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7話 一方その頃、王女様と占星術師

 ミカ達が大空洞の第二の入り口を見つけた数日後のこと。 

 バレンガルド王都にある、とある城。王が住まい、バレンガルドの象徴となっている城の一室にある王女執務室で、椅子に腰かけ、机の上の紙にペンを走らせているアンジェラは頭を抱えていた。

 そんなアンジェラの元に、扉を開いて一人のエルフの少女が現れる。


「王女様。お食事をお持ち致しました」

「あら、ククルありがとう。丁度小腹を減っていたのよね。あなたが作ったの?」

「はい。南寄りの属国で、最近人気のハンバーガーというものです。作ってみました」


 その少女はククル。王女の親衛隊に、半ば強制的に入隊させられた占星術師の少女だ。白と赤を基調とした、親衛隊の制服を身に着けている。

 プレートの上には、ミンチにした肉を丸め、焼いたものと、野菜をパンで挟んだ料理が置かれている。


「肉! なんて美味しそう! いただきまーす!」


 するとものの二秒もかからず、アンジェラはそのハンバーガーを平らげてしまった。


「……その食事スピード、すごいですね」

「そうかしら? お腹が減っていたからね」

「姫様はいつもお腹が減っていらっしゃるではないですか」

「ねぇ、だからせめて王女って呼んで? 姫って、なんだか小さいイメージがあってちょっと恥ずかしいのよ」

「ですが、先日偶然お会いした王様に、あなたを姫と呼ぶように命令されました」

「ぐぅー! お父様ってば、だから姫はもう恥ずかしいって何度も言ってるのに。思っていたよりすごく優秀だったから秘書にしたあなたを利用して、姫呼びに慣れさせるつもりね!?」

「わたしは姫様の親衛隊の隊員ゆえ、姫様より階級が上の王様には逆らえません」

「はぁ……まぁ今度お父様に言って、私を王女ってククルに呼ばせるようにするわ」


 そう言って、改めてアンジェラは机の上の紙に向かった。

 机の上には、無数の紙束が置かれている。そんな紙束を見て、ククルは質問した。


「この紙束はなんですか?」

「大攻略に挑む冒険者パーティの申請書よ。大攻略に挑むには、攻略申請を冒険者ギルドに行い、その申請書が私たち王族の所に来るわ。その審査を私がやらされてるのよ」

「そうでしたか。凄い量の書類です。ですが、大攻略に挑むのはSランクパーティであるはず。Sランクパーティはそこまで数は多く無いはずですが」

「Sランクパーティは、よっぽどの事情が無い限りはほぼ全員申請するわ。その数もそこまで多くない。けれど、一応Aランクのパーティも申請は可能なのよ。場合によっては、Sランクパーティよりも強いパーティがあったりするから。でも弱いAランクパーティも申請してくるものだから、この書類の量。審査も大変よ。もう大攻略まで数日も無いから、この数日ぶっ続けで審査してるの」


 そうして、最後の一枚にペンを走らせたアンジェラは、その書類を紙束の上に置くと、大きく伸びをした。


「やっと終わったわ!」

「お疲れ様です」

「ほんとお疲れよ。本当なら冒険者ギルドに関わってるブライアンがやるべきなのに、あいつがいつも不在だから私がやることになって……ただでさえキメラ術式の件の調査が進んでいないのに、とんだ迷惑ね! はやいところミルドレッド達に何か知らせたいところなのに……」


 と、そう言ったところで、アンジェラは何かを思い出したかのようにククルに言った。


「そうそう聞いた? 以前私とパーティを組んでいたモニカってのが居るのだけれど」

「海軍の提督さんですね」

「そうそう。近接アタッカーとして凄く強かったんだけど、なんでもミルドレッドとタイマンして、勢い余ってあの子たちのパーティハウスを壊しちゃったそうよ」

「なんと。可愛そうですね」

「いやぁ、もちろんミルドレッドが居たから皆無事だったのだけれど、私その話を聞いて笑い転げちゃったわ。モニカってば誰よりも真面目で、それでいて強いのだけれど、まさかそんなミスをしちゃうなんてね。ミルドレッド達は、今海軍の宿舎に居るそうよ。あ、ユーキとかいう飼い猫だけは、海兵に預けたらしいわ」

「そうですか。ミカさんはさぞかし悲しんでいるでしょう。猫が好きだったので」


 そうして、書類の作業を終えて椅子の上でくつろぐアンジェラ。


「そうね……キメラ術式の件は万一に備えて、各町に騎乗空竜と共に親衛隊の隊員を何人か配置したわ。もしドラゴニュート化したライアスのようなものが現れても、すぐに近隣に助けを呼んだり、避難を呼びかけられるように。私の知っている、Sランク並の実力を持つ人にも支援を要請したわ。万全とは言い難いけれど、これ以上の事もできない……」


 いつどこで、またライアスのようなドラゴニュートが現れるかわからないうえ、動けるSランク冒険者が、大攻略のため少なくなる以上、これ以上の事は難しかった。

 先日の会議から、一応は各国の軍が警戒には当たってくれることになっているものの、あのドラゴニュートが現れたら、並の兵士では太刀打ちできないだろう。だが、現状これ以上の事はできない。


