12話 猫耳パーティVSキマイラ
第47部分のキャラクターイメージ(イラスト)にミカの全身イメージを追加しました!
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「チッ。せっかく騎乗空竜から一発で仕留めようとしたのによ。避けやがった」
皆の前に突然現れたのはドランク。そう、ミカが元居たパーティであり、元Sランクであったパーティ、紅蓮の閃光のリーダーだ。
しかし、本来はここに居るはずがない。それについて、リーナが問い詰める。
「あんた、この子達に悪さして捕まったって聞いたけど、何でここに居るのよ」
するとドランクはリーナを見て少し考えこむと、何かに気づいたかのように言った。
「なんだ、リーナか! あいつから聞いてはいたが、まさかお前が居るとはな。もしかしてお前はこのパーティに入ってるのか?」
「ええ。紅蓮の閃光なんて最低なパーティより、よっぽど良いパーティよ」
「ほーん。お前を連れて帰ったら、あいつも喜ぶかもな」
「……悪そうな事を考えてるみたいね」
そして、リーナはちらりとクロの方を見る。ドランクに剣で斬られた傷は、半ばではあるが治療されていた。
そして、リーナはドランクに言い放つ。
「ガリ猫を傷つけるなんて、あんたを絶対に許さないわ」
するとその時、どこからか投げられたダーツが三本、ドランクの首元に刺さった。
「ぐおっ!? アサシンの暗器か!?」
「……にゃ」
「チッ……痺れ薬と目つぶし薬か。体がしびれやがる……目がかすむ……」
少し離れた場所で、シイカがドランクを睨みつけている。
そしてすかさず、アゼルがドランクの背後に回り、ドランクを羽交い絞めにした。
「おっとぉ!? なんか知らねぇけどよ。お前は捕まったはずだ。もう一度お縄につかせねぇとなぁ! それに、ウチらの大切なパーティメンバーを傷つけるなんて、ぜってぇ許さねぇ! ルシュカ、頼む!」
「わかったであります! このまま気絶するであります!」
ルシュカはクロをショーティアにまかせ、斧を手に取った。
斧の側面、平らな部分をドランクの頭に打ち付ける。
ベルセルクは相手をひるませたりすることが得意なクラスだ。ゆえに、人間を気絶させる力加減もお手の物だ。
確実に人間を気絶させるであろう衝撃で、ルシュカはドランクの頭を斧で叩いた。しかし。
「……ふー、案外痛くねぇな」
「な!? なんで気絶していないでありますか!?」
ドランクは気絶していなかった。それどころか、痛みさえ感じていない様子だ。
そしてその様子を見たリーナが、顔を真っ青にして、皆に言い放つ。
「皆、離れなさい! こいつは……ドランクは!」
そのとき、ドランクの手によってアゼルの腕は振り払われた。そして、首をコキコキと鳴らしたドランクは。
「嬉しいな。思ったより強くなってるようだ。あいつも言ってたし、さっさと始めるとするか」
すると、ドランクは手にしていた剣、その先端についたクロの血を舐めた。
「しかし、この匂いは……全員処女とはな。この条件も面倒くさいが、手間がはぶけた」
クロの血を舐めたドランクの姿が変わって行く。
体が肥大化し、その背中から翼竜のような羽根が生える。
肥大化した体が鎧を破壊し、その下から山羊を思わせる毛だらけの肌が現れる。
背中には尻尾が現れた。その尻尾は、リテール族が持つような尻尾ではない。それは二体の蛇。蛇の頭だ。
そして頭部。頭部も変化を遂げた。その頭部は、人と獅子を掛け合わせたかのような姿。
ドラゴニュートのような、人のように二本足で立つ姿。そして獅子の頭、山羊の胴体、蛇の頭を持った尻尾。その姿を見て、クロが呟いた。
