面から何かが出ようとして盛り上がっていた。

 それは岩。だが、ただの岩ではない。岩の一部は空洞になっており、その空洞には階段が。地下深くへと続いているであろう、階段が存在した。


「クロ、よく知ってるな」

「やっぱりこれは」

「ああ。ダンジョンが今まさに、ここで生まれたんだ」


 揺れが収まると、そこにあったのはダンジョンの入り口だ。何もない街道であったところに、突然ダンジョンが現れた。

 ミカはダンジョンの入り口、その側面の壁に触れて話す。


「珍しい話じゃない。ダンジョンには二種類あってな。古代から存在する建物や洞窟。固定型なんて呼ばれているな。だがそういうダンジョンは9割は探索しつくされている。今、冒険者たちにとってメジャーなのは、こうして突然地面から現れるもの。突発型と呼ばれてるな」

「うへぇ! マジかよ! ダンジョンが現れるところなんて初めて見たぜ!」

「まぁ、そうそうお目にかかれるものじゃないしな。このタイプのダンジョンは突然現れ、そしてある日突然消える」

「消えるでありますか?」

「ああ。不思議なことに踏破されたダンジョンは、中に冒険者が居らず、誰も入り口を見ていないとき。それこそ目を話したうちに消える、なんて言われてる」

「そうですわねぇ……確かに、冒険者ギルドなどで、ダンジョンが消えたというお話は聞いていましたわ。『マナストーンを稼げるダンジョンだったのに』と悔しがっていましたわ」


 物珍しそうに、ダンジョンの入り口の壁に触れるアゼルやルシュカ。そんなとき、クロがミカに問いかけた。


「ミカ。本に書いてあったけれど、この突発型のダンジョンは、何で現れるかわかってないらしいね」

「ああ。良く知ってるな。少なくとも、600年前までは突発型のダンジョンは存在しなかったらしい。突然現れるようになったとか。古代の技術が地下で悪さしてるなんて研究もあるが、実際のところ、現れる要因は不明だ」

「でもでも、ダンジョンのモンスターからはマナストーンが沢山取れるであります! ウマウマであります!」

「そうだな。マナストーンは基本ダンジョン産のモンスターしかドロップしない。だからこそ、ダンジョンを攻略する俺たちみたいな冒険者というのが生活していけるんだけれども」


 そんなとき、ダンジョンの前に立ったショーティアが杖を持った。その様子に気づいたミカは。


「お、ショーティア。もしかして使えるのか?」

「さすがミカさん。ご存じですのね」

「お? なんだなんだ? ウチに秘密で何かするつもりか? なにやるんだ?」

「聖魔導士のスキルの一つだよ。まぁ見てるといい」


 ショーティアが杖の先を地面につけ、そのまま膝をつく。目をつむり俯くと、祈りの言葉を口にした。


「偉大なる全能の神……母なるイデアよ……迷える我らのゆく道に……導きの光を……プロヴィング!」


 その言葉と共に、ショーティアの体に光が纏い、同時に杖を離す。そして空いた手のひらを地面につけると同時、ショーティアの体に纏っていた光が地面へと吸い込まれた。

 その数秒後。地面から消えた光が、まるで地面から吹き出すように放たれた。


「わわわ! なんでありますか!」

「キミはちょっと慌てすぎだ。ま、僕も本で読んでなければ慌てていただろう」


 光が収まり、ショーティアが「ふう」と息を吐いて立ち上がった。


「ショーティアさん。この感じだと、大体CからBか?」

「ええ。さすがはミカさんですわ」

「なぁなぁ待ってくれよー! 何をやったか教えてくれよ!」

「自分も知りたいであります! 何をやったでありますか!」


 すると、一呼吸置いてから、ミカが話始めた。


「聖魔導士のスキルでな。言ってしまえば、ダンジョンの鑑定だ」


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