19話 猫耳パーティと作戦会議 その2
アゼルとシイカの全身イラストを、「キャラクターイメージ(イラスト)」へ追加しました!
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シイカのフルネームに、その場に居た皆が驚いた。それはもちろん、ミカも含めた。
「シイが!? 確かに……」
ミカは思い出す。確かにシイカは、はっきり言って冒険者としてのアサシンの実力はそこまで高く無い。改善してきているとはいえ、何よりも立ち回りがまだイマイチだ。
だが、それ以外ではどうか。事実、シイカはアサシンの町から徒歩でヴェネシアートへやってきたという。
アサシンの町はヴェネシアートからは遠く離れている。いくら潜入のために長距離移動が得意なアサシンでも、そうそう簡単に来れる距離ではない。
それ以外でも、Sランク冒険者であったリーナやミカ自身が、シイカが側に移動したことに気づかないことも多々あった。少なくとも、気配を消す能力にかけては高い実力を持つ。
アサシン用の道具の整備や、状態異常の薬を作ることにも長けている。それ以外にも、ダーツの腕前は針の穴を通すレベルで正確だ。
そう、シイカは『冒険者向けではない、元来のアサシンの技術』に長けている。
「ほっほ! まさかお主が! それが事実であれば、並のアサシンに頼むより頼りになるかもしれぬの。して、実力のほどはどうなのじゃ?」
グレアドスがシイカに尋ねると、シイカはダーツを瞬時に部屋の一部に投げた。そのダーツは、部屋の扉に付けた鍵穴に、ものの見事に刺さっている。
「ふむ、実力は本当のようじゃ。頼めるかのう?」
と、グレアドスがシイカに握手の手を差し出したところ、シイカはビクッと体を震わせ、そのまま素早い動きで、音で表すなら『サッ、サッ、ササササッ』というように、室内のカーテンに隠れてしまった。そしてカーテンから顔を出したシイカは、ミカやショーティアの顔を見る。
「……にゃ」
それは、まるで二人からの声を待っているかのようだった。それを見たミカは。
「ショーティアさん、良いか?」
「ふふ、シイカさんがあれほど乗り気なのは、珍しいですわ」
「だな。シイ、頼めるか?」
ミカがシイカに尋ねると、カーテンから上半身だけ出したシイカは、右手の親指を立てて鼻息を荒くした。
「むふー」
「ほっほ。しかし問題は尽きぬ。この牢獄にはサレナ・アリアルトという若い女性騎士がおってのう。そやつが直近では潜入した侵入者を全て捕まえておっての……」
その言葉に反応したのは、アゼルだった。その女性騎士の名前を聞いたアゼルは。
「ん? ああそいつならウチにまかせてくれ。そいつはな……」
………………
…………
……
そうして、続けてグレアドスはゼフィランサス牢獄を破るためのいくつもの問題点、困難な点を皆に説明した。
『牢獄全体に魔法障壁があってのう、これが強固なものなのじゃ……』
『実はかつて城であったこの牢獄には隠された地下道があってのう。とある条件を満たすと通れるのじゃが……』
だが、ミカ達はグレアドスの出したこの問題点、それをグレアドスが提示した方法よりも、圧倒的に良い解決策を出した。
ミカ達が提示した解決策を聞いたグレアドスは感心し。
「ほっほ。アンジェリアナがお主たちを気に入ってた理由がわかったわい。なるほど、面白い子猫たちじゃのう」
青空の尻尾というパーティを褒めたたえた。
そして、ミカはショーティアと顔を合わせ、会釈した。するとショーティアは、改めて青空の尻尾の皆に尋ねた。
「みなさん。これはとても危険なことです。王女様と助けるためとは言え、わたくしたちはこの国の法を犯そうとしています。それでも、わたくしは絶対に王女様を助けたいと考えております。ですが、それはわたくしの考え。皆さんに今一度お伺いします。本当によろしいですか?」
ショーティアのその言葉を、否定する者は誰一人として居なかった。