「一番は、あのキメラ術式を開発して、人体実験を行っている首謀者をひっとらえること。でも現状ほとんど情報が無いのよね……」


 と、アンジェラは何かを思いついたかのように、ククルに尋ねた。


「私、ククルをアタッカー兼ヒーラーとしか考えていなかったけれど、あなた、占星術師よね? 占いができるっていう」

「むしろそっちが本職です」

「じゃあ、私がこのあとどうするべきか占える? 例えば、何かを掴めそうな方角とか」


 すると、ククルは首を縦に振った。


「できます。が、注意点もあります」

「注意点?」

「はい。まずは、占いについて解説をさせて頂きます」


 そうして、ククルは自らが行う、星読みの占いについて語り始めた。

 

「まずわたしの占いには二種類あります。それは『相手を知る占い』と『良き未来を導く占い』です」

「へぇ、その二つの違いは?」

「『相手を知る占い』はその名の通り、星から特定の人物の情報を得るものです。これは、相手が近くに居るほど。そして、相手が自分の事を占われることに抵抗が無いほど、正確に情報が得られます。主に、占いを信じない方に、占いを信じさせるために使いますね。とりあえず近くに居れば、相手の情報はソコソコわかりますから」

「それで、もう一つは? そっちが占いっぽいけれど」

「はい。最も重要な、『良き未来を導く占い』ですね。たとえば『良いお嫁さんはここで得られる』、『このパーティはあなたに取って大吉』とか、あとは『どこどこへ行けば良いものが得られる』とか、『これをこうしないと不幸になってしまう』とか、どう行動すれば良い未来になるかを占えます。相手が目の前に居れば、的中率はほぼ百パーセントです」

「へぇ、必ず当たるなんて凄いじゃない」


 必ず当たる、その言葉を聞いたクルルが、首を振った。


「必ず当たるのですが……同じ方の未来を占う場合、二度目は二週間は日をあけないと的中率が、かなり下がるのです」

「なるほど、同じ人を連続で占うことはできないのね。それは何故?」

「一つの良き未来を告げることで、その前後の未来にブレが産まれてしまうのです。人の運命は決まっていますが、未来を知ることで、その運命が変わってしまうのです。変わってしまった運命が安定化するのに、二週間から一か月を要します」

「一つの未来を知るから、別の未来が変わる。変わったあとの未来が見えるまで、時間がかかるってことかしら」

「おおむね、そのように捉えていただいて問題ありません。また、占えるのは良い運気となることだけです。『どこどこへ行けば、事件の首謀者を捕まえられる』とかはピンポイントな物事は、占うことは可能ですが、精度は落ちてしまいます。これはオススメしません」


 その話を聞いたアンジェラは、早速ククルに提案した。


「それじゃ早速私を占ってくれるかしら? そうね……どこへ行けば吉になるか、とか教えてもらえると助かるわ」

「はい。それは可能ですね。では早速」


 そう言って、ククルは執務室に敷かれていた絨毯の上で、聖杖を手に踊り始めた。

 そして絨毯に描いた魔法陣を見て、アンジェラに告げる。


「ヴェネシアートへ行けば、小吉、と言ったところです」

「小吉? 大吉じゃないのかしら」

「それ以上の幸運は、どこにも無いということです」

「……あまり嬉しくない話ね。ま、でも息抜きにモニカと雑談したり、ミルドレッドのご飯を食べに行くには良いかしら。よし、それじゃ早速騎乗空竜で向かうわよ、ククル!」

「ですが姫さま、その書類は」

「書類はそのうち、誰かが部屋に取りに来るわ。さ、行きましょう!」


 そう言ってアンジェラは、ククルの服の首元を掴んで部屋から飛び出した。

 そして飛び出すと同時、アンジェラは廊下でブライアンとすれ違う。


「姫様、あの方は」

「サボり兄。無視して行きましょ」


 とブライアンをスルーして進もうとしたアンジェラであったが、そのブライアンの隣に立っていた、鎧を身に纏った人物に気づき、数歩ブライアンから離れたところで、アンジェラは一度足を止めて振り向いた。

 そして、ブライアンにその人物の事を尋ねる。


「ねえ、なんでそいつがここに居るのよ。ブライアン」

「一応元はSランク冒険者だからな。お前の持ってきた話である『キメラ術式によるドラゴニュート』が現れても大丈夫なように、助っ人として牢屋から出した。ただそれだけだよ」

「犯罪者の力なんて借りたくないんだけど」

「こいつはもう犯罪者じゃ無いさ。俺が赦免した」


 アンジェラは歯を食いしばった。それは王女ゆえ、兄であるブライアンよりも王国内での権力が弱いことによって、ブライアンの行いを取り消せない悔しさから来ていた。


「……行くわよククル」

「はい」


 そうしてブライアンに背を向けて、廊下を歩き出すアンジェラ。

 そしてブライアンもアンジェラに背を向けて、隣に立っていた鎧を着た男。パラディンらしき男に言った。


「さぁ行くぞドランク。お前には期待しているんだからな」

「光栄です、王子ブライアン様っと」


 ブライアンの隣に立っていた男性。それは犯罪行為を行ったために活動停止とされた元Sランク冒険者パーティの紅蓮の閃光の一員。そのリーダーである、ドランクであった。

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