「キマイラ……キメラの語源になった、複数の生物が合わさった外見を持つモンスター……でも、人型じゃないはずだ……」
「あたりまえよガリ猫。だってこいつは、同じだもの。あたしと同じ」
すると、キマイラの獣人の姿となったドランクは、手にしていた剣を投げ捨てた。
『ふん、もはや武器なぞ邪魔だな。あの時はよくも俺をコケにしてくれたな。存分にいたぶってから殺してやる』
その姿の変わりようを見て、リーナは言った。
「キメラ術式ってやつね。あたしがされたのと同じ。でも、随分と意識を保ってるのね」
リーナと同じ。その言葉を聞いたショーティアは。
「リーナさんと同じと言うことは……」
「ええ。相手はSランクか、それ以上の相手。間違いないわ」
Sランクモンスターとの対峙。何度か青空の尻尾ではSランクモンスターと対峙していたものの、今回は今まで以上に危険な状況だった。
その事について、アゼルがリーナに尋ねる。
「おいリーナ。今の状況、最悪だよな」
「ええ。ミカッが居ないもの」
「リーナはこいつに勝てるか?」
「無理かもね。この姿になった今のあたしの強さは、良くてAランク上位。それにあたしはミカと違って、飛びぬけた強さは持ってなかったわ。元の姿でも勝てないと思う」
「あわわわ、ど、どうするでありますか!?」
一番強いのはおそらくリーナ。しかし、せいぜいAランク上位の強さ。あとの皆は、BからC程度の強さ。とうてい勝ち目はない。
「わたくしたちでは勝つのは難しいですわ……ですが、逃げるのも……」
「さすがリーダー、まわりが見えてるわね。見たところこいつは空を飛べる可能性が高いわ。羽根があるしね。逃げるのは得策じゃない。各個撃破されるわ」
「リーナ。なら僕たちが出来ることは」
逃げるのは難しい。勝つのも難しい。それならば、出来ることは一つ。
「ミカッが来るまで時間稼ぎよ」
『ったく、小声でこそこそとよ。話は終わったか? それじゃ、さっさとあの世に行け』
そう言い放ち、ドランクが大きな爪でリーナに斬りかかった。だが、ドランクの前にアゼルが立ちふさがる。
「その爪程度なら、こうだぜ!」
ドランクの爪をタイミングよく盾で弾いたアゼルは、すかさず魔力のこもった剣でドランクの肩を刺した。
「痛み数倍だぜ! どうだ!? ウチと遊ぶ気になったか!?」
だが、アゼルの攻撃でドランクは一切ひるまない。さらにもう一度、爪でアゼルに斬りかかった。
「くっ……セイントスキン!」
「ファストヒールですわ!」
アゼルがすかさず防御魔法を唱え、攻撃に合わせてショーティアもヒールを行った。
爪でアゼルの体が切り裂かれる。致命傷には至らなかったものの。
「ぐあっ!」
「アゼルどの!」
アゼルの傷は深かった。あまりに実力に差がありすぎた。
なおもアゼルに斬りかかろうとするドランクであったが。
「ウオオオオオ! 化け物! こっちであります!!!!」
ルシュカがベルセルクのスキルである、『本能を刺激する叫び』を行った。それを聞いたドランクが。
『クソが……なんて耳障りな……てめぇから始末してやる……!』
その爪の矛先をルシュカへと向けた。
「アゼルどの! こいつの敵視は自分が稼ぎやすいようであります! 自分がメインタンクを張るであります!」
「わかった! ならウチはオフェンスタンクで行く。頼んだぜルシュカ!」
ルシュカがドランクの攻撃を斧で受け止める。すかさず、ショーティアはルシュカに持続ヒールをかけた。
「わたくしがルシュカさんを支えます!」
「たすかるわ! あたしはルシュカッを援護する! ガリ猫は……」
そうしてリーナはクロの方を見た。傷が完治しかけているクロであったが、何かを考え込んでいる様子。
そしてクロは、シイカに尋ねた。
「シイカ。色の着いた煙幕か、もしくは粉とか無いかな」