「あたしだって実質、王女様に助けられたものね。この体だから殺されても文句ないのに。ま、傭兵舐めないことね。これでも汚れ仕事は得意よ」
「僕の力が少しでも役に立てば、それは嬉しい。僕はついてゆくよ」
「自分ももちろんであります! 悪いことしてないのに悪いって言われてる王女様が可愛そうであります! 助けるでありますー!」
「……むふー」
「ほっほ! 心強いのう!」
「アンジェラのために……アンジェラの友として、感謝する」
それぞれがショーティアの言葉に答え、グレアドスや提督と共に、意気揚々と話す。そんな最中、アゼルはショーティアに近づき、そばに居たミカを巻き込んで肩を組んだ。
「わっ!? アゼル?」
「アゼルさん、いかがいたしました?」
「もちろん、ウチだって皆と同じだぜ。それに」
するとアゼルは二人にだけ聞こえるように小声で言った。
「ショーティアと血のつながっていて、それでいて良い奴。助けねぇとな」
「え……」
「アゼルさん……?」
「ま、気づいてるのは、ミカッ意外じゃウチだけだぜ。話さねぇから気にすんな」
すると、アゼルは二人の背中をポンと叩くと。
「ショーティア、気づかれたくねぇなら、ネックレスはあまり人に見せんなよ?」
そう言って、意気揚々と話す皆の中に入っていった。
「……なぁショーティアさん」
ミカはショーティアに、あることを尋ねようとする。だが、ショーティアはミカが何を尋ねようとしているかをわかってか、すぐに答えた。
「話していませんわ」
「そうか。よく気づいたなアゼルは」
そして数分が経ち、皆が落ち着いてきたころに、ミカが改めて皆に言った。
「よし皆。すぐに発つ準備だ。提督頼みたいことがある」
「わかっている。私の所に来た理由。この件を共有することが一つ。そして作戦に不足があれば、私が調達する力になるのが二つといったところだ。見たところ、不足しているのは一つだけだな」
「ああ。ゼフィランサス牢獄はここから遠く離れている。最速の騎乗空竜を借りたい。青空の尻尾の全員が乗れるほどの」
「まかせておけ。だが、途中で休憩を挟むことも含めて、ここから三日から四日はかかる」
「わかってる。グレアドスさんの話では、一週間は時間があるそうだが、それ以降は何時処刑が執行されるかわからない。処刑が執行される際は、ゼフィランサス牢獄から離れた『王家の園』という場所で行われる。そうなれば今よりもっと警護が厳しくなる。アンジェラがいつどうなるかわからない今、最速で向かう必要がある」
「なるほど。何時発つ」
「朝一番、市場で必要な素材を買って来る。つまりはその後。明朝だ」
「承った。手配しよう」
そう言った提督に、ミカは笑顔を向けて言った。
「俺たちが必ずアンジェラを助ける。だから提督は、このヴェネシアートのために、職務を全うしてくれ。アンジェラを助け出したあとも、力を借りることになるからな」
そして自分の胸を叩き、ミカは言い放った。
「俺たちにまかせろ」
その言葉を聞いた提督は、おもむろにミカ達青空の尻尾に体を向けると、そのまま頭を下げて言った。
「……私の親友を、頼む」
〇〇〇〇〇
『ミカどの! 素材は何々必要でありますか!』
『皆に手分けして頼む。市場が開いたらすぐに……』
そうして執務室から、準備のために青空の尻尾が居なくなってすぐ。
執務室に残っていたグレアドスと提督。
すると、グレアドスは魔針計を見て、首をかしげていた。
そんなグレアドスに、提督が尋ねる。
「いかが致しました?」
「ふむぅ……魔針計の針がのう、先ほどから調子がおかしいのじゃ」
魔針計の針が、何か強い反応に引かれるように、執務室の外、ミカ達が歩いているであろう廊下を刺していた。
強い反応を示す魔針計に、グレアドスはため息をつきながら、呟いた。
「これほど強い反応。まさか彼女らの中に王族がおるわけも無かろうて……修理せねばならんのう」




