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14話 サポートヒーラーと旧パーティリーダー

「うめぇうめぇ! ミカァの料理に及ばねぇが、このドーナツも十分うめぇ!」


 『青空の尻尾』パーティが、海軍と特別契約して数日後、海軍から支給金が出たことで、ミカはこれまで購入できなかった素材を、町に買いに来ていた。

 この町は交易の盛んな首都である港町。ミカはこれまで金欠のため、購入できなかった品々を買いに来ていた。

 これに荷物持ちとして買って出たのが、アゼルだ。

 ミカとアゼルは、港町でも有名なカフェで小休止をとっていた。


「アゼル、もう70個目のドーナツだぞ。よく食うな」

「うめぇもんはうめぇ。ここの名物みたいだしなー、うめぇうめぇ。そういえばミカァよぉー。お前の製作したもん売れば、金欠にはならなかったんじゃねぇのか?」

「物を売るには名前が必要なんだ。どことも知れないDランク冒険者や、パーティ追放されたSランク冒険者の作ったもんなんて、そうそう売れないもんだ」

「ふーん、そういうものなのかぁー?」


 ひたすらにドーナツを食べ続けるアゼル。

 そんなアゼルに、ミカは尋ねてみた。


「そういえばアゼルはなんで冒険者に?」

「んー? ウチか? ウチは王都の隅っこにあるスラムで生まれたんだぜ。貧乏だけど、そこそこ楽しんでた。7歳くらいだったか? ある日友達と戦いごっこしてたら、それを偶然見てた、自称『元王国騎士団騎士団長』の師匠に出会ってよぉー、才能あるってんで、面白そうだから弟子入りして訓練したっつー話だぜ」

「そ、そんな経緯があったんだな……」


 アゼルの右手の甲には、パラディンを表す紋章が光輝いている。

 パラディンは正式名称、聖騎士と言う。かつては神殿を守る使命を王から与えられた騎士をさす言葉だったという。

 それが長い時を経て、何時しか『祝福の紋章を宿し、剣と盾で人々を守る者』という意味となり、それが今では一つのクラスとして扱われるようになっていた。


「その紋章は師匠から?」

「そうだぜ。師匠のよくわからねぇ儀式が終わったらくっついてた」


 パラディンになれるのは、聖魔術教会に認められ、儀式を終え、聖なる紋章を宿した者だけだ。

 本来であれば、教会の元で数年、厳しい修行に耐えねば与えられないものだ。逆に、修行に耐えて実力を付ければ、12歳前後でもパラディンになれると言われている。

 昨今では聖魔術教会に腐敗が進んでおり、金さえ積めば儀式を受けられる、という話もある。


(確かにアゼルは猪突猛進だが、剣術の腕は悪くない。盾の扱いも上手かった。連携はまだ慣れてない感じがあるが、単体のパラディンとしては強い。単体で見ればCからBランクはある。しかし……儀式を行えるのは、高名な聖魔導士、もしくは熟練のパラディンのはずだが)


 アゼルの証言が正しければ、その師匠は本当に元騎士団長なのかもしれない。

 

「それで、その師匠は?」

「んー? 今なにしてっかなー。修行があらかた終わったから、ウチに連携を覚えろっつってさー、王国騎士団に入ってこいって言われてなー」

「ってことは、元王国騎士団なのか?」

「いちおーなー。つっても、山での訓練中に、美味そうな鹿を見つけて追いかけてたら迷子になってさー、二ヶ月山で暮らしてから戻ったら、脱走扱いでクビになってた。騎士団長もウチが生きててめっちゃ安心してたけど、さすがに二ヶ月音信不通だとクビにせざるを得ないって言われた。ケチんぼだよなー」

「いや、二ヶ月ってヤバいな。そりゃクビになるって」

「師匠のところに戻ったらめっちゃ怒られた。Aランク以上の冒険者になるまで戻るなって。んでてきとーに色んな街まわってたらヴェネシアートのあたりでショーティアに会って、パーティに誘ったんだぜ」