「……にゃ」
シイカが、『とうがらしのえんまく』と書かれた、小さな爆弾のようなものをクロに見せた。
そして、それを見たクロが、次にリーナに尋ねた。
「リーナ。空に投げたこれを撃ちぬけるかい?」
「……なるほど、ガリ猫にしてはやるじゃない!」
するとシイカがその煙幕爆弾を空へと放り投げた。その煙幕爆弾を、リーナが銃で撃ちぬく。
空で赤い煙幕が、花火のように広がった。そしてそれは、海風にさらされて流れてゆく。
『何をこそこそしてやがる。連携も何もなってねぇな。これだから低ランクパーティは』
そして何度も爪でルシュカを切り裂こうとするドランク。明らかに強さに差がありすぎた。三度目で、ルシュカの持っていた斧は弾き飛ばされ、さらにルシュカにまで爪が及んでしまった。
「い、痛いのをもっと……わあああああああ!」
いつもの痛み好きが発動する暇もなく、身に着けていた鎧ごと切り裂かれ、海へと投げこまれるルシュカ。
「ルシュカさん! ファストヒー……」
すかさずヒールをかけようとするショーティアであったが。
『おめぇ、うっとおしいんだよ』
ドランクの爪先がショーティアへと迫る。だが、そんなドランクの手に、かぎ爪ロープが巻きいた。
『ああん? この戦い方、覚えがあるぞ』
そのかぎ爪ロープを投げたのはリーナだ。リーナはかぎ爪ロープを持ったまま、ドランクの周囲を飛び跳ねる。
「この体になって良かったことは、小回りが効くってことね!」
かぎ爪ロープがドランクの体に巻き着いてゆく。そして飛び跳ねつつ、リーナはドランクの体に銃撃を行っていた。
『くっ、いてぇ、この、ちょこまかと……』
「よそ見は厳禁だ。フォトンランチャー!」
さらにクロが魔法をドランクの足へ放った。複数の光弾が直撃し、膝をつくドランク。さらに、シイカがドランクに接近すると。
「にゃ……!」
ドランクの首元を、ナイフで掻き切った。さらにアゼル、そして傷を負っているものの、痛み好きゆえ復帰できたルシュカが、それぞれ剣と斧をドランクの体に突き立てた。
「しつこいんだよお前! そんなんじゃ女にモテねぇぞ!」
「も、もっと痛いの欲しいでありますうううう! もっと! もっとでありますううう!」
そしてショーティアは、ルシュカに持続ヒールをかけた後、手にした杖を空にかざした。
「食らいなさい。ライトニングボルト、ですわ!」
『ぐ、うおおおおおお!』
杖から放たれた白い雷撃が、ドランクの体を貫いた。
普通のモンスターであれば、これほどの攻撃であればひるむ位はするはずだ。
「皆、こいつがひるんでる隙に距離を……!?」
リーナが皆に言おうとした、その時だった。
「ぐ、あああああああ!」
「きゃああああああ!!!」
アゼルとショーティアの悲鳴があがった。見れば、アゼルの鎧の薄い腕の関節部分と、ショーティアの足に蛇が噛みついていた。
その蛇は、ドランクの尻尾であるもの。いつの間にやら長く伸び、さらに地面を這って二人に噛みついていた。
噛みつかれた二人。ショーティアはその場に倒れ、アゼルは膝を付く。
「クソ……情けねぇ……この蛇……毒を持ってやがる……!」
「う……きゅ……キュア……ですわ……」
ショーティアが必死に、解毒の魔法を唱える。幸いにもアゼルとショーティアの毒の進行は止まった。だが、それだけだった。完全な解毒には至らなかった。あまりにも、ドランクの尻尾である蛇の毒が強すぎたからだ。
倒れ、動けなくなる二人。
「にゃ……!」
ショーティアの次に、解毒などが得意なのはシイカだ。シイカがすかさず二人に寄ろうとするが。
「やめなさいシイカッ!」
リーナが呼び止める。だが遅かった。焦ったシイカをドランクが捉えることは簡単だった。
「させないであります!」
