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3話 ドラゴンとミカ&ねこみみ少女の戦い

 ドラゴンは部屋の隅を睨みつけている。そこには、複数人のリテール族の少女たちがうずくまっていた。

 ドラゴンが大きく息を吸う。それは火球を放つ予兆だということを、ミカは知っていた。

 全力疾走したミカは、少女たちの前に立ち、火球を迎え撃つ。


「あ、あなたは……」


 全身を傷だらけにした、リテールの少女の一人が口にした。身に着けているのは聖職者の衣服。おそらくは聖魔導士、メインヒーラーであろう。


「話はあとだ!」


 ミカは倒れている少女たちを確認する。

 全員がリテール族の少女だ。かなり珍しいパーティであるが、気にしている暇はない。

 3人がまだ意識を保ち、1人が倒れ伏したまま動かない。1人が瀕死だ。動けるのは誰かを確認する。

 まず一人目。銀色の鎧に、ブロードソードと盾。剣を地面に突き立て、なんとか立とうとしている、褐色肌で、赤髪のツンツンヘアーの彼女はパラディン、つまりパーティの盾となる存在、『タンク』だろう。

 二人目。黒いコートに身を包み、メガネをかけ、前髪がぱっつんとした黒く長い髪の少女。持っているのは攻撃用の魔導書。これは無属性の攻撃魔法を得意とするソーサラー、いわゆる『魔法アタッカー』だ。

 三人目。肩にかかるくらいのゆるふわブロンドヘアー。髪には若干ながらウェーブがかかっている。彼女が先ほどの聖魔導士、『メインヒーラー』。

 3人は傷つき、立つことさえできない状況のようだった。


「おい、そこのキミ! 危ないぞ!」

 

 ソーサラーの少女が、ミカに言い放つ。瞬間、ドラゴンがミカに向かって炎を吐いた。だが、ミカはそれよりも早く魔法障壁を周囲に展開する。迫りくる火球の猛威をバリアで防ぎ続けるミカに、パラディンの少女が感嘆した。


「す、すげぇ……あんた何もんだよ!」


 そんな少女たちに向かって、バリアを張り続けながら叫ぶ。


「そこのソーサラー!」

「な、なんだい!?」

「攻撃する暇もなかったはずだ。魔力はまだ存分に残っているだろ!? ソーサラーなら、魔力譲渡の術が使えるはずだ! その聖魔導士に!」

「は、はい! わ、わかったよ!」


「次に聖魔導士!」

「わたくし、ですか?」

「魔力をもらい次第、魔力燃費の良い範囲持続回復魔法を使え! その後、ありったけの魔力で簡易蘇生魔法を倒れている奴に使うんだ! じゃないと、そいつ死ぬぞ!」

「わかりました……頑張ります!」


「次にパラディン!」

「お、おうよ! 何だってんだ!」

「持続回復魔法でお前はある程度傷が治り、動けるようになるはずだ! そしたら剣も盾も鎧も投げ捨てて、倒れている奴を担いで逃げろ!」

「よ、鎧まで!?」

「恥じらってる場合か! お前がこの中で一番力が強いんだ! タンクらしく仲間を守れ!」

「守る……おうよ!」

「あと……」


 ミカが話している最中、火球を防ぎ続けたバリアにひびが入り始める。

 

「ドラゴンには絶対食われるな。こいつは、腹の中で呪いをかけ、飲み込んだ奴を眷属っつう同族にしちまう、やばいタイプのやつだ。そして」


 ミカのバリアが、割れる。その瞬間、ミカはバリアで弱まった火球に対して、攻撃魔法を放った。


「Aランクモンスターの攻撃でびくともしないバリアを割る、Sランクのモンスターだ……くらえ、グリモアショット!」


 即座に攻撃呪文を唱えるミカ。ミカの放った攻撃魔法は火球を貫き、ドラゴンの顔に当たった。


「すげぇ! 怯ませやがった! あんたかなり強い魔術師だろ!」

「魔術師じゃない、ヒーラーだ」

「嘘つくなって! ヒーラーがそんな攻撃できるわけないだろ!」


 ミカの攻撃は確かにドラゴンに対して有効打となった。だが、直前でミカの攻撃を予知したドラゴンは、頭を動かし、直撃には至らなかった。


「はは、この知性、S+ランクはあるかもな。俺が来るまで、よく彼女たちは持ちこたえたもんだよ」


 しかし、この攻撃でドラゴンの狙いはミカへ向いた。

 すぐに攻撃を開始したいが、このままでは少女たちを巻き込んでしまう。まずは逃がすことが先決だ。


「今だ!」


 ミカへドラゴンが爪を振り下ろす。ミカはそれを瞬間的にバリアを張り、何度も防ぎ続ける。

 その間にミカの指示した通り行動した少女たちは、出口へとむかって駆けだしていった。


(よし、彼女たちを守りながらならともかく、1対1なら倒せる相手だ……)


 ミカがそう考えていた時。


「うわぁ!!」


 叫び声。見れば、ソーサラーが出口付近で転んでいる。

 その足には傷。よほど深かったのだろう。持続回復魔法でも回復しきれていなかった。

 歩けるくらいではあったが、足の傷故、ドラゴンの攻撃で散らばった岩の欠片に、足を取られてしまっていた。

 ドラゴンがソーサラーの叫び声に反応し、そちらへ向かい始めた。そして、立ち上がろうとしているソーサラーに向かって、口を開く。


「う、うわあああああ!」


 ソーサラーの悲鳴が聞こえた、その瞬間。


「間に合えええええ!!!!」


 ミカが横からソーサラーを突き飛ばした。ミカの体は、ソーサラーの代わりに、ドラゴンの口の中。体内へと収められてしまった。


(く、食われた、のか!?)


 ドラゴンの胃の中。潤沢な魔力で満たされた胃液の中。漂っているのは、ミカと、ソーサラーの髪の毛。おそらく、突き飛ばした瞬間、長い髪が一部だけ噛みちぎられたのだろう。

 ミカは体に違和感を感じた。まるで、体に魔力を埋め込まれるかのような感覚。


(眷属……にされる、のか……?) 

  

 体が変質してゆくのがわかる。体が押しつぶされるように、縮んでいっているような、そんな感覚。

 耳が頭の上の引っ張り上げられる。背中に、知らない感覚。おそらくは、尻尾だろう。


(まだだ……ドラゴンの眷属になんてなってたまるか……)


 ミカは手にしていた魔導書に、ありったけの魔力を注ぎ込み、心の中で呟いた。


(魔法障壁……出力最大!!!!)


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