「お、おう」


 ミカは思う。このタフネス、ある意味タンクに向いているかもしれない、と。


「そ、そろそろ行こうかアゼル」

「お? でもなぁ、もっとドーナツくいてぇ。実はこの店の最高記録狙ってんだぜ!」


 店の壁には、似顔絵の書かれた張り紙があった。どうやら、この店での一度に食べたドーナツの最高記録は300個だとか。ついでに食べた人らしき、オレンジ髪の女性の絵も描かれている。

 すでにアゼルが食べたドーナツは90個を越えていた。このままでは予算オーバーすると睨んだミカは、懐から小さな袋を取り出した。


「ほら、俺の作ったシナモンスティックだ。小腹が減ったときのために持ってきたが、やるよ」

「マジでぇー! やったぜ! お前のが食えるなら、ドーナツはいいや!」


 アゼルが袋からシナモンスティックを取り出すと、そのあまりに香ばしい香りに、カフェの人々の視線が集中した。

 そして、どこからともなく、カフェの入り口からコック帽をかぶった老齢の男性が現れ。


「こ、この香りはシナモンスティック! この香りは……間違いない、間違いなくワシ以上……四つ星級の香り……間違いない! あの時のマドレーヌの作り主と同じ! どこじゃ! この香りはどこから来ているのじゃ!」


 突然現れカフェの中を歩き回りだす老人。


「あ、ミカァ、あれが例の三ツ星コックじゃねーのか?」

「い、いいから、面倒くさいことになる前に行くぞ!」


〇〇〇


「うーん……」


 ミカは途中でアゼルに荷物をまかせて帰宅させ、町中の冒険者ギルド支部へとやってきていた。

 冒険者ギルドは、バレンガルド王国が管理する冒険者のためのギルドだ。

 冒険者ギルドには、冒険者に対しての様々な依頼や、ダンジョンの情報などが掲示板に掲載されている。

 この海洋国家ヴェネシアートも、バレンガルド王国の属国。ゆえに冒険者ギルドも当然のように存在する。


「この依頼はBランク……俺のサポートを最小限にするとしても、3人でクリアは難しいだろうか。たしか入院しているという残りの2人のメンバーは、退院までもう少しかかるらしい。5人いればBランクも連携次第ではいけそうだが……そもそもランク的には受けられないな……」


 ミカは掲示板に貼りだされた、冒険者への依頼を見ていた。

 今ミカたちのパーティに必要なのは連携。自分たちでも力になりたいというメンバーたち。それには、何よりもまず連携力が必要だ。

 連携力はモンスターや強力な害獣と戦ったり、依頼をこなすなどをしなければ養えない。ゆえに、ミカは自分の力を最小限にしたうえで、3人がこなせそうな、討伐系の依頼を探していた。


「ダンジョンに乗り込んでモンスターを倒して『マナストーン』で稼ぐのもありだが……ダンジョンに乗り込むのはまだ早いよな」


 マナストーンというのは、ダンジョンに生息するモンスターから取れる、この国の主要エネルギー源だ。集めたマナストーンは、冒険者ギルドで買い取ってもらうことができる。

 しかし、依頼とは違い、ダンジョンでは何が起こるかわからない。故に、戦う相手がある程度決まっている、討伐系の依頼をミカは受けようとしていた。


「お? この依頼は良さそうだ。農場に現れた、Cクラス害獣の退治依頼か」 


 ミカたちのパーティは、海軍と特別契約しているとは言え、冒険者ギルド上ではDクラス。Dクラスの場合、DかCランクの依頼しか受けられなくなっている。

 良さげな依頼を見つけ、掲示板から依頼書を取ろうとしたミカであったが。


「邪魔だ。どけよ」


 突然横から、手にした依頼書を無理やり奪われてしまった。


「おい、何をする……!?」


 無理やり依頼書を奪った相手を見て、ミカは驚いた。


「お前は……」

「おいおいリテールのお嬢ちゃん。Sランクパーティの冒険者にそんな態度して良いと思ってんのか?」


 高圧的な態度でミカを見下してきたその男。

 その男の名はドランク。かつてミカが所属していたパーティ、『紅蓮の閃光』のリーダー、その人だった。


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