状況が状況ゆえか、正気に戻ったルシュカ。斧で斬りかかるものの、ドランクに片手で斧を弾かれ、そのまま頭を捕まれてしまった。
「やめなさいドランク!」
「この……フォトンフレア!」
リーナとクロが銃撃と魔法を行うも、ドランクは意に介さない。
そしてドランクが頭を掴んだルシュカの体は、シイカへと叩きつけられた。
猛烈な力で叩きつけられ、シイカはそのまま地面に倒れ込む。そしてルシュカも、追撃とばかりに地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
「みんな……う、うわああああああああ!!!」
「ガリ猫、落ち着きなさい!」
クロが魔法を乱射する。ドランクの胴体を狙い、魔法を乱射する。だが、その魔法はドランクの体をえぐっては、すぐに再生されてしまう。
クロが魔法を乱射する中、前のめりになったドランクは、そのままクロへと飛び掛かった。
「うああああああ!」
「ガリ猫!」
ドランクはその巨大な口で、クロの胴体へ噛みついた。
無数の歯がクロの体に食い込む。そのまま立ち上がったドランクは、まるで吐き捨てるようにクロを放り投げた。
一目で重傷とわかる深い傷を負い、気絶したクロ。
すでに立っているのは、リーナ一人だった。
「あんた……本当に最低よ……」
リーナが銃撃を行う。だが銃弾がドランクの体に食い込んでは、すぐに再生される。
皆を守る余裕は無い。皆を治療する余裕はない。リーナに出来るのは『時間稼ぎ』だけだった。
幸い、皆まだ息があるようだ。だが、自分がやられれば、トドメを刺される。
「この、この、この!」
リーナがドランクの周囲を飛び跳ねつつ、何度も銃撃を行った。
かぎ爪ロープを駆使し、ドランクの周りを飛び跳ねる。
『ちょこまかちょこまかと……!』
しびれを切らしたドランクが、リーナが放り投げたかぎ爪ロープを掴んだ。そのまま引っ張られ、バランスを崩したリーナの体を、ドランクが片手で掴む。
「ぐ……あ……」
『ようやく捕まえたぞ。お前は連れて帰ろうかと思ったが、予定変更だ。お前も殺す。お前は頭を吹き飛ばせば死ぬと、あいつに聞いた』
リーナを捕えたドランクの右手の爪が、リーナの体へと食い込んでゆく。
「あ、あ、あ……」
『昔のよしみだ。一発で終わらせてやろう』
そうして、ドランクは左手を振りかぶった。しかし。
『ぐ……?』
一瞬ふらついたドランクが、左手で目を押さえる。
『チッ……あのアサシンの目潰し薬か。目が少しかすむな』
そして顔をなんどか振ったドランクが、左手を振りかぶった。
その時。
「蒼雷一閃!」
リーナを掴んでいたドランクの右手が、雷撃を纏った刀で切り落とされた。
その一撃を放ったのは提督。そして提督は、解放されたリーナの体を抱えてドランクから距離を取った。
そのドランクに、さらに魔法が一撃放たれる。
「グリモア……ショット!」
それは今までに無いほど、強烈な魔法の一撃。その魔法はドランクの体を貫き、ドランクの体は吹き飛ばされた。
『ぐああ! なんだってんだ!?』
ドランクが体制を立て直すよりも早く、ドランクの周囲に魔法障壁が展開された。その障壁は、ドランクの攻撃でもびくともしない。
その魔法障壁を張った主は、倒れた皆の周りに、回復術式を展開した。
「その声……忘れるわけがない」
そして皆に回復術式を展開し終わると、障壁へ閉じ込められたドランクへ、一歩ずつ、ゆっくり近づいた。
「絶対に許さない……ドランク……!」
そこに立っていたのは、長い金髪を海風にたなびかせながら、怒りに燃えた真紅色の瞳でドランクを睨みつけるリテール族の少女、ミカの姿だった。
諸事情により再開01/07となります。
申し訳ありません。




